再エネ導入がコスト削減に? 新しいサステナ戦略

電気料金の高騰が止まらず、中小企業の経営を直撃しています。コスト削減の成果が吹き飛ぶどころか、経営や事業の継続まで左右しかねない事態も起きています。一方で世界は「脱炭素」の掛け声であふれ、さらなるコスト面での不安要素になりかねません。脱炭素の1つのカギが再生可能エネルギー(再エネ)ですが、日本ではその発電コストは高いというイメージを持たれがち。そんな中、「脱炭素」の観点だけではなく、コストコントロールという観点も踏まえ、戦略的に再エネを導入する企業が増えているようです。

電力各社の相次ぐ値上げで経営に打撃

電気料金値上げに関する帝国データバンクによる企業の実態アンケート(※1)によると、電気料金の総額が1年前より増加した企業は9割超に達し、総額は平均で39.4%増えました。利益圧迫のほか雇用や給与、事業存続への影響が懸念されています。

コスト上昇圧力は今後も収まらない恐れが強まっています。2023年4月から電力各社は法人向け電力を値上げしていますが、背景の1つには原油、LNG、石炭といった燃料(エネルギー)価格の高騰があるとされています。ウクライナ情勢が不安定なまま長期化すれば、エネルギー安全保障の観点からも値上げが続くかもしれません。

2023年4月のG7気候・エネルギー・環境相会合では、二酸化炭素(CO2)の排出削減対策が講じられていない、化石燃料を使った火力発電の段階的廃止を加速するという合意がなされました。日本では7割ほどを高効率の火力発電が占めるため、それが制限を受けることによってコストが上昇する可能性があります。

コスト削減の手段として再エネが選択肢に

再エネの発電コストは低下傾向にあり、化石燃料由来と比べても経済的な優位性が高まり、今やコスト削減の手段として有力視されています。

資源エネルギー庁のまとめでは、国内の太陽光発電と陸上風力発電のコストは海外より高いものの、傾向としては大きく減少しています。(※2)

世界と日本の太陽光発電のコスト推移・世界と日本の陸上風力発電のコスト推移
出典:「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」(資源エネルギー庁)(https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/078_01_00.pdf

JETROが発表した国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告書(※3)によると、2021年に世界で新たに導入された再エネの約3分の2(発電容量ベース)の発電コストは、G20で稼働中の石炭火力発電(コストが最も低いタイプ)よりも低く、再エネによる発電の経済的なメリットが大きくなってきているといいます。

コスト削減というインセンティブを重視して再エネの導入を検討することもできます。環境省ホームページでは、複数の電力会社への一括コンペを通じて、コスト削減と再エネ導入を両立させる支援サービスが紹介されています。(※4)

また一般的な電気料金が上昇を続ける一方で、固定価格買取制度(FIT)による売電単価は下がっています。その結果、太陽光をはじめとする再エネの自家発電などでまかなうことの経済的なメリットが大きくなっています。

環境省も補助する注目の「PPAモデル」とは

日本ではどのような手法が有効なのでしょうか。
代表例として、環境省が「再エネの具体的な導入方法」として紹介している「PPAモデル」が挙げられます。(※5)

PPAは聞き慣れない言葉かもしれませんが、Power Purchase Agreementの略で「電力販売契約」を意味します。ここで説明するのは、太陽光発電事業者と電力の利用者である企業との間でなされる「電力販売契約」です。「PPA」の活用を行い、燃料価格の影響を受けない太陽光発電(再エネ)を調達することで、電気料金とCO2排出量をともに削減することが実現可能となります。

需要家の企業と一定期間の契約を結んだエネルギーサービス会社が、企業などの施設を活用して無償で太陽光発電設備を設置。発電した電気を企業などが購入・使用します。企業には売電収入はありませんが、初期費用や保守や運用のコストも不要です。環境省ではPPAを含む自家消費型太陽光発電について補助事業を主導し、各自治体を通して民間企業の取り組みを後押ししています。

PPAモデルとは
出典:「PPAモデル | 再生可能エネルギー導入方法 | 「再エネ スタート」はじめてみませんか 再エネ活用」(環境省)(https://ondankataisaku.env.go.jp/re-start/howto/03/

将来的な電力料金の値上がりを想定し、エネルギー価格が変動する影響をヘッジする上でPPAを含む再エネ利用を導入する企業が増えています。中長期でのコストを見通しやすく、創エネでBCP(事業継続計画)対策にも寄与でき、遊休施設の活用にもつながります。脱炭素とコスト削減を両立する経営戦略の1つとして参考にしてみてはいかがでしょうか。
りそな銀行ではサステナビリティ戦略策定に関するご支援も行っています。ぜひご相談ください。

(※1)帝国データバンク「電気料金値上げに関する企業の実態アンケート」(2023年4月18日)
(※2)資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」(2022年10月)
(※3)JETRO「再エネ、材料コスト増でも発電コストは低下、IRENA報告書」(2022年7月15日)
(※4)環境省「再エネスタート」ウェブサイト 再エネ導入事例
(※5)環境省「再エネスタート」ウェブサイト 「PPAモデル」

SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年9月1日時点の内容となります。
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