企業の成長のためには販路拡大が欠かせません。日本の人口は減少傾向で国内マーケットは飽和状態ですが、海外に広く目を向ければまだまだ可能性があります。しかし新しい販売先、とりわけ海外企業との取引開始にはリスクがつきものです。輸出にはどのようなリスクがあり、どのように回避すればいいかを理解し、確実な事業拡大につなげましょう。
取引開始にあたり知っておくべきこと
国内外問わず、実情が分からない取引先とは会社は取引を開始できません。まず相手の事業内容はもちろん、支払い能力が確かなのかも確認しましょう。
そして「債権回収」は大きな課題です。
海外取引においてはそもそも商品の輸送に時間がかかる上、国内での販売とは支払いサイトが違うことが多く、長期間にわたり未回収の売掛金が増える傾向にあります。輸出者としては輸出代金を回収して初めて取引完了となるわけですが、海外取引は国内に比べて未回収リスクも高い傾向にあり、これらのトラブルを見越して貿易保険をかけている企業も多くあります。
海外取引における主な輸出債権回収リスク
特に海外への輸出取引においては以下のリスクに注意が必要です。
1. 信用リスク
輸入者自身が要因となって輸出代金回収不能となるリスクです。
取引先やその取引銀行の信用調査等を通し、まずは正常な取引ができる経済状況にあるかを確認しましょう。
2. カントリーリスク
輸入国の政治・経済状況のほか、急な政策変更や自然災害などにより輸出代金回収不能となる、または不利益を被るリスクです。
政治的な不安定さや経済制裁などにより、特定の国や地域において大きく変動する可能性があります。企業は取引先国の政治・経済状況を常にモニタリングし、リスク管理を強化する必要があります。
ご参考:株式会社日本貿易保険(NEXI)「カントリーリスクマップ」
輸出債権回収リスクへの対処方法
回収リスクを回避する具体的な方法をご紹介します。
取引先に対応してもらうことと、自社で備えることの2種類がありますが、いずれにもメリット・デメリットがあります。
取引先(輸入サイド)に対応を求める場合
①前受金(Cash in Advance)をもらい受ける
支払いの一部もしくは全額の前払いを求めることで代金回収リスクを軽減できます。一方で、輸入者は貨物の受領前に代金を支払うリスクとコストがかかるため、その分値下げを要求される可能性もあります。
②金融機関の貿易信用状(Letter of Credit, L/C)の発行
①の前受金による決済方法が難しく、輸入者の信用状況に不安が残る場合は、信用状取引が一般的です。信用状発行銀行が輸入者の支払いを確約するため、代金回収リスクを軽減できます。ただし、信用状発行には手数料や手続きの煩雑さがあり、輸入者・輸出者ともにコスト・手間が増加します。また、信用状発行銀行自体の信用状態や銀行所在国のカントリーリスクにも留意が必要です。
自社(輸出サイド)で備える場合
①輸出保証への加入
海外の取引先に対する売掛債権の支払いを保証する制度です。売掛債権に保証をつけることで、取引先の倒産や支払いの遅延による、代金回収リスクを軽減できます。保証の付保には一定の審査が必要であり、保証料のコストがかかります。
②貿易取引にかかわる保険の付保
契約から代金回収までの信用リスクやカントリーリスクをカバーできます。民間の保険会社のほか、株式会社日本貿易保険(NEXI)にて「貿易保険」の利用が可能です。輸出取引をはじめ、仲介貿易、役務契約(サービス料や手数料など)が対象となる保険もあります。
③輸出ファクタリング
送金ベースでの決済や、信用状なしの輸出手形決済の場合、輸出債権をファクタリング会社に譲渡し、ファクタリング会社の保証に基づき取引銀行が支払いを保証する仕組みです。輸出者は代金回収リスクを軽減できますが、カントリーリスクは保証されないことや手数料がかかることに留意が必要です。
これらの対策を組み合わせることで、輸出債権の回収リスクを効果的に管理できます。具体的な方法は企業ごとに異なりますので、よくよく検討して最適な方法を選択することが重要です。
海外取引によくある事例
ここで、りそなグループがよくご相談を受ける事例をご紹介します。
A社は初めて海外輸出を開始することになりました。
取引先からは「月末締め翌月末払い」の支払い条件を提示され、国内の回収条件と同じであるため承諾しようと思っているとのことです。
ここまでの内容から対策を考えてみましょう。
取引先の信用情報が確実なものでない限り、海外取引において後払いは避けるべきだとお分かりいただけるかと思います。まずは全額前払い、あるいはL/Cの発行を取引先に求めます。その上で自社でも輸出保証の付保や貿易取引にかかわる保険の加入を行い、リスクヘッジの検討を行うことが重要です。
その他の決済方法については、JETRO(日本貿易振興機構)のウェブサイトに詳しく掲載されていますので、参考にしてください。
ご参考:JETRO(日本貿易振興機構)「輸出取引における決済方式の変更を依頼された際の留意点:日本」
このように海外への販路拡大には、さまざまなリスクを考慮しなければなりません。政治、経済、金融、法律など多面的な知見が必要になるため、販路拡大を検討し始める時点で専門家に相談することをおすすめします。
りそなグループでもご相談を承っておりますので、ぜひお問い合わせください。