人事コンサルの「うまい使い方」とは?

あなたは、「人事コンサルタント(以下、人事コンサル)」と聞いて、どういったイメージを思い浮かべますか?
名前を聞いたことはあるけれど、具体的にどういったことを頼めるのか……その内容は、パッとすぐには思いつかないものかもしれません。実は対応の幅は広く、採用活動、人材育成、人事制度の構築、給与や退職金などの制度設計、組織そのものの風土改革なども含めた「経営戦略を実現するための人事戦略」が、人事コンサルの手がける領域です。例えば、「経営者や人事担当者が抱えている悩みから大元の経営課題を導き出し、人的資本経営に基づいた解決の道を提示する」というのもそのひとつです。そんな人事コンサルの施策は多くありますが、その中でもニーズが高いもののひとつが、従業員意識調査。今回は、この従業員意識調査でどんなことが分析できるのか、そしてどのように課題解決に利用できるのかを解説していきます。

調査から改題解決までの流れとは?

一般的に依頼から改題解決までの流れは、おおよそ以下のようになります。

まず、人事コンサル会社は「お悩みA」について相談を受けます。そして社内で何が起こっているのか、現場で働く従業員の状況把握のため「お悩みA」を念頭に従業員意識調査を実施。調査結果の分析により「お悩みA」を引き起こしていた「原因B」が判明。原因が明確になったら、解決するための改善策をご提案します。
改善提案を受け取った企業は、社内でその策を実施します。

課題解決コンサルティングのフロー

基本的には、人事コンサルがお悩みの相談を受け、その原因を探り、特定された原因に対して改善提案をするというものです。意識調査を実施する前の設問設定にあたり、事前に経営陣に、またご希望があれば部門のキーマンにインタビューを行い、精度の高い設問設定を行う事で課題把握に繋がります。これが実際にはどうなるのか、りそなグループの人事コンサル部門がサポートした事例からご紹介します。

【A社(製造業・100~200人規模)の場合】

きっかけとなったお悩み

  • 若手社員定着率低下
  • 社員のモチベーション低下

従業員意識調査で明らかになった課題

  • 年功序列型賃金制度の運用
  • 技術の伝承が進まない
  • コミュニケーションの不足
  • 管理職の力量不足

課題判明後の改善提案

  • 賃金制度再構築
  • 風通し改善施策実施
  • 管理職スキルアップ研修

実施した対応

  • 賃金制度を含む人事制度全般の再構築

A社からのご相談内容は「若手が定着しない」「以前と比べて社内に活気がなくなったように感じる」というものでした。そこで仕事上の悩みと将来への不安を重点に従業員意識調査を実施したところ、上記の課題が明らかになったのです。特に顕著な原因として意識調査に表れていた、管理職の職場把握が足りずコミュニケーション不足が発生して諸々の問題につながっていたことと、賃金制度への不満に対し、賃金制度を含めた人事制度全般を再構築するという対応を行うに至りました。

【B社(卸売業・20~30人規模)の場合】

きっかけとなったお悩み

  • 職場の雰囲気悪化を経営陣が把握していないとの従業員からの訴え

従業員意識調査で明らかになった課題

  • 属人化による業務効率低下
  • 職場の風通し不良
  • 将来のキャリアが不明瞭
  • 管理職の力量不足

課題判明後の改善提案

  • 作業マニュアル化推進
  • 社員のキャリアが明瞭化された人事制度構築
  • 管理職スキルアップ研修

実施された対応

  • 人事異動導入
  • 個人業務の棚卸と作業マニュアル作成
  • 人事制度構築

B社では経営サイドからではなく、現状に危機感を覚えた従業員サイドからのご相談で、原因の究明とその対策にあたりました。長年整備されず硬直化した社内制度が職場環境の悪化を招いていたことが判明し、経営・従業員両サイドとの協議の結果、現代の環境に適応できるよう全体的に社内制度を再構築することとなりました。社内制度全体の刷新ということで本コラム制作(2025年1月)時点で進行中ながらも、一歩ずつ改善が見えてきています。

課題解決は「悩みの原因」特定から

今回取り上げたものはほんの一例ですが、多くのケースで「実は、現場ではこうだった」という問題点が調査ではじめて浮かび上がります。
これだけを聞くと自社内で調査することで解決できそう、と思われるかもしれませんが、自社主催の場合は回答側が無意識に問題点について正直な回答を避けるケースがよく見られ、これは外部機関による匿名性を確保したアンケート調査でなければ見えない部分でもあります。
また、作成するアンケートの内容についても、プロによる可視化・分析のための設問であり、有効性が担保されています。その結果、当初表出していた悩み事の原因が何にあるのか、確度の高い分析が行え、この分析をしてはじめて人事課題が可視化されます。
人事課題に沿った戦略計画・制度構築をするには、まずはしっかりとした分析により真に改善が必要な人事課題を明らかにすることが望ましいといえるでしょう。


今回は人事コンサルの仕事についてご紹介しました。イメージをより明確にするお手伝いができていれば幸いです。
課題となる原因は各企業で似通うものですが、必要になる対応は個々の職場で異なるもの。自社に合った的確な改善や対策を考えるには、課題を正確に洗い出すことが不可欠です。社内で課題が明確になっておらず、急ぎ改善したいお悩みがあるときは、無理して自社内で解決しようとするよりも、その道のプロを頼りましょう。

りそなグループでもご相談を承っておりますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。

人材戦略について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年5月2日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
記事に関するお問い合わせは、お手数ですがメールにてご連絡をお願いいたします。