「なかなか人材が集まらない」「期待していた若手が退職してしまった」といったお悩みはないでしょうか? 事業を成長させるチャンスが来ても、人材不足ではブレーキになりかねません。人への投資が有効な手段として関心を集める中、着目したいのが「健康経営」です。
健康経営とは「将来的に収益性を高める投資」
健康経営とは、人材戦略として従業員の健康管理・増進を行うこと。経済産業省は、経営的視点に立って実践することで「将来的に収益性等を高める投資」になると位置付けています。具体例としては健康診断の後も細かくフォローする、健康に関するセミナーを開催する、ストレスチェックを実施する、アプリを通じた運動の促進などが挙げられます。
社会的に心身の健康への関心が高まる一方です。「人生100年時代」という言葉をよく耳にするように、できるだけ長く働きたいというニーズも高まっています。企業としても労働負荷やメンタルへの影響を丁寧にケアすることが求められ、少子化と人手不足、労働人口の高齢化が進んでいることで従業員に長く勤務してもらいたいところです。
中小企業の人材戦略にも効果的
健康経営を実践することは、人材に関するこまりごとが多い中小企業にこそ効果があると言えます。従業員の総数が多くない上に、1人が複数のタスクを抱えていることもままあります。1人が退職や欠勤をすることによる影響は大きくなりがちです。
健康長寿産業連合会と滋賀医科大学の共同研究(※1)によると「喫煙者の割合」、「睡眠により十分な休養がとれている割合」「運動習慣者割合」などは、企業収益との関連があることが明らかになっています。「健康経営に取り組み、従業員への健康投資を行うことは、健康的で生産性の高い労働力を生み出す可能性がある」としています。
喫煙や睡眠、運動といった生活習慣を改善できれば生産性(パフォーマンス)が向上します。そして人材の定着率が高まると、採用や教育に要するコストを圧縮できるかもしれません。従業員のウェルビーイング(身体・精神・社会的に満たされた状態)も向上し、企業の持続可能性にも貢献するでしょう。
就職先選びの決め手にもなる健康経営
健康経営の推進を対外的にアピールできるものとしては、「健康経営優良法人」が代表格です。企業・医療団体などで構成され経済産業省などがバックアップする「日本健康会議」が認定する顕彰制度で、補助金申請時の加点などの優遇措置、融資での優遇利率の適用、自治体の入札での優遇など、さまざまなメリットがあります。(※2)
優良法人の認定を受けることで、自社の魅力発信や人材確保に繋がる可能性もあります。経産省の資料(※3)によると、就職活動生や転職者の60.4%が、企業が健康経営に取り組んでいることが「就職先の決め手になる」とアンケートに回答。また、職場に望む項目として最多だったのが「心身の健康を保ちながら働けること」でした。健康経営は就職先選びの決め手にもなる時代と言えるでしょう。
なお「健康経営優良法人」の大企業法人部門には「ホワイト500」、中小企業部門には「ブライト500」という上位枠があります。国などが健康経営の取り組みが優秀だと評価する企業群の中でもより優れている企業として、イメージアップの効果も大きいのです。
利益には直結しない、長い目で見た「投資」
一方で、健康経営は目の前の利益に直結するわけではありません。実践するためには体制や仕組みづくりも必要であり、人材への「投資」という意識で取り組むことが重要です。
従業員の心身の健康は、企業の財産(経営資源)に他なりません。従業員の定着率やパフォーマンスの向上をゴールに設定し、従業員の健康増進に向けて取り組むことで、やがて生産性や競争力、持続可能性のアップにも貢献する可能性があります。会社として従業員が抱える悩みやニーズもしっかりと把握して取り組みを継続することがカギを握ります。
「ACTION!健康経営」の公式サイト(※2)では申請書のサンプルも紹介されています。申請書を参考にすることは取り組みの第一歩になるでしょうし、心身の健康やパフォーマンス向上をめぐっては、「短時間の昼寝」を指す「パワーナップ」も有効とされています。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
(※1)健康長寿産業連合会と滋賀医科大学の共同研究 『我が国における健康経営の取組みと企業収益の関連性の検証』 日本語翻訳を発表 (2023年3月16日)
(※2)「ACTION!健康経営」(運営:株式会社日本経済新聞社)
(※3)経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 「健康経営の推進について」(2024年3月、P.56)
SDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。