IPOへの道のり、やるべきことを知っておこう

IPOを果たすまでにやるべきことは数多く、準備期間は3〜5年に及びます。IPOを果たした経営者からは「上場への強い思いが必要」との声が出るほどで簡単な道ではありません。どのような準備が必要なのか、東京証券取引所 上場推進部課長の滝口圭佑さんにお話を伺いました。


東証 滝口さん写真

滝口 圭佑  株式会社東京証券取引所 上場推進部 課長
2009年に東京証券取引所入社。2015年から2020年まで、日本取引所自主規制法人・上場審査部に所属し、国内企業の新規上場等の審査業務に従事。その後現在に至るまで、東京証券取引所・上場推進部において、プライム、スタンダード、グロース、TOKYO PRO Marketのプロモーション業務、また上場準備企業や証券会社・監査法人等のIPO関係者に対する上場支援業務に従事(現職)。

IPOまでのスケジュール

IPO(新規公開株式)を本格的に目指すとなると、経営者はもちろん、全社を挙げて強い意志で準備を進めることになります。東証で行ったIPO企業の調査によると、準備期間は「3年以上5年未満」と答えた経営者が約半数となり、上場にかかった費用の最多価格帯は4,000万円〜6,000万円という結果が出ています。

実務面での取り組みでは、まず監査法人を選定します。上場申請直前2期間にわたる監査証明が必要となるため、およそ3年前にはショートレビューを受ける必要があります。また、主幹事証券会社を選定し、その指導を受けながら、社内体制の整備や上場申請の準備などを進めていきます。主幹事は株券を引き受けて投資家へ販売する役割を担うため非常に重要な存在です。
主幹事が引受審査を行い、これを通過して初めて証券取引所へ上場申請を行うことができます。

IPO準備のプロセス

どこからサポートを受ければ良いか

主幹事証券会社からのサポートはもちろん、東証もさまざまな支援を提供しています。東証は上場審査を行う部署と支援を行う部署を明確に分けており、証券会社や監査法人、地方自治体などと連携して情報提供を行ったり、イベントやセミナーを開催するなどの取り組みを行っています。また、IPOに関する疑問がある場合、東証のIPOセンターにお問い合わせいただくこともできます。

毎年のIPO件数のおよそ6〜7割は東京の会社ですが、その他地域の企業が上場することも、地域経済活性化の観点から重要だと考えています。東証は全国の地域金融機関と基本協力協定を結び、2022年からは「IPO経営人材育成プログラム」をスタートさせました。このプログラムは現在、全国9カ所で展開されており、参加者は地域金融機関などからの紹介を通じて参加することができます。
そのほか、上場を思い立ったら、まず監査法人や実際にIPOを経験した経営者を訪ねて話を聞いてみるというのも良いアプローチです。

IPOを巡る疑問あれこれ

ここで、IPOセンターに寄せられる質問のうち、よくあるものをいくつかご紹介しましょう。

Q1. 監査法人は大手の方が良いのか?

A1. 上場審査では、監査法人の規模は問いません。重要なのは、適切な監査が行われているかどうかです。

Q2. 毎月の業績が計画通りでないと上場できないのか?

A2. 事業計画は合理的見積もりにより策定される必要がありますが、実績との乖離が生じた場合には速やかに原因分析を行い、計画を修正することが重要で、乖離したことだけを問題視することはありません。

Q3. 赤字でも上場できるのか?

A3. グロース市場では赤字でも上場は可能です。ただし、赤字上場の場合は、自社の成長可能性や、それを実現するための事業計画について、特に丁寧な開示が求められます。

Q4. 上場審査の合格率はどのくらいか?

A4. 上場審査の合格率は公表されていませんが、東証の審査に至る前に監査法人による会計監査や主幹事証券会社による引受審査を通過する必要があります。そのため、東証で不合格となるケースはさほど多くはありません。ただし、上場申請に至る前の準備段階で組織作りが進まなかったり、ビジネス環境の変化により計画が中断するケースもあります。

最後に、IPOは簡単な道のりではありませんが、上場によって企業の知名度や信頼度が向上し、ビジネスの成長や優秀な人材の採用につながる可能性があります。大きく成長するフェーズに差し掛かった企業には、ぜひ前向きにIPOを検討していただきたいと思います。

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年5月23日時点の内容となります。
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