【SDGsインタビュー】株式会社スーパーホテル SDGsへの取り組み・経済価値と社会価値の両立について

製造業においてはSDGsへの取り組みについて認知が広まってきている印象だが、サービス業におけるSDGsへの取り組みについては頭を悩ませている企業が多い。SDGsという概念もなく、環境活動へ認知がまだまだ低かった2001年より環境活動を開始し、2011年にはホテル業初のエコ・ファースト企業に認定。サービス事業者でのSDGsへの取り組みのトップランナーである株式会社スーパーホテル山本会長に、取り組みのきっかけやサービス業が取り組むSDGsの意義についてお話を伺った。

インタビュー動画

環境活動に取り組まれる”きっかけ”についてお聞かせください。

大上段に環境をやろうということで取り組んだわけではなくて、どちらかと言ったら能動的というよりも、受動的でした。水俣市でホテルをやっていまして、当時の水俣市長が「過去の経緯などを踏まえて『環境の街』を目指そう」ということをおっしゃられ、水俣市でISO14001※1を取られました。それで最初に市役所から、スーパーと公共性の強いホテルに話がございました。その当時はですね、私自体も環境はこれから大切だということはよく分かっていたけれど、ホテル自体が真っ先に環境活動を行うことはちょっとケチ臭く思われるんじゃないかということで逡巡しました。簡単に言うと、「もし市長が変われば止めればいいな」というようなつもりでISO14001を取りまして、環境に踏み出しました。

インタビューにお答えいただく山本会長
インタビューにお答えいただく山本会長

実際、その環境に踏み出してみると、経年劣化がちょっとゆっくりになるというぐらいのことだったんですけれども、何よりも一番おっ!と思ったことがありました。私どもの支配人制度は、ベンチャー支配人と言いまして、非常にインセンティブが大きいわけです。売上を上げれば、自分の実入りも多いというものです。ISO14001はかなり多くの書類を出さないといけないので、そんなことよりも営業に行かせてくれと言い出すんじゃないかというふうに思っていましたが、非常に熱心に取り組み始めてくれました。また、その当時水俣市民が熱心に23種類のごみを分別して、環境運動に取り組み出されていました。そうしたら非常にみんな元気になってこられたというような感じを受けました。私どもの経営理念が「人を元気に地球を元気に」ということですから、環境は人を元気にするんだなということで、そこで「市長が辞めたら止めたらいい」という軽いものではなくて、ぐっと力が入りました。
※1 ISO14001:環境マネジメントシステムに関する国際規格。環境を保護し変化する環境状態に対応するための組織の枠組み。

具体的にはどのような活動に取り組まれましたか。

主にやりましたのは、まず省エネ設計です。当時はレストランもホテルの中に作っていたんですけれども、ホテル外においしい地元の飲食店があるわけですから、そこで食べてもらったらいいということで、泊食分離というものを打ち出しました。それから、冷暖房も集中冷暖房を家庭の個別冷暖房に変えていきました。窓ガラスをペアにし、断熱材を強化して省エネ設計をまず進めていきました。もう1つはやっぱり節水ということで、いろいろな器具を使って節水をやって省電力、節水をやってきました。最後にもう1つ、やっぱりデジタル化ですね。これはペーパレス、キャッシュレスということです。これは非常に環境にいいわけなんですけれども、これの一番の悩みというと電力を食うということです。デジタル化を進めるなら、電力を食わないことを考えなきゃいけないということで、グリーンITというものを進めていきました。

取り組んでいく上での課題はございましたか。

省エネ中心に環境活動を進めていきましたけれども、1つの障害ということになると、だんだんCO2の削減幅が減ってきます。メーカーはやはり技術開発でどんどんとCO2を減らしてくる。そこが我々サービス産業の一つの限界点ということになると思いました。これからサービス産業自体、どういうところで省エネを進めていくんだろうと考えてみると、自社でも省エネはもちろんやっていきますけれども、やはりお客さまと一緒に省エネをやっていくということ、ひいてはお客さまに啓発していくことが重要になると考えました。スーパーホテルでしたら延べ年間四百七十四万人(2021年度)という方がホテルを利用されますから、その方と一緒に環境に取り組む。CO2削減とともに啓発運動を行う。家で電気、水道、ガスとかを節約するということが非常に大きな効果があるということでしたので、お客さまに啓発しお客さまと一緒にやろうということで、ECO泊※2、エコひいき※3というサービスを行っています。※2 ECO泊:宿泊時に発生した二酸化炭素排出量の100%をカーボン・オフセットする宿泊サービス
※3 エコひいき:「翌日の清掃不要」の連泊者にオリジナルミネラルウォーターをプレゼントするサービス

スーパーホテルはECO泊等を通じてカーボン・オフセットに取り組んでいる
スーパーホテルはECO泊等を通じてカーボン・オフセットに取り組んでいる

SDGsへの取り組みの社内外への浸透についてお聞かせください。

まずは内部から。SDGsをきちっと理解して、これを仕事とともに考えるということに一つ意義とか喜びを感じてもらわないといけないと思います。新入社員からECO検定は全員受かるまでやっていただく。それから我々と提携している宮崎県の諸塚村などに行って、エコツーリズム、旅行を皆で1泊してもらって自然を体感してもらう。そして一緒に伐採とか間伐材の整理とか、あるいはお茶を作るとか、そういう体験を一緒にやってもらいながら、環境の大切さや環境の良さを勉強してもらっています。そして夜は夜でこの過疎の山林王国をどのようにすれば持続可能な村にできるかというような討論をやってもらっています。まず第一に、環境の大切さとか気持ち良さをわかってもらい、環境というものはやっぱり自分自体も感動するし、周りの人にも感動を呼ぶという気持ち良さがあるんです。
それから我々として一つ宣言をやっていかないといけない「こういうことをやっています」と外へ向かってきちっと言っていかないといけないなと思っています。それでSDGsレポートを年一回出していくとともに、今はSNSでも発信を大いにしていこうというふうに思っています。

SDGs・サステナビリティに関するレポートを発行
リンククリックで「SUPERHOTEL SDGsREPORT2022」のPDFファイルを閲覧できます。
SDGs・サステナビリティに関するレポートを発行
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経済価値、社会価値向上の両立についてお聞かせください。

長い目で事業を見ますと儲かるからといって、社会とか環境の害を意識しないで、仕事をやっていても長続きしないと思います。もう1つは、やはりその社会に役立つ環境に役立つ仕事があっても、帳尻(採算)が合わなかったら、潰れてしまうわけですよね。ですから、やっぱり社会に役立ち、そして環境にも役立つという仕事をやりながら、帳尻を合わす。謂わば、マイケル・ポーターのCSV※4。やっぱりこれが一番大切だと思います。そして、この環境とかSDGsというのは間違いなく、社員の方も誇りを持って取り組めますし、人を元気にするものですから、社員の方も元気になるわけです。SDGsをやっていると、いろいろなところでそういう方たちと手をつなげるということになっていて、それこそSDGs17番ではないけれども、みんなで手をつないで目標を達成しようというふうになってきます。企業が善循環していくというふうには思います。※4 CSV(Creating Shared Value):マイケル・ポーター教授らによって提唱された、企業が社会ニーズに対応することで経済的価値と社会的価値をともに創造しようとするアプローチのこと

株式会社スーパーホテル https://www.superhotel.co.jp/
「Natural, Organic, Smart」をコンセプトとするスーパーホテルは、SDGsをテーマに持続可能なライフスタイルを提案するホテルを国内172店舗運営中。
きれいな空気や水、心を込めたおもてなしをはじめ、安心・安全で地球と人に優しいホテルサービスを提供しており、天然温泉や朝食ビュッフェのほか、自分好みのお酒作りを楽しめるウェルカムバーなどもご用意し、ホテルの多様な使い方を提案している。

株式会社スーパーホテル山本会長へのインタビューは上記記事の他にもございます。
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【SDGsインタビュー】株式会社 スーパーホテル〜サービス事業者・中堅・中小企業がSDGsに取り組む意義について~

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SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

【該当するSDGs目標】

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年4月28日時点の内容となります。
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