不動産レポート2022年冬(首都圏版)

首都圏版 不動産マーケットレポート 2022冬

3か月に一度、マーケット情報や不動産に関する市況、最新のトピックスなどをお届けします。本記事は2022年冬に発行された、首都圏向けの内容となります。

【Market REVIEW】主要国の利上げレースは終盤 日本もようやくスタートするか注目

  • 昨年初めに始まった主要国の利上げサイクルは遂に最終段階に入ったようです。G7国の中ではカナダ中銀が先陣を切って利上げの一時停止を表明しました。FRB(米連邦準備制度理事会)もあと2回の利上げで打ち止めを示唆しています。年央までには主要国中銀の大半が利上げを止めて、インフレ動向を監視する姿勢に移行すると予想されます。他方、日銀もようやく金融政策の正常化に着手するとの見方が拡がっています。日本が他国に遅れて利上げを始めることは珍しいことではありません。日銀が最後に政策転換(ゼロ金利解除)を決定したのは2006年7月で、FRBが最後の利上げを行った1か月後です。その前の政策転換(ゼロ金利解除)は2000年8月、FRBの最後の利上げの3か月後でした。米国が景気過熱の鎮静化に目処をつけたころになってようやく日本も緩和政策の転換ができる環境が整うことを表しているようです。但し、前回の米国の利上げサイクル(2015年末~18年末)ではそこまで至らず、日銀は正常化を進めることが出来ずに終わっています。
  • インフレ(CPI生鮮食品除く)の伸びを見れば、2000年8月はマイナス0.3%、2006年7月が+0.2%であったのに対し12月は40年ぶりに4%を越えており、正常化を進める条件は十分に整っているようにみえます。ただ、欧米とは異なり足元の物価上昇は供給要因主導で、人件費を反映し易いサービス価格の上昇は低位に留まっていること等から2%物価上昇の定着はまだ見通せない状態です。4月の新体制移行後、日銀は金融政策の正常化に着手するとみられますが、そこでは市場機能の喪失など深刻な副作用をもたらしているYCC(長短金利操作)の修正/撤廃が優先され、マイナス金利の解除については極めて慎重に進められるものと予想されます。

(りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 下出 衛)

実質GDP成長率、インフレ率は23年以降鈍化傾向

  • ESPフォーキャスト2月調査では、2022年10〜12月の実質経済成長率(前期比年率)は+2.43%となり、前回2023年1月調査より0.83%ポイント下方修正しました。2023年後半にかけて鈍化し、その後1%程度で推移する見通しとしています。
  • 2022年10〜12月の消費者物価上昇率(CPI生鮮食品除く)の前年同期比は3.70%となり、2022年度は2.89%、23年度、24年度は1%台に低下する見込みとしています。
実質経済成長率とインフレ率(実績・見通し)
(出所)ESPフォーキャスト

本格的な受入れ再開により回復基調の外客数

  • 日本政府観光局によると、2022年12月の訪日外客数は137万人と前月比約1.5倍となっています。これは10月より個人旅行の受入れや査証免除措置の再開等が実施されていることが影響しています。
  • 2022年の年間訪日外客数は383万1,900人となり、6月の観光目的の入国受入れ再開から段階的な緩和がなされ、10月の本格受入れ再開以降顕著に回復傾向が見られました。
  • 観光庁によると、2022年10〜12月の訪日外客消費額は5,952億円で、2019年同期比▲50.9%となっています。国籍・地域別では特に中国からの旅行消費額が同▲88.2%と回復が遅れています。
訪日外国人旅行客数
(出所)日本政府観光局

新築価格は上昇傾向、中古価格は東京都でやや鈍化

  • 不動産経済研究所によると、首都圏の新築分譲マンション価格は、2022年12月には前年同月比+3.2%となり2か月ぶりにプラスとなっています。2022年の平均価格は都区部では前年比▲0.7%でしたが、23区以外の全エリアでは上昇傾向にあり、首都圏全体では同+0.4%となっています。首都圏における2022年の初月平均契約率は70.4%であり、2021年から引き続き好調の目安である7割を上回っています。
  • 東京カンテイによると、首都圏の2022年の70㎡当たり中古マンション平均価格は前年比+13.2%と上昇傾向にあり、東京都は同+9.8%とやや鈍化がみられるものの相対的に割安感が強い周辺3県では需要の高まりから上昇率が拡大しています。
2022年の新築マンション価格(平均価格・対前年比)
(出所)不動産経済研究所

オフィス空室率は横ばい継続、平均賃料は下落基調

  • 三鬼商事によると、2022年12月の東京ビジネス地区の平均空室率は6.47%(前月比+0.09ポイント)で、2021年6月より1年半にわたって6%前半を推移しており、横ばい状態が継続しています。
  • 東京ビジネス地区の2022年12月の平均賃料は20,059円/坪(前月比▲0.11%)であり、2020年8月以降29か月連続で下落しています。下落傾向は継続していますが、その幅は縮小傾向にあります。
  • 労働環境の変化、経済状況の見通しが懸念される中、都区部では2023年の春以降にオフィス大量供給を控えており、市況への影響が懸念されます。
東京ビジネス地区の空室率と平均賃料
(出所)三鬼商事
※東京ビジネス地区=千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区

【Market TOPICS】東京都のオフィス計画

東京都心5区のオフィス新規供給と空室率
(出所)三幸エステート
(注)1フロア面積50坪以上のビルを対象、空室率は年末値
東京都内の主なオフィス計画
(出所)三鬼商事

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年3月17日時点の内容となります。
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