江戸の昔から連綿と紡がれてきた日本の商習慣というものがありますが、もちろん諸外国にも商習慣があり、両者の文化が違うのは当然のこと。
その商習慣、つまり商売においての基本システムに違いがある影響は大きく、海外企業との取引で失敗することの「あるある」ができてしまうほどです。
ならば、日本の商習慣を捨てて諸外国のシステムに合わせるのが正解……ということではないのが困り物。
では、自社のビジネスを加速させるためには日本の商習慣からいかにして脱却するのが良いのでしょうか。今回はその内から「日本のハンコ文化」についてお送りしていきます。
「書類1枚」が積み重なり、大きなロスを生み出すハンコ文化
メリット:書類の正当性・信頼性向上
デメリット:時間的損失
損失額:数千円〜数千億円以上
関係各所の押印をもらわないと効力が発揮されない申請書類。これは、申請〜決裁までのワークフローを書類上で可視化できるようにするため開発され、慣習化された書類形式でした。申請者が誰かということと、許可を出した責任の所在を明確にできるというわけですね。
しかし、書類作成から効果を発揮するまでに人から人へ渡る時間はまるまる損失時間ということになります。会社印を捺すためだけの出社が発生することもやはり損失となります。さらには海外企業との取引の際に意思決定が遅いと見なされ、プロジェクトが立ち消えとなってしまう可能性さえあります。
欧州の多くと米国式の商習慣では、権限を持った責任者のサインが日本での決裁権限者の押印と同等の効果を持っています。プロセス自体がワンアクションであるため、意思決定から効力発揮までに損失する時間はわずかと言えるでしょう。
ただし、両者とも偽造などの行為に対するセキュリティは高いわけではなく、また書類自体を紛失してしまう可能性も排除できるものではありません。
ビジネスのスピードを上げるために変革が必要
日本式意思決定の遅さの原因としては、情報伝達自体の遅さという要素が大きなウェイトを占めているようです。
「正当な理由がない行政手続きについては、『ハンコをやめろ』ということを押し通そうと思う」「ハンコがなくなると、画面の中で完結したものをそのままメールで送ることができるようになるし、行政側も、自動で集計ができるとか、利便性を高めていくことができる」という、時の規制改革担当大臣、河野太郎氏の発言が、霞ヶ関に旋風を巻き起こしたことは記憶に新しいと思います。
手作業・押印という手続きのスピード感自体が問題と見なされたわけですね。
「従来型」からの脱却、実は仕事を楽にするものでもある
こういったデジタル化の取り組みは、社内での予定と情報を共有するシステムの使用など、リアルタイムな情報のやり取りを活発にします。遠く離れた現場から重要案件の是非を最高責任者に仰ぐことができるようになるでしょう。事業計画が決裁されるスピードは、物理的な書類のやり取りと比べて大幅に短縮されるはずです。
契約書類に関しても、電子契約書などの信用性が確保された契約サービスを用いることで、契約の信用は確保されます。これはサインにも同様に適用できるものであり、書類紛失の心配などもなく、安全性も高いものとなります。
こうした電子署名の使用について、たとえば米国におけるe-Sign法などは2000年に制定されており、現在では電子署名が広く浸透しています(ただし州法等により使用できない地域も一部存在)。電子契約、電子商取引などの整備も過去に行われており、既に「紙+サイン」だったものが「電子サイン」へとシフトしています。日本企業においても導入は急速に進みつつあるので、対応は急務と言えるでしょう。
これらを可能とするのがいわゆるDXですが、導入のハードルが高いイメージを持ってしまうかもしれません。そんなDX導入も「使うのが楽かつ処理が速い、便利なツールの導入」と言い換えれば、導入を前向きに検討するのではないでしょうか。紙書類への押印の代替もさることながら、デジタルでの事務処理や商取引が、これから先のスタンダードな商習慣となっていくことは容易に想像ができると思います。導入していない企業は契約の手段すら持っていないということになりかねません。
また、物理的な書類の作成・処分にかかる環境負荷を軽減することにもつながります。
DXは自社の取引を有利なものとし、なおかつSDGsまで達成できる手段。新しいものだからと敬遠せず、積極的に取り入れていきたいものですね。
DXでの課題解決及び法人決済ツールについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。