渋谷 雄大（しぶや たけひろ）氏
ジャイロ総合コンサルティング 代表取締役
大学卒業後、入社した訪問販売会社にて最年少トップセールスを樹立。その後、サプリメント専門チェーン事業部門の責任者として、ショッピングセンター・百貨店などへの出店戦略をはじめとして、人材育成、プロモーション・広報などを一手に引き受け多店舗展開を達成。現在は、創業支援、営業強化、店舗戦略、人材育成、販売促進、DX戦略など幅広い分野でコンサルティングを行う。全国各地でセミナー講師としても活躍し、年間講演数は150回を超える。中小企業診断士。
生成AIの活用が世界的に広がるなかで、日本の中小企業における普及率は依然として低い実情があります。しかし導入した企業では、業務効率化による利益向上など具体的な成果が現れています。中小企業のDX支援を手がけるジャイロ総合コンサルティング株式会社代表取締役の渋谷雄大氏に、中小企業における生成AI活用の現状から効果的な活用法までお話を伺いました。
中小企業における生成AI導入の実態は？
中小企業の経営者は日常業務に忙殺されているため、AIを導入したくても情報があふれすぎて、どこから手をつけていいかわからないという状態にあります。実際、2年前にChatGPTが登場した際に試してみたものの、うまく活用できずに離れてしまったという経営者も少なくありません。
業種による温度差も顕著です。製造業や建設業では少しずつ活用が始まっている一方、飲食業やサービス業での導入はほとんど進んでいません。その理由は、現場で働くスタッフが使うことへの不安や、情報漏洩などのリスクを懸念する声が多いためです。
活用が広がらない2つの要因
AIを活用している中小企業においても、そのほとんどは無料版のChatGPTを使ったSNS投稿文の作成程度に留まっています。ただ、これは文章作成の工数を確実に削減できているという点でひとつの適切な活用法といえます。
普及が進まない大きな要因として1つ目は、メディアで紹介される生成AIの主な機能と、中小企業の実需との乖離があります。生成AIというと「画像生成」や「会話機能」が話題になりますが、それらは経営者の日常業務ではあまり必要がありません。結果として「自分たちには関係ない」と距離を置いてしまう経営者も多くいます。また、要因の2つ目として、情報漏洩への漠然とした不安も、活用を躊躇させる要因になっています。
生成AIが経営にもたらすメリットと成功例
しかし、中小企業が生成AIを適切に活用すれば、大きな効果が期待できます。
たとえば、不景気で先行き不透明な時代には、報告書作成など非生産的な業務が増える傾向にあります。親会社や取引先からの要請で、報告書をより丁寧に作成するなど、価格には反映されない業務が増えている傾向があります。そうした業務をAIに任せることで、本質的な仕事に注力できるでしょう。
現に弊社では、営業提案の効率化のためにAIを活用し、大きな成果を上げています。具体例には、営業の提案スピードを向上させるため、AIによる文字起こしと提案書作成の自動化を導入したところ、15秒程度で提案書の作成が可能になりました。実際に提案するまでは問い合わせからわずか1時間程度です。こうして、AIによって確実に人件費の削減と提案機会の増加につながっています。
具体的な活用方法を思い描くことが、普及への第一歩
生成AIの活用を広げるには、まず経営者自身が具体的なメリットをイメージできることが重要です。中小企業にとって大切なのは、「これを使うことでどう利益が出るのか」という視点です。その道筋を明確に思い描いてみましょう。
各地の商工会議所などが開催する勉強会やセミナーへの参加も、有効な第一歩になるでしょう。独学での活用はなかなか難しい面がありますが、セミナーで具体的な活用法を学び、同じ立場の経営者と情報交換することができます。そうすることで、自社での展開イメージが描きやすくなります。
AI活用で特に注目すべきは、時間節約の効果です。あるイギリスのコンサルティング会社の調査によれば、生成AIを業務に活用している回答者の58％が、週に5時間の節約ができていると回答しています。大切なことは、節約できた時間を何に充てるかです。効率化によって生まれた時間を、より付加価値の高い業務に振り向けることで、企業全体の生産性向上につながるでしょう。「生成AIがもたらす中小企業の業務改革と導入企業の成功事例」記事で、活用方法について詳しく見てみましょう。
課題解決の考え方及びDX活用事例について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。
