コロナ禍を経て、「職場の飲み会」文化にも変化が起こっています。20歳以上の社会人831人を対象に行った調査では、6割超が「飲みニケーションは不要」と回答。一方で「親睦の場として価値がある」という声も根強く、職場飲み会は“ゼロかイチか”では語れない複雑な局面に入っています。本記事では調査結果を読み解き、今後の懇親スタイルを考察します。
職場飲み会は「年に数回」の時代へ
コロナ禍以降、「職場の飲み会」に異変が起きています。最新調査によれば、その頻度はすっかり“季節行事”レベルに落ち着いたという結果が出ています。株式会社ネクストレベルが運営する「ミライのお仕事」が、20歳以上の社会人831名を対象に実施した「飲みニケーション」に関する調査では、職場飲み会の開催頻度を尋ねたところ、「ほとんどない」(29.1%)、「年1〜2回程度」(30.1%)、「数か月に1回」(22.2%)、「月1回」(12.6%)、「月に2〜3回」(4.5%)という結果となりました。飲み会が減った理由として、「感染症対策をきっかけに廃止」「会社として飲み会そのものを禁止している」「参加者が自己負担を嫌がり自然消滅した」「在宅勤務で集まりの必然性が薄れた」などが挙げられており、リアルな酒席が社内交流の中心だった時代は過去のものになりつつあることを強く示唆しています。
自由参加のはずが……残る“空気”の強制力
本調査では参加義務の有無についても質問が行われており、「参加・不参加は個人の自由」58.4%が最多で、形式上は半数超の職場で個人の判断に委ねられていることがわかりました。しかし一方で、「必須」と「ほぼ必須」が合わせて14.3%、「必須ではないが断りにくい」も22.5%となっています。これらを合計すると36.8%、およそ3人に1人は“空気による強制”を感じていることになります。
「断ると人付き合いが悪いと言われる」「上司の誘いを断れず休日が潰れた」「強制ではないが欠席すると評価に影響するという空気がある」など、形式的には自由とされている一方、実質的な同調圧力を感じている人も少なくないことが浮き彫りになりました。これらのデータと証言は飲み会の“自由化”が進む一方で、依然として上意下達型カルチャーが残る職場では不参加への心理的ハードルが高いことを示しています。

必要派35.5%が挙げる“親睦効果”とプラス体験
飲みニケーションの是非を問う設問では、「必要」5.5%、「どちらかと言えば必要」30.0%、合わせて35.5%が“必要派”という結果でした。必要派が選択した理由の上位4つが「職場の人と仲良くなれる」「仕事が円滑に進む」「他部署との交流が広がる」「新人・中途社員の定着に役立つ」で、親睦やチームビルディングを目的としているようです。自由記述欄には「無口な同僚と一気に打ち解けた」「普段話せない上司と腹を割って話せた」「社長の意外な一面を知り親近感が増した」など、距離の縮小を実感する具体的エピソードが多数寄せられ、長期休職後に飲み会で労いの言葉をもらい復職の励みになった例や、他部署交流で情報共有がスムーズになり業務効率が向上した例も挙げられています。これらのポジティブ体験を通して「オンライン中心の働き方で希薄化しがちな人間関係を補完するリアル接点として、飲み会が有効に機能するケースがある」といえます。必要派の声は、飲み会を全廃するのではなく、目的や頻度を絞って活用する“選択的飲みニケーション”への移行を示唆しているのです。
不要派64.5%が指摘する“気疲れ・時間・費用”とネガティブ体験
一方、「いらない」27.0%と「どちらかというといらない」37.5%を合わせた不要派は64.5%と多数派を形成しました。不要と感じる理由は「気を遣う」が61.8%で圧倒的首位。続いて「勤務時間外」47.4%、「お金がかかる」40.7%がランクインし、精神的・時間的・経済的コストが三重苦となっている現状がわかります。自由記述欄には「お酌が下手で説教された」「ほとんど飲めないのに上司に注がれた」「乳児を抱えているのに強制参加させられた」など、ハラスメントやトラブルを象徴する“最悪エピソード”が並びます。さらに「翌日の業務に影響するほどの酒量を強要された」「割り勘なのに飲めない人の負担が大きい」「一次会で解散と言っておきながら突然の二次会強制」など、予定外の拘束がストレスという声も目立ちました。
飲みニケーションが潤滑油どころか、逆にモチベーション低下の要因になり得る現実もあるのです。企業にはアルハラ防止と費用補助の明文化、さらには“参加しない権利”を保障するガイドライン整備が求められているといえます。
