昨今SDGsの観点から「障がい者雇用」への取り組みを進める企業が増えている。その一方で、まだまだコスト面や社内での理解度など課題となる点も多い。「障がい者支援の面だけでなく、ビジネス面においてもwin-winの関係がつくれる」と、2018年の創業当初より、自社ブランド「uFit」で扱うプロテイン・完全栄養食の原料の仕入れ、調合、袋詰め、パッケージのシール貼りまでの作業で障がい者雇用を行っている株式会社MAKERS。現在、決して高いとはいえない障がい者の平均工賃を7万円に上げる活動を続けている林慧亮社長にお話を伺った。

創業当初から障がい者雇用に取り組んだ理由は?
障がい者雇用に取り組んだきっかけは、完全に「それをやりたい!」と思ってスタートしたわけではなく、ビジネス面においてもメリットがあったので、結果的に取り組むことができました。
やっぱりプロテインなどの粉物は、大量生産の工場で大量に作るみたいな、それこそ 何万袋から作るみたいなことがベースにあるんですけど、弊社のように小規模の場合、スタートの段階で何万袋も作るのは本当にリスクが高い。一方で、1,000袋だけ受けてくれる工場があるかというとあんまりないんです。
1,000袋だけというのは採算が合わないので作ってくださらない。ですけど、障害のある方とかが手作業で働かれるようなところであれば、逆に「1,000袋とかの方がありがたい」と言ってくださるので、私たちとしてもビジネスとしてマッチしたというのが創業当初から始められた理由ではあります。

障がい者雇用を始める際のコスト面の課題は?
事業を始めて4年半で、本当にありがたいことにご購入いただけるお客さまも増えてきて、数量も増えてきた中で、コスト面はひとつ課題かなと思っています。
やはり、手作業で詰めるものなので、人件費でいえば高くなってしまうところはあります。一方で、メリットのひとつとして「柔軟性」というところでいうと、大量生産の工場って本当にスケジュールがびっしり埋まってしまっているところが多いんです。仕事を依頼しても次作れますよっていうのが2ヶ月後だったり、3ヶ月後だったりするんです。
けれど、障害のある方が働く施設の場合、柔軟に対応いただくことができるので、過剰在庫を持たなくて良いし、在庫切れを起こさなくて良いという大きなメリットがあります。
過剰在庫や在庫切れなどのリスク低減と生産の柔軟性のところでメリットを感じていて、コストとメリットを天秤にかけた時に、メリットの方が上回っているので引き続き障害のある方たちが働いているところにお願いをしています。
障がい者雇用の難しさとは?
障害のある方と働く上で難しかった点や配慮した点の例としては、商品のパッケージの一部をシールにしてるんですが、障害のある方の障害の度合いにもよるんですけど、「シールを貼る仕事が欲しい」と言われることがあるんですよね。
会社側からしたら、当然ですけど全部印刷した方が安いんです。「シールを貼る仕事が欲しい」と言われたことに対して意義を見出して、そういう仕事をつくれるようにする、というような“配慮”はすごく難しい点だと思いました。
win-winというところで、施設側にとってはシール貼りの仕事ができる点で WINであり、弊社側にとっての WINでいうと、信頼関係をつくることに繋がるので、その先で弊社の仕事を優先的に受けてもらいやすくなったり、先ほどお話ししたような「柔軟性」みたいなのが上がって良い対応をしてもらいやすくなるというWINが得られています。

障がい者雇用に取り組んでよかった点は?
障がい者雇用に取り組んでビジネス面でよかったこととしては、製造のところの「柔軟性」を持てたことがものすごく大きいなと思っています。一度に大量に作らなくて済むことであったり、欠品しそうな時にお願いして柔軟に作っていただけたりというのは、ものすごくよかったことだと思っています。
あと、やはりお客さまの中にはそういった取り組みにすごく共感してくださってご購入いただいたり、ファンになってくださったりということが想像より多かったので、そういった側面のビジネス面へのプラスは大きいかなと思っています。
障がい者雇用に取り組んで、社員にとってよかったなと思える点は、製造の現場を実際にメンバーを連れて見に行くこともしたんですけど、1人ひとりの考え方や、世の中に対する見方とかが良い意味で確実に変わったなって思って。
人の心として広くなったんじゃないかなというのはすごくプラスに思っています。

今後の展望は?
そもそも、障害のある方の工賃を7万円に引き上げようという理由なんですけど、障害年金と7万円を合わせた金額がだいたい新卒の方がもらうような金額と一緒になるんですよね。
最低限自分で暮らしていける、自分で働いて得たお金で暮らしていけるような金額という意味で、7万円を目指すようにしています。
実際に 去年(2023年度)1度達成することができました。
全国の工費の平均は今、1万6,000円ぐらいなんですよね。その中で 7万円という相当高い水準を達成できたのは、すごくよかったなと思っています。
もちろん、私たちだけのおかげとは思っていないんですけれど、やはり継続的に一定の量の仕事があるというのが工賃の引き上げに一番重要なことなんです。
やっぱり、単発の仕事がボンとくるよりは、継続的に同じ仕事がずっとあるというのが、工賃引き上げに役立つと思っています。

これから障がい者雇用を考えている企業に向けてアドバイスは?
あくまで私見になるんですけど、障がい者雇用を目的に雇用するのはよくないかなと思っています。慈悲の行為でやってますみたいなのは、やっぱり雇用される側にとっても正直嬉しいものではないと思っているので、ビジネスにおいて雇用する側にとってもメリットがあって、雇用される側にとってもメリットがある形の雇用ができるのがベストかなと思っています。
なので、障がい者雇用を目指すというより、結果として障がい者雇用していたよね、というような形をつくれるようにやっていくのが良いと考えてます。
やはり、私たち含め中小企業は資金的に余裕がものすごくあるわけではないので、慈悲の心で雇用していると、事業が傾いたときにどうしても継続できなくなってしまうことがあると思うので、事業的にプラスで、なおかつサステナブルに雇用し続けられるように、雇用する側がきちんと利益を出せるような形の雇用形態をつくっていけると良いんじゃないかなと思います。
株式会社MAKERS https://ufit.co.jp
uFitは「スポーツと運動を通じて、一人一人の健康に貢献する」をパーパスに、ケアブランドを展開。2021年の創業以来4年連続で売上を伸ばし、年平均2倍の成長率を達成。現在では1,000人以上のアスリートと20チーム以上のスポーツチームをサポートしている。製品開発では理学療法士など、4分野以上の専門家が携わり、徹底的な品質向上に努める。カスタマーサポートは全て正社員が担当し、週1回の顧客満足度会議を実施。障がい者支援など社会貢献活動も推進し、「誰もがいつまでもスポーツや運動を楽しめる社会」の実現を目指している。
SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。