海外進出で見落としがちな「税務・会計」の落とし穴とは?

海外進出と聞くと、まず思い浮かぶのは「マーケット調査」や「現地パートナー探し」かもしれません。しかしその裏で後回しにされがちなのが、進出先国における「税務」や「会計」の対応です。制度の違いや税務リスクを把握せずに進出を進めると、思わぬ納税負担や経理上のトラブルが発生するおそれも。
今回は、親子ローン等の財務活動における税務・会計リスクに注目し、その回避策を解説します。

海外進出時に見落とされがちな「税務と会計」のギャップ

国ごとの制度の違いに要注意

海外では、日本とは異なる税率・記帳ルール・決算義務が存在します。例えば、日本基準とIFRS(国際財務報告基準)では、収益認識のタイミングや減価償却方法が異なり、連結決算を行う際には処理のすり合わせが必要です。こうした違いを把握せずに日本基準だけで資料を整えても、現地監査や金融機関への説明に苦慮するケースがあります。

親子ローンにも税務リスクが

日本の親会社が、現地子会社に貸付を行う「親子ローン」は、進出時の資金調達に有効な手段です。ただし、利息が日本と現地双方で課税される「二重課税」のリスクがある点には注意が必要です。国によっては親会社への支払利息を「高金利」との判断により、子会社への貸付を「低金利」と判断したりして、損金算入を否認されることもあります。こうしたリスクは、租税条約の確認や移転価格税制への理解・対応により回避できます。

為替の変動がもたらす評価損益

通貨の異なる親子間での債権・債務には、為替変動の影響がつきものです。例えば、親会社がドル建てで貸し付けた場合、決算時に評価損益が発生することがあります。時価会計では相場の急変による資産評価の変動が起き、簿価会計でも換算タイミング次第で為替差損益が生じます。加えて、「親会社にとっての外貨」か「子会社にとっての外貨」かによって、誰がリスクを負担するのかが異なるため、事前のリスク分析が重要です。

実際に起きているトラブルと対策

利息が損金算入されない?

親子ローンで発生する利息が、現地で源泉課税され、日本でも課税対象となる例があります。また、海外での利息への課税を日本で控除できる制度がありますが、金利の設定を誤ると控除が適用されない可能性も。二重課税を避けるため、租税条約等で適切な利率の確認をする必要があります。

通貨換算による数字のズレで帳簿に混乱

外貨建取引の処理ミスは、例えば売上や費用の円換算タイミングが適切でない場合、実際の収支と帳簿上の数値にギャップが生じ、本社経理に意図しない混乱をきたすケースも。特に、決算月が異なる拠点とのやり取りでは注意が必要です。このリスクを軽減する方法として、「為替予約」があります。詳しくはりそなグループのリスクヘッジができるサービスもご紹介している、こちらのコラムを参考にしてください。
海外取引の為替リスクと賢い対応策

移転価格税制を見落としていた

親会社と子会社間の取引価格が、第三者間の取引と同等である「独立企業間価格」になっていない場合、税務当局から移転価格税制により課税されるリスクがあります。移転価格税制に対応するには、あらかじめ「移転価格ポリシー」を策定し、契約書類の整備を行うことが重要です。必要に応じて、税務当局との事前確認制度(APA)を活用するのも有効です。
移転価格税制についてはこちらのコラムもご覧ください。
詳しくは、国税庁「移転価格ガイドブック」や、経済産業省「移転価格税制の基礎知識」などにも掲載されています。

現地に強い専門家に相談するという選択

海外進出にあたっては、社内だけで税務・会計の課題を解決しようとせず、早めに専門機関や専門家の支援を受けることが、リスクの回避と立ち上げの円滑化につながります。

りそなグループでは、会計士・税理士・移転価格アドバイザーなどとのネットワークを活用し、企業の課題に応じた専門家の紹介が可能です。りそな総合研究所による経済レポートや各種セミナーも、最新情報のキャッチアップにつながると好評です。

他にも日本には、企業の海外展開をサポートする複数の公的機関・支援機関があります。

JETRO(日本貿易振興機構)
進出先の国・地域ごとの市場環境や税制、法制度などの情報が公開されており、個別相談や簡易調査の支援も受けられます。

中小企業基盤整備機構(中小機構)
海外展開を支援するセミナーや商談会を開催しており、現地パートナー探しのマッチング支援にも強みを持っています。

財務省や外務省などの政府機関
各国との租税条約の内容や制度情報が整備されており、進出にあたっての法的根拠の確認に役立ちます。

さらに、金融機関も重要な相談先のひとつです。税務・会計処理だけでなく、資金調達スキームの設計や、現地の専門家とのネットワークづくりにおいて、実践的なアドバイスが期待できます。

税務・会計の事前準備で、トラブルを防ごう

海外進出にともなう税務・会計のリスクは、進出後に表面化することが多く、トラブルの未然防止には初動がカギを握ります。自社だけで対応が難しいと感じたときは、早い段階で専門家に相談することが成功への第一歩です。
りそなグループでは、課題のヒアリングから専門家紹介、金融支援までを一体でサポートしています。「いつか海外進出を」とお考えなら、ぜひ今のうちからご相談ください。

  • ご融資に際しては、弊社所定の審査手続きが必要な点をあらかじめご了承ください。

海外市場への進出について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年8月22日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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