事業承継その前に!代表的な承継方法とは

現役の経営層にも高齢化の波が訪れ、事業承継の件数は増加の一途です。中小企業では親族内承継が多いものの、昨今は少子化の影響や職業選択において本人の意思を尊重する風潮もあり、親族外への承継も増えています。いずれの方法でも承継には時間がかかるもの。事業承継をスムーズに行うためには適切な手段を取ることが重要です。どのような手段があるのか、事例を交えながらご紹介します。

自社株式が分散している場合―持株会社の活用

後継者が決まってはいるものの複数の親族や従業員に自社株式が分散している場合、意思決定に時間がかかり、経営が不安定になる可能性があります。また、対策前に株主が急逝した場合はさらなる分散のリスクも。そのような事態を避けるため、自社株式の集約を目的とした持株会社(ホールディングス)を設立し、既存の自社株式を持株会社が買い取るといった方法があります。

A社の事例

老舗のA社は長い歴史の中で株主が分散し、意思決定に時間がかかることが経営上の課題となっていました。そこで経営の安定化を図るため、議決権の集約を目指すことに。A社社長が持株会社を設立し、それぞれの株主から分散していた自社株式を買い取ることでA社株式を集約。持株会社では自社株式の購入資金を金融機関から調達してそれぞれの株主に代金として支払い、借入金の返済はA社からの配当金を原資としました。持株会社に自社株式を集約することで、A社社長は自社の経営権を確保できました。

少し先の承継を考えている場合―自社株承継信託の活用

後継者は決まっているものの、実際に経営を任せられるようになるまでの育成期間の確保に活用できる、自社株承継信託があります。経営者は経営権(議決権)を持ったまま、自社株式を信託銀行等に信託し、配当などの財産権を後継者に移転できます。

B社の事例

B社の社長は高齢でしたが、後継者である長男が十分に社会経験を積んでから事業承継したいという意向があったことから、自社株承継信託を活用しました。議決権をB社社長が持ったままで、配当等の受け取りなどの財産権を後継者である長男に贈与しました。相続発生時には信託銀行から後継者に自社株式が交付され、契約が終了します。
5年後に承継を想定していたこともあり、信託の終了後は速やかに後継者へ自社株式が渡ることも親子にとっての安心材料となりました。

承継先が見つからない場合―M&Aや外部招聘

親族内にも従業員にも後継者が見つからない場合にはM&Aや社内外から後継者を募る方法があります。
企業には価値ある商品やサービスを提供するほか、従業員の雇用を守るという社会的役割があり、廃業となると全てが失われてしまうため、親族外承継の選択肢を取るケースが増加しています。M&Aについては、こちらのコラムでも詳しくご紹介しています。
「最近の事業承継とM&A事情」

C社の事例

C社は業績が好調で黒字経営を続けていますが、子どもたちがそれぞれ異なる道に進んでいたため、C社社長は親族内承継以外の方法を検討することになりました。近年の事業承継では脱ファミリー化が増えていることを知ったC社社長は、M&Aや役員・従業員への承継といったさまざまな選択肢を検討した結果、M&Aを行うことを決断。最近ではM&Aへのイメージも向上していることや、買い手企業とのシナジーによる成長戦略の面、従業員の雇用維持が期待できるといった点でM&Aに魅力を感じたといいます。


いずれの対応策を取る場合でも、所有資産や株主等の現状を把握し、適切な対応を行うことで円滑な事業承継の実現に繋がります。対応にお困りの場合には、ぜひりそなグループにご相談ください。

事業承継について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年12月15日時点の内容となります。
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