本社移転で会社が変わる! 成功例に学ぼう

複数カ所に点在するオフィスの集約、本社の入っているビルの老朽化など、さまざまな事情によって本社移転を決意するタイミングはやってきます。ただし、本社移転を単なる「引っ越し」と捉えてしまうと非常にもったいないことになります。事業用不動産サービス会社CBREにおいて、企業のビジネスを不動産領域から支える多様な専門性をもつプロフェッショナルで構成されるコーポレートカバレッジ部門のシニアディレクターである吉田書雄(よしだふみお)さんにお話を伺いました。


CBRE 吉田さん写真

吉田 書雄 (よしだ ふみお)
シービーアールイー株式会社 シニアディレクター

1995年生駒商事(現シービーアールイー株式会社)入社。日系・外資問わずテナント企業/一般事業会社を対象に、国内外の賃貸・売買・CRE(企業不動産)アドバイザリーなどのサービスを提供、不動産業界において30年の幅広い経験を持つ。オフィス・倉庫・店舗等の主要なアセットタイプから、工場の新設・閉鎖、R&D(研究・開発)やスタジオ施設の開発、遊休土地有効活用のコンサルティング等、経営の幅広い視点を持って不動産戦略のアドバイスを提供。企業の課題に応じて17部門にも及ぶ幅広いCBREのサービスをテーラーメイドで組み合わせてご提案するコーポレートカバレッジに所属。

本社移転は単なる引っ越しではない

企業が本社を移転する背景には、さまざまな事情があります。会社が成長するに従ってオフィスが複数カ所に分かれてしまい、それらを1カ所に集約するというケースもありますし、今入居している建物の老朽化や面積過不足や契約期間が理由になるケースもあります。また、自社で保有している物件であれば、不動産市況の良いタイミングで売却することで、キャッシュ化や財務指標改善を図りたい、というケースもあるでしょう。

いずれにしても、次に移るオフィスを探し、引っ越し作業を実行しなければならないのですが、本社移転=引っ越し作業、とだけ捉えてしまうのではなくそれ以外も考える必要があります。

新しい本社オフィスの設計をする際に、その会社のビジョンや中長期計画を踏まえて「本社オフィスの果たすべき役割は何なのか」「その役割を果たすために必要な機能は何なのか」、など、オフィスのあり方・ビジョンをまずは考える必要があるのです。

オフィスに求めるものとは?

たとえば、私たちは2010年、りそなホールディングスの本社移転をお手伝いしました。移転の理由は(1)大手町の本社ビルが老朽化しており、改修負担が増していたこと、(2)本社ビルを売却して財務基盤を強化したいというニーズがあったこと、(3)リテール事業を強化するに当たって、顧客企業に近いオフィスを探したかった――という3つの事情があるとお聞きしていました。

細谷英二会長(当時)は「銀行の常識は世間の非常識」とおっしゃり、聖域なき改革の中、オフィスに関しても、細谷会長のビジョンが随所に反映されたものになりました。

当時、大手金融機関が集結する大手町を出ていくというのは驚きを持って受け止められました。また、業務の効率化を目指してユニバーサルデザインを採用したり、社内の風通しを良くしたり、透明性を高くするために役員食堂や役員エレベーターを廃止、なんと社長室も廃止し、ガラス張りで個室ではなく、複数の役員の席が並ぶ役員室に変更するなど、移転前のオフィスから改革を進めていました。

社員食堂では、一般社員と細谷会長が席を並べて昼食をとっている、というような光景が一般的になりました。

大手銀行のそれまでの常識を一つひとつ検討し、変えるべきことについては、ダイナミックに変えていく。そんな改革メニューの一つに、本社移転プロジェクトが位置付けられていたということだと思っています。

本社移転で表現できること

移転プロジェクトが始まったのは2007年。タイミングよく、2008年のリーマンショック前に旧本社ビルを売却でき、当時のアジアパシフィックエリアでは最高額の売却となりました。

驚いたのは、本社移転プロジェクトが発表になった後、株価が上がったことです。「本社を移転する(引っ越しする)」ことが単純に評価されたわけではないでしょう。りそなホールディングスが確固たるビジョンを持って改革を進めていること、そしてその改革の一部である新しい働き方、新しい経営方針を本社移転により体現していることが評価されたのだと思っています。

りそなホールディングスの本社移転が完了したのは2010年。月日は経ち、コロナ禍も経験した今、働き方は大きく変わってきています。「本社移転で考えるべきことは何か?」記事で、昨今のトレンドについてお話ししたいと思います。

不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年6月27日時点の内容となります。
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