ビットコイン投資で知っておきたい注意点

ビットコイン投資の利益にかかる税金や、デジタル資産特有のハッキングリスクなど、実際に投資する際に知っておくべきことについて、マネックス証券の暗号資産アナリスト・松嶋真倫(まさみち)さんに、お話を伺いました。


松嶋 真倫 (まつしま まさみち)

松嶋 真倫 (まつしま まさみち)
マネックス証券 マネックス・ユニバーシティ 暗号資産アナリスト

大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。

ビットコインに係る課税

ビットコインなど暗号資産に関しては、富裕層から「税率が高い」との声がよく聞かれます。

日本の暗号資産取引における全体の1~2%が富裕層です(預かり資産1億以上)。また年代別にみるとボリューム層は30代~40代です。

株式投資は申告分離課税(ほかの所得とは分離して税額を計算する)の対象で、譲渡益に対して20%が課税されます。一方、ビットコインなど暗号資産は申告分離課税の対象ではなく、「雑所得」に分類され、総合課税の対象です。

総合課税では、給与所得や事業所得などと合算した総所得金額に対して、超過累進税率が適用されます。したがって、総所得金額が大きければ大きいほど、税率も上がっていきます。たとえば、総所得金額が1億円なら、「最大所得税率45%+住民税税率10%」。いくら稼いでも20%ほどしか課税されない株式投資に対して、ビットコインで1億円以上利益が出た場合、納税後の手残りは半分以下になります。

個人で所有する以外に、法人で所有することも可能です。法人税は800万円超で23%、法人住民税などを含めた実効税率は最大約33%となります。

なお、暗号資産も申告分離課税の対象とするかどうかは現在、議論されており、いずれは申告分離課税の対象になるかもしれません。

ハッキングリスクをどう考えるべきか

ビットコインは発行主体を持たないインターネット上の資産。ネット環境さえあれば、世界中のどこへでも短時間のうちに送金できます。

このメリットの裏に存在するのが「ハッキングリスク」です。日本でも2018年、コインチェックがハッキング被害に遭い、約580億円相当の暗号資産が盗まれ大きな打撃を受けました。その結果、コインチェックはマネックスグループの傘下に入ることとなりました。2024年にもDMMビットコインから482億円相当のビットコインが流出しました。

過去のハッキング被害を受けて、顧客の預かり暗号資産は、安全なコールドウォレット(インターネットから切り離された保管場所)で管理するように義務付けられています。しかし、DMMビットコインはコールドウォレットで管理していたにもかかわらず、ハッキングされました。この事件で、残念ながら規制でハッキングをすべて防げるわけではない、という限界が見えたと考えています。どれだけしっかりした管理方法を義務付けても、人為的なミスなどに起因するハッキングは起こり得る、ということです。

幸い、国内で過去に起きたハッキング事件ではいずれも、取引所によって被害は全額補填されましたが、今後も必ず全額補填されるとは限りません。被害額が甚大だった場合、取引所が補填しきれないというケースも起こり得ます。そのため、大手資本傘下の取引所を利用する方が安心です。

相続時の注意点

富裕層がビットコインに投資をする場合、相続が発生する可能性も考えておく必要があります。海外の取引所の場合は、スムーズに相続手続きが取れるかどうかも未知数ですから、注意が必要です。

暗号資産は残念ながら税率が高いことが懸念材料です。相続時に相続税がかかるほか、相続後に売却して利益を確定した際には、前述のように「雑所得」に分類されて、ここでも納税が必要になります。相続財産も含めて所得税の対象になってしまう、いわば「二重課税」と言える状況ですが、事前に換金する以外に個人が打てる手立てはほぼなく、税制が変わるまでは受け入れるよりほかありません。

また、故人がビットコインを保有していることを家族が知らされていない場合、相続税の申告から漏れてしまい、追徴課税などの対象になってしまいます。こうしたことのないように、資産の詳細について家族にわかるようにしておくことも大切です。

最後に暗号資産取引の注意点をお伝えしたいと思います。最近よく、富裕層の方々から「新しく発行される暗号資産に投資しないかと誘われたけれど、どう思う?」と相談を受けます。もちろん、その暗号資産が時流に乗って大化けすれば、相応の利益を得ることもできますが、本当に信頼に足るものなのかどうか見定めないと、お金を失う可能性もあります。名前も聞いたことのないような暗号資産は、やはり警戒すべきです。

時価総額ランキングをチェックしたり、いわゆる「ホワイトリスト」(金融庁の登録を受けた国内取引所で取り扱っている暗号資産)を調べるなどして、怪しげなものに大金を投じるようなことのないようにしましょう。

法人運用の余資計算について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年12月27日時点の内容となります。
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