働きやすい職場づくりには、従業員エンゲージメントを高める経営が必要だと言われています。従業員エンゲージメントについては過去の記事でも取り扱っていますが、その要素の中でも特に職場の雰囲気に直結するのが心理的安全性です。
今回はこの心理的安全性について、管理職が現場でチェックすべき事柄と実際にどうするべきなのかを掘り下げます。
そもそも心理的安全性とは
心理的安全性とは、ハーバード・ビジネススクールのエドモンソン教授が提唱したコンセプトです。
心理的安全性は、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義されます。イメージしやすいよう少しくだけた言い方にすると、「ビクビクせずに自分の意見を言える環境」といった表現になるでしょう。
この心理的安全性が確保された職場では、自分の手元で情報を秘めることよりも、情報や問題点の共有をすることが活発になり、結果として組織の健全性や生産性の向上に寄与するようになります。
定義や条件についてもっと詳しく知りたい方は、下記の参考文献をご覧ください。
【参考】
Google re: work「効果的なチームとは何か」を知る
では、実際に職場の心理的安全性向上のために何をするべきでしょうか。
職場で体感する心理的安全性
まずは、管理職として自分の職場の心理的安全性がどの程度保たれているかを体感し、把握することが必要です。とはいえ、部下に詳しいアンケートをとるなど、時間と手間をかけた調査は実行が難しいものです。なるべく簡易な判定方法として、以下に管理職目線で最低限チェックしておきたいポイントをまとめました。
【職場の現状チェックポイント】
- 雑談含めて活発な意見交換が交わされているか?
- 仕事に必要・不必要を問わず自分(管理職)に部下が話しかけてくるか?
- 悪い報告が率先して上がってくるか?
これら3点で満たされていない項目がある場合、その職場は心理的安全性が確保されていない可能性がありますので、対策を検討しましょう。
もっと詳細にやりたいと感じた方は先に参考でご紹介したGoogleの研究結果や、その元となったエドモンソン教授の論文・講演等を参考にチェックリストを作成するとよいでしょう。
管理職が心理的安全性確保のためにすべきこと
意見交換や雑談などが少ないと感じられる場合、コミュニケーションのとりやすい環境づくりを意識した対策が必要です。とくに自分と部下とのコミュニケーションに問題があると感じられるなら、上司への報告が過少だということになります。
それは上司である自分自身が1on1を設定するなどして改善できますので、比較的始めやすいといえるでしょう。このときに上司は、「傾聴力」や「ワーク・エンゲイジメント」にも共通する、意見を聞く姿勢を徹底することが大事です。部下が「意見を聞いてくれる職場とその上長」だと認識すれば、職場環境改善への大きな一歩となります。
詳しくは以下の記事をご参考になさってください。
部下との良好なコミュニケーションのために「傾聴力」を磨こう
問題は悪い報告が上がってこない組織になってしまっているケースです。これを解消するには、悪い報告をすると罰せられる意識をチームからなくすことが重要です。
例えば、ある仕事を部下に任せているとき、上司はトラブルになる前にフォローをしたいと考えます。しかし部下は、経験不足や失敗をとがめられるのではないかと恐れ、うまく進んでいないことを報告したがらないこともよくあります。
しかし、どうしようもなくなってから対処に追われるケースなどはなるべく避けたいもの。問題放置による被害の拡大を防ぐため、悪い報告を率先して上げられるような体制づくりが肝要です。
悪い報告の原因が外的要因によるものなら、早期発見を報告者の功績とするべきですし、報告者のミスによるものだとしても、報告者と管理職自らの采配が原因であるとして対応することが信頼を得ることにつながります。しっかりとした基準をもとにした信賞必罰で公平性を保ちましょう。
部下の信頼を勝ち取ることで心理的安全性は向上し、それによって意見交換や情報共有も活発化すると、結果として業務の効率や成果の質が改善されるという良い循環が生まれます。
逆に保身に走って部下を犠牲にすると思われるようなことや、支配的な態度をとることは心理的安全性を下げてしまいます。その場合の仕事の質は、推して知るべしでしょう。
心理的安全性を確保するためには、管理職自身がその職場のリーダーとして振る舞うよう自覚を持つことが重要です。まずは自分の職場を見渡して状況を掴み、その場に相応しいリーダーであるよう努力することが、より良い職場を作る第一歩です。