省エネ住宅に関心が集まっています。カーボンニュートラルを目指す流れの中、国を挙げて計画が進んでいますが、省エネ住宅のメリットは地球環境のためだけではありません。そこに住む人たちの健康にも大きく寄与するのです。
住環境は健康診断結果にも影響する
2025年4月、すべての新築住宅に「省エネ基準適合」が義務化されます。省エネ住宅とは、「高断熱・高気密に作られたエネルギー消費量を抑える性能を備えた住宅」のことです。住宅の省エネルギー化は、国として掲げる「2050年のカーボンニュートラル実現」のための施策の一環なのですが、そこに住む人たちにとっても、大きなメリットがあります。快適性が増し、健康向上に寄与する住宅なのです。
温度、騒音、照度、衛生、安全、防犯に問題がない住環境の人々は、QOL(生活の質)が高いことがわかっています。実際、室温が18℃以上の住宅に住む人と、12℃未満の住宅に住む人とでは、後者は前者に比べて心電図に異常所見のある人が2.2倍、総コレステロール値が基準範囲を超える人が1.9倍になるという研究結果も出ています。
さらに、断熱改修により居間や脱衣所の室温が上昇すると、住宅内での活動が活発になります。家の中が寒いと、暖房器具が稼働していない部屋や廊下などから足が遠のくものですが、家全体の断熱性能が向上することにより、住宅内での1日の身体活動が最大で約50分増加する可能性があります。
また、寝室がいつも寒く、乾燥していると感じている住宅では、睡眠障害の疑いがある人が多いことが明らかになっています。寒いと交感神経が活発になるため寝つきが悪くなり、夜間頻尿のリスクが増大します。寝室の乾燥も安眠を妨害する要因となります。乾燥は就寝中も進行しているため、乾燥が気になって途中で目を覚ましてしまうことがあり、そのまま眠れなくなる可能性もあります。
そのため、暖かく適度な湿度を保った寝室は快眠につながるのです。
子どもにも中高年にも優しい
日本サステナブル建築協会の調査によれば、床近傍室温が16.1℃未満の住宅では、16.1℃以上の住宅に比べて、喘息の子どもが2倍多いことがわかっています。
また、断熱性能の高い家は中高年に多い入浴中の突然死を防ぐ効果もあります。居間や脱衣所の室温が18℃未満の住宅では、入浴事故リスクが高いとされる「熱め入浴(42℃以上)」が約1.7倍に増加します。42℃以上の熱い風呂に入ると、血圧が瞬間的に上昇します。湯につかっているうちに徐々に血圧は低下しますが、風呂から上がると一気に血圧が上がります。温度差が大きいほど血圧や脈拍などの変化が大きく、体や心臓への負担をかけることになるのです。
これを防ぐには、部屋間の温度差をなくす、つまり家全体を暖かくすることが重要です。実際、家全体が温暖な場合の入浴事故リスクを1.0倍とすると、家全体が寒冷な場合の入浴事故リスクは1.66倍に跳ね上がります。
省エネ住宅は掃除が楽になる
健康効果のほかに見逃せないのは、「掃除が楽になる」ことです。住宅全体の断熱性能が高くなると、結露が発生しにくくなります。結露による湿気はカビや腐食、サビなどにつながり、家の耐久性や性能を低下させ、人体にも悪影響をもたらします。結露に気づいたタイミングでしっかり拭き取ることが重要ですが、結露の発生しにくい住宅であれば、掃除も楽になります。
また、断熱性が高いほど、アレルギーや感染症の原因にもなりうるカビやダニの発生を抑制することが期待されます。
【参照URL】
スマートウェルネス住宅等推進調査委員会「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第6回報告会」
SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。