仕事へのモチベーションが低くなったり、「燃え尽き症候群」に陥る従業員が増加していることなどが身近な問題になっている現代社会。精神的なケアが必要になるケースも多く見られるようになりました。
会社としては、自社の従業員の活力を取り戻したい、あるいは燃え尽きを予防したいと考えるわけですが、解決のためにはどのような対策が必要なのでしょうか。
考え方のひとつとして、「ワーク・エンゲイジメント」についてお届けいたします。
ワーク・エンゲイジメントとは
燃え尽き症候群(バーンアウト)は、心身の極度の疲弊により、仕事に対して意欲を失う状態であることはよく知られていますが、ワーク・エンゲイジメントはその対極に位置する概念です。仕事への感情は否定的なものの強迫観念によって過度の活動をしてしまう「ワーカホリズム」、仕事への感情は肯定的だが活動水準は低くなりがちな「職務満足感」など類似概念はありますが、固有の概念として区別されます。(※1)
資料:厚生労働省「和元年版労働経済の分析一人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について一」第2-(3)-2図をもとにりそな銀行が作成
ワーク・エンゲイジメントは、次の3つがそろった状態として定義されます。
- 仕事から活力を得ていきいきとしている(活力)
- 仕事に誇りとやりがいを感じている(熱意)
- 仕事に熱心に取り組んでいる(没頭)
つまり、仕事に関してポジティブで充実した心理状態にある、いわゆる「働きがい」を感じている状態のことを指していることと理解してよいでしょう。この度合いは、UWES(※2)などの測定法で、スコアとして可視化することができます。
厚生労働省の調査結果(※1)においても、ワーク・エンゲイジメント・スコアが高い企業ほど、従業員の自発的行動が増加し、離職率が低下していく傾向が確認できています。
(※2)ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(Utrecht Work Engagement Scale:UWES)。厚生労働省の調査では、合計3項目の質問で測定できる超短縮版(Ultra-Short Measure)の質問から得られたスコアを参考にしている。詳細は(※1)の資料に掲載。
ワーク・エンゲイジメントを向上させるには
従業員のワーク・エンゲイジメント向上のために企業ができることは、考え方次第で多岐にわたります。
方法のひとつは、年収などの条件面をよくすること。報酬によって「働きがいがある」状態を作ることが、分かりやすく影響します。この方法は当然ながら人件費の増大による費用負担が伴うため、実施は厳しいと考える企業も多いでしょう。
ですが、働きがいを増進させるものは金銭的なものだけではありません。職場環境の改善や、社会に対する仕事の在り方を明確化して従業員自身が目的意識を持てるようにするなど、後述の「個人の資源」「仕事の資源」(※1)を高める工夫によってワーク・エンゲイジメント改善につなげることも可能です。
「個人の資源」……従業員の仕事に対する認識
- 仕事を通じて成長できていると感じる
- 自己効力感(仕事への自信)が高い
- 勤め先企業でのキャリア展望が明確になっている など
「仕事の資源」……企業が実施する雇用管理の取り組み
- 業務遂行に伴う裁量権の拡大
- 労働時間の短縮や働き方の柔軟化
- 有給休暇の取得促進
- 職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化
- 仕事と病気治療との両立支援 など
ワーク・エンゲイジメントを高める企業の取り組み
すでに一部の企業では次のような取り組みを行っています。
- スコアの低い部署の増員
- 階層別に1on1ミーティングを多く実施。仕事の話に限らず、ざっくばらんな話で社内コミュニケーションの円滑化を促進
- 生産性を向上させるための休み方に着目した休暇制度の導入
(一例をこちらの記事でもご紹介しています)
いずれも働きやすさや職場環境改善に資するもので、従業員のエンゲージメント向上に寄与しているとのことです。(※1)
従業員が誇りを持てる会社づくりのために
従業員の仕事に対するモチベーション向上のために、ワーク・エンゲイジメントを軸として課題解決に臨むことはとても有効です。
その結果として、始まった取り組みが、従業員にとって「会社から良くしてもらっている」という感覚が高まるような内容であるのは必然なのかもしれません。
「この仕事に誇りを持てる」と従業員が言えるような会社づくりのため、ワーク・エンゲイジメントの考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。
(※1)厚生労働省 「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」
課題解決の考え方及び人材戦略について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。