海外取引の為替リスクと賢い対応策

海外との貿易などの取引には為替リスクがつきものです。為替相場は経済情勢・社会情勢などの影響で大きく動くことも少なくありません。為替変動により、契約時に想定していた採算の確保ができないだけでなく、損失が生じることもあり得ます。海外取引では必ず起こりうる事態と考え、さまざまな為替リスクヘッジ方法や注意点を知って準備をしておくことが重要です。

その方法を大きく分けると、自社で対応できることと、取引先の協力が必要となることの2つがあります。詳しくみていきましょう。

自社で対応できる為替リスクヘッジ

(1)為替予約

将来の外貨建決済日(期間)に合わせて為替レートを銀行と約定することで、円貨額を確定させ、為替リスクを回避する方法です。決済日までの為替リスクを抑えることができ、約定時に決済資金が不要であることもメリットです。一方で、為替予約の約定レートが決済日当日のレートよりも不利であったとしても、取り消しできない点には注意しましょう。
為替予約は、レート差による利益を狙うのが目的ではなく、決済日より前に利益を確定させ、為替リスクを抑えられるのが最大の特徴です。

輸出入契約10万米ドルのケース

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※為替予約のご利用には所定の審査が必要です。

(2)外貨預金

輸入企業など、外貨建の負債が発生する企業に適した方法です。将来の支払いに対してあらかじめ外貨を買う(預け入れておく)ことで、購入時点の相場で決済したのと同じような効果があります。決済日までに為替相場が有利な方向に動いた場合、あらかじめ預け入れた外貨預金を使用せずに決済日のレートを使用することも可能です。

また、外貨建の債権と債務を相殺する方法(マリー)もあります。輸入・輸出ともに同一通貨で決済しているような企業が受け取った外貨を外貨預金に保有しておき、後日支払いに充てることで円との交換を避けられる上、為替相場変動の影響を受けないことがメリットです。ただし、外貨の受け取りと支払いの時期を合わせる必要があります。

(3)通貨オプション

将来の外貨建決済日(期間)に合わせて特定の為替レートで通貨を売る、または買う権利を売買する方法です。為替予約の場合は、約定レートは期日に必ず使用する必要がありますが、通貨オプションの場合は決済日の実勢相場が有利か不利かによって、決済相場を使用する権利を行使するか・放棄するかを選択できます。これにより、為替差損を避けることと為替差益を狙うことの両立が可能です。
ただし、オプション料の支払いが必要となることに留意しましょう。

契約相手などの協力が必要な為替リスクヘッジ

(1)円建決済

決済通貨を契約相手国の通貨や米ドルなどの外貨建から円建に変更することで、為替リスクを避ける方法です。決済通貨が円建のため、上記のような為替リスク対策をする必要がありません。
一方で取引先にとっては円という外貨の為替リスクが生じるため、リスク相当分を取引価格に上乗せされることが考えられます。必ずしも有利とは限らないことを認識しておきましょう。
また輸入の場合、円安進行を背景に、円建を嫌う海外企業から逆に外貨建への切り替えや価格の値上げを迫られるケースもあり、為替変動の影響を間接的に受ける可能性もあります。

(2)リーズ・アンド・ラグズ

輸出入企業が為替の変動を見ながら、輸出代金としての外貨の受け取りや輸入代金の外貨の支払いの時期を変更する方法です。便利である一方で、取引先から支払いの利息請求を受けるなどの影響を考慮しなければなりません。また当事者の為替変動予測から決済時期を調整したとしても、必ずしも予測どおりとはならないこともあり、為替差損を被るリスクは残ります。


このように、自社でできる対策と取引先の協力が必要な方法のほか、海外進出前に準備をしておくべきことなど、対策は多様に存在します。自社のビジョンや事業形態、経営状況などにより異なるため、進出を検討する段階から金融や現地の法的知識を持った専門家への相談を行いましょう。

りそなグループでは「りそな外為Webサービス」のほかにも、海外事業に関するご相談を承っております。ぜひお問い合わせください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年1月31日時点の内容となります。
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