食事の後に眠さやだるさを感じる──そんな方は、実は「糖質疲労」に陥っているかもしれません。近年、ビジネスパーソンで糖質疲労を抱える人は確実に増えており、特にランチ後にこうした症状を訴え、午後のパフォーマンスを大きく下げている人が非常に多いのです。本記事では『糖質疲労』(山田悟著、サンマーク出版)から、なぜ糖質疲労が増えているのか、糖質疲労を改善するための具体的なポイントを解説します。
「食後高血糖」と「血糖値スパイク」が糖質疲労を引き起こす
食事の後、しばらくすると眠くなる、だるくなる。十分に食べたはずなのにすぐに小腹が減る、集中力が途切れる、イライラする、首の後ろがずんと重くなる──これらの症状があるならば、それは「糖質疲労」の可能性が高いです。糖質疲労とはこうした不快な症状の総称であり、その疲労感は今日のパフォーマンスの低下のみならず、様々な健康上の問題を引き起こすことになります。
「食後高血糖」と「血糖値スパイク」という言葉をご存じでしょうか? 食後高血糖とは、食事をとった後の血糖値(正常140mg/dl未満)が高いこと。誰でも食事後は、血糖値がある程度上がるものですが、その上がり幅が大きいのが食後高血糖です。一方で血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急激に上がり、その後、急峻に低下することです。先に挙げた糖質疲労の様々な症状は、この食後高血糖と血糖値スパイクの影響で生じています。
一般的な健康診断でチェックするのは「空腹時血糖値」なので、食後高血糖や血糖値スパイクを知る機会はまずありません。しかし、普段からかなりの運動をしている方やプロアスリートの方ですら、食後高血糖や血糖値スパイクを呈して糖質疲労を感じている方は少なくありません。
糖質疲労の段階ではまだ病気とは言えず、いますぐに薬を飲む必要はありません。しかし放置すると、いずれ糖尿病や肥満、高血圧、脂質異常症に至る可能性があり、糖質疲労による負の連鎖は、ある時点から「不可逆的」になります。つまり、身体の細胞や臓器に代謝上の記憶が刷り込まれ、完治しなくなってしまうのです。
糖質疲労の段階ならばまだ「可逆的」な状態ですから、もしも「そういえば10年前は午後も元気だったのに、いまは昼下がりに眠気が強くなっている」ということがあれば、食後高血糖の有無を確認し、糖質疲労に対する対策を講じたほうがよいでしょう。
「健康にいいはずの食事」がもたらすリスクとは?
みなさんがヘルシーで健康的だと思っている食事でも、それが原因で知らぬ間に糖質疲労を引き起こしていることがあります。
たとえば、和食は「カロリーが少なく、油脂の使用量が少ないからヘルシーである」というイメージを持っている人は多いでしょう。それゆえ、本来目を向けるべき糖質量に意識が向かわず、結果として食後高血糖——糖質疲労を招くメニューにしてしまうことが多々あります。実際、和食でよく使われる上白糖大さじ1杯には7.9g、みりん大さじ1杯には7.8gの糖質が含まれています。仮に糖質量約40gのおにぎり1個の場合、上白糖やみりんで味付けされたおかずを合わせれば、容易に糖質過多を招いてしまいます。
また、ごはんとおかず、汁物などを交互に食べる「三角食べ」や、血糖値の上昇をゆるやかにするために最初に野菜を食べる「ベジファースト」という食べ方をする人は多いと思います。しかし糖質疲労の解消には、三角食べやベジファーストよりも、糖質を最後に食べる「カーボラスト」という食べ方が大切です。実際に、この3つの食べ方で血糖値の上がり方を調べた研究では、カーボラストで食事をとった人だけ血糖値の上下動がゆるやかで、食後高血糖が起こらず、望ましい血糖値が保たれていることが確認されています。
このように、体にいいはずの健康習慣が糖質疲労を招いていることは、決して少なくありません。糖質疲労の自覚がある方こそ、健康的な食習慣とは何か、自分の食習慣が食後高血糖から免疫力の低下を招いていないかを、改めて見直していただきたいと思います。
糖質疲労を改善する食べ方の3つのポイント
糖質疲労を防ぐためには、「食べ方を変えること」です。あなたが次にとる食事から食べ方を変えるだけで、その直後から糖質疲労が改善していることを実感できるはずです。具体的には、次の3つがポイントとなります。
- 糖質をとる量を控えること
- その分、たんぱく質と脂質をお腹いっぱい食べること
- 食べる順番を意識すること(カーボラスト)
これらは「ロカボ」と呼ばれる食べ方ですが、非常にシンプルで、食事に満足感がもてる、無理のない食べ方です。ロカボとは、「低糖質」を意味する「ローカーボハイドレート」という言葉からの造語です。ゆるやかな糖質制限のみを指し、ゼロを目指すような極端な糖質制限ではありません。理論と科学的根拠に支えられ、長期の継続が可能な実践的な食事法と言えるでしょう。
実際に筆者も、かつては糖尿病専門医でありながら血糖値は208mg/dl、血圧140/90mmHgぎりぎりで、いつ糖尿病や高血圧症と診断されてもおかしくない状況でした。そして自己流でカロリー制限を行い、すこし体重を減らしてはつらくなってリバウンドするという状態を繰り返し、午後は強い眠気に襲われていましたが、ロカボに取り組んでからは20歳のころの体重で維持され、血圧も正常値に戻り、午後の眠気もありません。日々、満腹になりながらパフォーマンスも体重も適正化されていることを感じています。筆者のみならず、ロカボ指導を受けた患者さんのほとんどが、リバウンドを示さず長く安全に血糖値を改善させています。
「ロカボ」は「満腹×健康」をかなえる究極の食事法
ロカボのポイントは、糖質をゆるく制限すること以上に、「脂質とたんぱく質をしっかりとる」「満腹になる」ということです。
なかには、太らないため、そして生活習慣病を予防するため、とにかく油(脂質)を目の敵にする人がいます。「脂質をとりすぎると体に悪い」という概念は、1950〜1970年代に提唱されましたが、最近の研究によれば、脂質を減らしてカロリー制限も加えた食べ方で実際に体重減量に効果的かを検証したところ、この食べ方よりもゆるやかな糖質制限食が減量効果を示した、という結果が報告されています。また、元来糖尿病だった人が脂質制限食により、さらに血糖値を上げてしまったことも報告されています。
いまの時代は「脂質抑制」よりも「糖質抑制」であり、上記のルールによれば、1日の糖質の量は70〜130g以内、1食でいえば20~40gが妥当です。糖質40gの目安として理解しやすいのは、おにぎり1個(炊飯した米100g)です。つまり、白米を軽くしておかずをお腹いっぱい食べればロカボということになります。
「糖質は130g/日、カロリーは気にせず、たんぱく質と脂質でお腹いっぱい」をきちんと続ける──これは決してつらいことではありません。それどころか、あなたの「午後の眠気」など様々な症状が解消され、将来の糖尿病や肥満、高血圧、脂質異常症のリスクを大きく低減してくれる、理想的な食べ方なのです。
本書の要点
● 近年急増している「糖質疲労」、放置するとリスク大
食後に起こる眠気や集中力の低下などの不調は、血糖値の急上昇・急降下によって生じる「糖質疲労」が原因。まだ病気ではないが、放置すれば将来的な健康リスクにつながる。
● 「健康的な食事」の落とし穴
和食やベジファーストなど、良かれと思って続けている習慣が、実は糖質過多や血糖値スパイクを招いていることがある。糖質量を意識した食べ方の見直しが必要である。
● 「ロカボ」は不調とリバウンドを防ぐ究極の食べ方
糖質をゆるやかに制限し、たんぱく質と脂質をしっかりとる「ロカボ」は、満足感があり続けやすい。午後の眠気対策など糖質疲労の諸症状にも有効な、現実的で実践しやすい食事法である。
りそなBiz Actionではこれらの資料もご用意しております。ぜひご活用ください。



