近年普及してきた、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」。老後のための資産形成として推奨している企業も増加してきています。しかしながら、金融に関する知識が十分ではない従業員は多く、ただ推奨するだけでは加入もしてくれない、というケースが目立っているようです。従業員のためを思うならば、推奨する企業側が旗振り役となって積極的に情報発信を行っていく必要があるでしょう。
今回はこのiDeCoがどのような制度なのか、どのような利点があるのかをお届けします。
そもそもiDeCoとは?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、日本の公的年金に加えて、自分で老後資金を積み立てるための私的年金制度です。従業員に加入を推奨している事業者にとっては、老後資金形成をサポートすることで、企業の魅力を高め、従業員の定着率向上や採用力強化につながると言われています。
そんなiDeCoの特徴4点を簡単にご紹介します。
1:自分で運用商品を選ぶことができる
加入者は銀行や証券会社などを通じて、自分で投資信託や定期預金などの運用商品を選ぶことができます。選択の自由度が高いこともiDeCoの特徴のひとつです。
2:税制優遇がある
iDeCoでは掛金が全額所得控除の対象となります。その他にも、運用益が非課税であったり、年金として受け取る際も一定の控除が適用される仕組みになっています。
3:加入資格
原則20歳以上60歳未満の人が加入可能で、掛金の上限は自営業者、会社員、公務員、専業主婦など立場によって異なります。例えば、自営業者は国民年金のみに加入しているために公的年金を補完する目的で上限が高く設定されていたり、会社員の場合では企業年金の有無や確定拠出年金(DC)に加入しているかどうかなどの条件によって、それぞれ上限が異なります。
4:年金制度である
60歳以降に一時金(退職所得扱い)または年金形式(公的年金等控除の対象)で受け取ることができます。iDeCoは加入者が自分で運用するため、iDeCoを一般の金融商品と混同されるケースもありますが、公的に制度として認められた年金制度です。
他の制度との違いは?
資産形成目的で税制優遇のある制度としてはiDeCoの他にもNISAがあります。
また資産形成ではありませんが、税制優遇を受けられる制度という点ではふるさと納税なども活用できます。
(ふるさと納税について詳しくはこちらから)

3者ともそれぞれ異なる特徴を持っていますが、いずれも税制優遇の対象となっています。使用用途や目的に応じて使い分けることが大事です。
より利用しやすくなるiDeCo
老後の資産形成に役立つiDeCoですが、2022年4月からの年金制度改正によって制度がより柔軟なものとなり、希望者が加入しやすい条件が整えられています。
具体的にどのような変更があったのか、詳しく見ていきましょう。
1:受給開始年齢の上限引き上げ
受給開始年齢の上限が75歳に延長され、60歳から75歳までの間で選択可能になりました。運用期間を延ばすことで、資産の増加が期待できます。
2:加入可能年齢の拡大
60歳以降も働く方々が、iDeCoを活用して老後資金を積み立てることが可能となりました。
2022年5月1日から、以下の方々も新たに加入可能となっています。
- 60歳以上65歳未満の会社員・公務員(国民年金第2号被保険者)
- 60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入している方
3:企業型DC加入者のiDeCo加入要件の緩和
2022年10月1日から、企業型DC加入者は原則としてiDeCoに加入可能となりました。ただし、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合計が月額5万5000円を超えない範囲での拠出となります。
4:掛金拠出限度額の引き上げ
2024年12月1日から、企業年金(確定給付企業年金や共済年金)に加入している会社員や公務員のiDeCo掛金上限額は月額20,000円に引き上げられました。
5:掛金上限の統一と制限
2024年12月1日から、企業型確定拠出年金(企業型DC)や他の企業年金制度と併用する場合、iDeCoの掛金上限額が一律で月額20,000円に統一されます。
ただし、企業型DCの事業主掛金額と他の企業年金制度の掛金相当額の合計が月額55,000円を超える場合、その超過分だけiDeCoの掛金上限が減額されます。
例えば、企業型DCや他の企業年金制度の掛金合計が月額50,000円を超えると、iDeCoの最低掛金額である5,000円を下回り、iDeCoへの掛金拠出ができなくなる可能性が出てきますので、この点については注意が必要です。
6:手続きの簡略化
iDeCo加入時や掛金変更時に必要だった事業主の証明書の提出が不要になりました。手続きが簡素化され、加入者の負担が軽減されます。
このように、iDeCoは従来の制度よりも利用しやすい形へと改正されています。
これらの改正により加入者の負担は軽減され、新規加入を検討している方にとってもiDeCo加入のハードルは下がっていると言っていいでしょう。特に各種企業年金に加入している従業員の方々にとって、iDeCoの活用範囲が広がっていることは見逃せません。
従業員の働きやすさを追求することは、会社の魅力を上げることにつながります。
今回の改正を機に、従業員のiDeCo加入を促すことを検討してみてはいかがでしょうか。