次々と誕生する、キャッシュレスの決済手段。消費者目線ではうれしいものですが、店舗側としては検討すべきことが増えるのも現実です。悩ましいものの1つが、中小店舗にとって負担感があるとされる手数料。華々しい導入キャンペーンが終了し、手数料の負担が気になりだした……。そんな経営者の方もいるのではないでしょうか。手数料動向を見て、自社で導入しているキャッシュレス決済を見直すきっかけにしませんか。
経済産業省の「キャッシュレス将来像の検討会(概要版)」(※1)には、実態調査の結果として「平均決済単価の低い加盟店へのキャッシュレス導入比率が相対的に低い」「手数料は実態感覚として『1日分の売上高』と捉えられ、負担に感じる店舗も存在する」と記述されています。中小店舗の負担感や手数料率の低減の重要性を、国としても認識しているようです。
参入相次ぎ競争激化、業界団体もコスト削減へ
多彩な手段があるキャッシュレスの中でも勢いがあるのがQRコード決済。キャッシュレス推進協議会がまとめた「コード決済利用動向調査」(※2)によると、2021年の店舗での利用金額は7兆3,487億円と、前年比7割増。大規模なポイント還元キャンペーンや新しいプレイヤーの参入が続き、競争が激しくなっています。
そのQRコード決済最大手で、大規模なポイント還元キャンペーンで話題になったのが PayPayです。2018年10月の参入と後発ですが、「キャンペーン期間の手数料ゼロ」を打ち出して加盟店を急拡大させました。
一方、クレジットカード業界でも新たな動きが見られます。日本クレジットカード協会は、ペーパーレス化と合わせてプリンターレス端末を推進すると、ガイドラインで位置付けました。端末の低廉化や、ランニングコストの低減を目指しています。
キャッシュレス比率の目標達成へ、国も競争を促す
キャッシュレス決済をいっそう普及させるため、経済産業省などは競争環境整備に向けた取り組みを加速させています。
透明性向上、手数料引き下げが手段の1つに
国内の2022年時点でのキャッシュレス決済比率は36.0%。順調に伸びていますが、政府の「成長戦略フォローアップ」では2025年6月までに、40%程度とする目標を掲げています。そのためのアクションの1つとして「加盟店市場での透明性向上・ 競争活発化、加盟店手数料の引き下げ」が例示されています。
国際ブランドがインターチェンジフィーを公開
取り組みの一例としては、経産省や公正取引委員会は、クレジットカード決済があった際、加盟店を管理する会社からカード発行会社に支払われる業者間の手数料「インターチェンジフィー(IRF)」に注目。競争を促すため公開が望ましいという見解を示し、Visa、MastercardはIRFの標準料率を明らかにしました。
このように、手数料率を見直す動きが官民で始まっています。導入当初の高い料率を継続すると、実質的に余分なコスト負担をしている可能性もあります。また見直しによって、対応できる決済手段が増えたり、レジ周りの事務を効率化できるかもしれません。
「手数料は必要経費なので仕方ない」と割り切っている経営者も、これを機に見直してみてはいかがでしょうか?
(※1)経済産業省 商務・サービスグループ キャッシュレス推進室 「キャッシュレス将来像の検討会 とりまとめ (概要版)」 2023年3月
(※2)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「コード決済利用動向調査 2022年4月18日公表」
キャッシュレス決済及び法人決済ツールについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。