消費マーケットとして注目されるベトナム

米中対立などの影響で拠点を中国から分散させる動きが加速する中、ベトナムに注目が集まっています。しかも、単に製造拠点を置くにとどまらず、近年は消費マーケットとしても非常に注目を集めています。ベトナムビジネスに特化した経営コンサルティングファームであるONE-VALUE株式会社のフィ ホア社長にお話を伺いました。


フィ ホア(ONE-VALUE株式会社 代表取締役)
2008年、日本政府(MEXT)の国費留学生 として来日。大阪大学大学院、経済学研究科経営学系を修了後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に入社。ベトナム事業拡大のリーダーに就任し、多くの日本企業のベトナム進出を成功に導く。10年以上にわたる経営コンサルティング実務経験を有し、多くの日系大手企業に対して、ベトナムに関する経営コンサルティング業務を提供してきた。

増えるベトナム企業のM&A

ここ数年、米中貿易摩擦、地政学的リスク、パンデミック後の供給網見直しなどを受け、グローバル企業のサプライチェーン戦略が大きく変化しています。特に製造業では、「中国+1(チャイナプラスワン、中国周辺の地域に生産拠点を分散すること)」「チャイナリスク回避」を掲げ、代替地への移転が進んでいる現状があります。

このような流れの中で、ASEAN諸国の中でも突出して注目されているのがベトナムです。経済成長を続け、インフラも整備されつつあることから、韓国、アメリカ、日本をはじめとする多国籍企業が、製造拠点や物流基地としてベトナムを選ぶ動きが加速しているのです。

ワンバリュー社は、ベトナムに進出しようというクライアントのために、市場調査やコンサルティング、M&A仲介など、さまざまなサポート事業を行なっています。

特にコロナ以降の傾向でいうと、M&Aが非常に増えています。ベトナム進出に関するご相談のうち、約半数がM&Aに関連するものです。業種としてはエネルギー関連、不動産事業などが多いのですが、最近はベトナムを消費マーケットととらえ、営業を強化しようという日本企業が目立って増えているという傾向があります。

教育、医療など多様化する進出企業

一昔前は、安価な労働力を求める製造業の進出がほとんどでしたし、今でもベトナムへの進出というと、そういうイメージを持たれている方が多いかもしれません。でも、状況はガラッと変わった、ということは注目していただきたいと思います。つまり経済成長によって、国内の中間層が消費力をつけてきているのです。

ベトナム市場をターゲットとした進出で、最近増えているのは、例えば教育関係、医療関係の企業があります。これもマーケットが成熟してきたことの現れです。ベトナムは病院の数と学校の数がとても不足しているという現状があり、そこで日本の病院が進出したり、訪問介護やヘルスケアサービスの進出も少なくありません。

日本の人材ビジネス企業がM&Aによって進出していますし、映像やエンターテインメント企業も進出しています。

日本の飲食業の人気も、とても高いです。品質管理のノウハウがある食品加工ですとか、外食産業も有望だと思っています。

私たちがよくお客様にアドバイスするのは、「ベトナムを第2の日本だと思ってください」ということです。人口は、日本が1億2000万人ぐらいですが、ベトナムも1億人を超えています。人口は増え続けていますから、ほとんど日本と変わらなくなるでしょう。

ベトナムの人口推移

今のところ、ベトナムでは医療と教育はサービスが行き届いていません。このような現状を踏まえると、こうした業種では、日本からまだまだこれから進出の余地があるということになります。

中国からのシフト

トランプ関税の影響などにより、中国から製造拠点をベトナムに移転する動きもあります。このような動きをベトナム政府も歓迎しており、さまざまな優遇措置を用意しています。

ベトナムは中国と隣接していますから、物流面でも陸路、海路ともメリットがあります。また、東南アジアの中心にありますので、ベトナムからインド、インドネシア、タイ、フィリピン、シンガポールと、さまざまな国との行き来が容易です。つまり、サプライチェーンにおいて、好条件であるといえるでしょう。

こうした中国からの製造拠点シフトの動きに加えて、ベトナム市場そのものの魅力が増しているため、ベトナムへ進出する企業は増え続けているのです。

海外市場への進出について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年9月26日時点の内容となります。
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