大金を投じてDXを推進してみたものの、どうもうまくいかない…。そんな声は、中小・中堅企業のみならず、大企業からもよく聞かれます。
DX導入企業、3割は成果が「イマイチ」
上の図は、日本能率協会が行った、DXに関するアンケート調査の回答です。DXで「成果が出ている」「ある程度の成果が出ている」と回答しているのは、全体の7割。一方、3割ほどの企業は「どちらとも言えない」「あまり成果は出ていない」などの消極的な回答をしていることがわかります。
さまざまな企業へのDX支援を行っているりそなデジタルハブでは、この原因の一つを「ベンダー任せで次々に導入してしまった結果」であるとみています。営業マンの宣伝文句を聞けば、どれも魅力的に思えます。綿密に戦略を構築しないまま、一足飛びにいきなり導入したくもなるのですが、システムは使いこなせてこそ価値があるもの。「これは便利そうだ」という理由だけで、バラバラと導入を進めてしまった結果、活用できていない…という事例はたくさんあるのです。
システム間の連携が全く取れていないケースも散見されます。異なるベンダーの製品を次々に導入した場合に起こりがちです。アプリを10個導入したら、パスワードも10個必要になるなど、かえって現場の手間が増してしまい、非効率になってしまった、という残念なケースも少なくありません。
導入初期の失敗は「当たり前」と考えよう
さらに、自社のそれまでの業務フローに完璧に合致するシステムを導入しようと意気込んだ結果、費用が高額になってしまうケースもあります。DXを進める際には、ある程度、システムに自社の業務を合わせる――つまり柔軟にシステムに合わせた業務に変えていく、という考えで取り組んだ方がうまくいきます。
いずれにしても、デジタルはあくまでもツール。しかも、DXは“トランスフォーメーション”が目的ですから、単なる業務効率化、部分最適を目指すものではありません。便利であることはもちろん、会社のさらなる飛躍に寄与するシステムにしてこそ、DXの価値が生まれるといえます。
では、DXを成功に導くためには、どうすれば良いのでしょうか?
導入前にはまず、経営戦略をしっかり立てた上で、「どこに、どのようにデジタルを活用して、会社を伸ばしていくのか」を明らかにすることが肝要です。その上でベンダーを集約して導入した方が、使い勝手が良く、成果の出るシステムになりやすいといえます。これから導入を検討している企業は、導入を焦るのではなく、まずはしっかりと全社の業務について話し合えるコンサルタントをつけて戦略を練ることをお勧めします。
また、導入初期に発生する不具合は避けられないと考えてください。ここで「不便だから、もうDXは中止しようか」などとアッサリ諦めるべきではありません。予算と人材を豊富に持っている大企業であっても、不具合が発生して苦戦する時期を必ずと言っていいほど経験しています。数年かけてじっくり使いこなし、業務改革に取り組むべきなのです。
例えば、誰もが認める優良企業として知られる、ある大手メーカーでさえ、DXを導入してしばらくの間、失敗続きだったといいます。しかし、このメーカーは投げ出すことなく、粘り強く改善を進めました。その結果、システムを使いこなすことに成功し、さらには独自の改良システムも作ってしまいました。今ではこの独自システムの外販も行っています。
失敗の責任を担当者に押し付けてはいけない
中小企業の場合は、人材も限られていますから、導入後に不具合に直面したときには、外部コンサルなどの力も借りつつ、改善していくことをおすすめします。りそなデジタルハブでも、有料コンサルティングサービスを提供しています。
最後に強調しておきたいのは、DXの不具合を担当者のせいにしてはいけないという点です。前述したように、導入初期にさまざまな不具合に直面するのは当然。さらに、事業の飛躍のための基盤ですから、これは経営者マターなのです。ここで担当者に責任を押し付けるようでは、DXはうまくいきようがありません。厳しい局面だからこそ、経営陣が積極的に関与し、「どうすれば成功に導けるか?」という視点で、粘り強く改善していく必要があります。
その意味では、DXは経営者の覚悟が問われる改革だと言えます。道のりは決して平坦ではありませんが、この不遇の時期をしっかり乗り越えていけば、DXはいずれ必ず成功するでしょう。その時には、業務効率化はもちろん、会社のさらなる飛躍にも寄与する、力強い相棒となっているはずです。
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