ベトナム経済は2035年までの10年は経済成長が続く

ベトナムへの進出を考えている企業が知っておきたいのが、ベトナムの行政再編の動きです。外国からの投資を呼び込みたいベトナム政府の改革スピードは非常に速く、今後、ますます投資しやすい国になっていくことが予想されます。ベトナムビジネスに特化した経営コンサルティングファームであるONE-VALUE株式会社のフィ ホア社長にお話を伺いました。


フィ ホア(ONE-VALUE株式会社 代表取締役)
2008年、日本政府(MEXT)の国費留学生 として来日。大阪大学大学院、経済学研究科経営学系を修了後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社に入社。ベトナム事業拡大のリーダーに就任し、多くの日本企業のベトナム進出を成功に導く。10年以上にわたる経営コンサルティング実務経験を有し、多くの日系大手企業に対して、ベトナムに関する経営コンサルティング業務を提供してきた。

史上最大規模の行政再編

グローバル企業のサプライチェーン戦略の変化を受けて、進出先として注目を集めるベトナムですが、そうした動きを加速するような条件整備が始まっています。その一つが史上最大規模の行政再編。2025年7月、ベトナムでは63の省・市を34に統合し、行政の二層構造(省と社・坊)への再編が進められたのです。

省というのは日本の「県」に相当するとお考えください。社や坊は日本でいうところの「町・村」です。日本の県・市・町の「市」がなくなった、ということになります。これによって、従来の煩雑だった許認可制度が簡素化されることになりました。企業にとっても、広域での開発プロジェクトや投資判断がしやすくなるメリットは非常に大きいと思います。

例えばベトナム最大の都市で経済の中心地であるホーチミン市では、それまで273もあった村レベルの行政区が、102行政区へと大幅に減少しました。また、同時に隣接するビンズオン省とバリア・ブンタウ省の2省を合併しています。やや乱暴な例えですが東京都と千葉県、埼玉県が一体化するようなイメージです。

行政再編でビジネススピードが加速する

これによって外国企業の進出について、以前は省ごとに個別の申請が必要でしたが、統合されたことで大幅に効率化されることになります。物流・住宅・商業などの開発計画は、格段にスムーズに進むことになるでしょう。もちろん、行政の境界や登記住所変更など、短期的な混乱もあると思います。しかし、それは時間が解決するでしょう。

また、国レベルでの再編も断行され、官庁も統廃合を進めました。一例を挙げると、天然資源環境省と農業農村開発省が統合されました。また、計画投資省は財政省と合体しました。これによってビジネス進出についても大きなメリットが期待できます。

例えば、これまでの投資計画省が日本企業の投資を誘致したいとします。そこで10年免税します、と約束しても、財政省がそれを認めない、ということがありました。省庁同士の横の連携ができていなかったのです。その両省が統合されたので、日本を含めて、海外からの投資はさらに増えることが期待されています。

こうした行政再編の背景には、ベトナム政府の強い成長意志があります。外国からの投資を促進するため、体制づくりには積極的です。今回の行政改革だけでなく、中長期的にはインフラ整備、人的資源の強化、スマート行政の導入が進み、行政の透明性と対応スピードが格段に高まると見込まれています。

ベトナムへの新規進出のチャンスは「この10年」

ベトナム経済は中長期的に見ると、2035年までの10年は経済成長が続くと予想されています。消費マーケットも引き続き拡大しますし、前述した行政改革によるライセンス取得をはじめとするさまざまな効率化も後押しするでしょう。それらにともない、日本企業の進出件数は、さらに増え続けると思います。

ベトナムの名目GDPの予想

もともと環境面でも駐在しやすい国と考えられていますし、経済成長にともなって都市部での利便性は高まります。それらを考え合わせると、進出意欲は衰えないと思います。その中でも、最もビジネスとして有効なのがM&Aだと考えています。

2035年以降については、経済成長率は低下し、新規のM&A案件も減っていくでしょう。つまり、ベトナム進出を考える日本企業にとっては、この10年がチャンスということです。

一方では、この間に多くのベトナム企業が成長を果たし、日本企業を買収するかたちのM&Aが増えると見ています。すでに現時点でも、弊社は複数のベトナムの大手企業から日本企業の買収の依頼を受けています。もちろん、案件数はまだ少ないですが、こうした面でも両国の関わりは深まっていくものと考えています。

海外市場への進出について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2025年9月26日時点の内容となります。
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