「どうすれば、部下に自分の考えを理解してもらえるのだろうか?」
部下とのコミュニケーションについて悩みを抱える声は、今も昔も変わらず多く、普遍的なものとして存在し続けています。特に新任管理職の方や組織を引き継いだ場合、前任者と比較をされ、コミュニケーションがうまくいかないことも多いのではないでしょうか。
そんな悩みの原因と、解決するためのヒントをお届けいたします。
なぜ、理解をしてくれないのか
人間は話を聞く相手を「無意識に」選ぶ
「よく知っていて印象が良い人」と「よく知らない人」であれば、あなたはどちらの話をよく聞き、理解しようと思うでしょうか。おそらく大半の人が前者と答えることでしょう。
たとえ前者が間違ったことを言っていて、後者が正しいことを言っていたとしても、です。人間は相手の発言の内容よりも、誰が言ったことなのかで判断する傾向があります。
理解のカギは「信頼関係」
話を聞いてくれない、考えを理解してもらえないという問題の原因は、この無意識の判断によるものが大きいといえるでしょう。発言者に信頼がなければ、その発言もまた信頼性のない情報として切り捨てられてしまいがちです。
話を聞いてもらい、理解してもらうには、相手と信頼関係があることが前提になりますね。
部下と信頼関係を築くには
「遠い存在」であることをやめる
部下も人間である以上は無意識の判断が働くので、普段からコミュニケーションが希薄な相手には信頼を置けず、話を聞いて理解しようとは思わないでしょう。部下に「近い存在」になることが必要です。
「話を聞いてくれる」ことが距離を縮める
信頼を醸成する取り組みの一例として、「社員の誰もが社長に直接意見を伝えることができる目安箱」の設置があります。この目安箱は社長の持っている鍵でしか開けることができず、社員の生の声を直接届けられる仕組みです。現代だと、社長へ意見を送信する専用のメールアドレスを全社に公開する、といった感じになりますね。
目安箱の存在は社内に広く通知され、実際に投書の内容をもとに対処したこともあり、結果として「あの社長は話を聞いてくれる社長だ」という認識につながっていきました。
こうして「自分の意見を聞いてくれる相手なら、自分も相手の話に耳を傾けよう」という意識が社員の中に生まれ、意思疎通もスムーズになっていったのです。
孫正義氏がX(旧Twitter)ユーザーから寄せられたアイデアや意見に対して、「やりましょう」と宣言することを知っている方も多いでしょう。目安箱と近いものがありますね。
これも「この人は話を聞いてくれる」という印象が、距離を縮めていく一例です。
「褒める機会」を多く持つ
仕事で成果を出した社員には素直に褒める言葉をかけることも有効です。「そうは言っても、褒めるべき成果が……」というのであれば、普段の仕事ぶりに注目するという手段もあります。業務を滞りなく遂行できていることは「やって当然のこと」と見過ごしてしまいがちですが、「称賛に値する」と考えることはできないでしょうか。
日頃の業務で褒められるからこそ、失敗への叱責も素直に聞いて反省につなげられるもの。日頃から意識していきたいですね。
コミュニケーションの質はパフォーマンスに直結する
職場でのコミュニケーションは、作業者の意識と仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えます。
エン・ジャパンが行った、職場でのコミュニケーションに関する調査(※1)では、「コミュニケーションが取れている」と回答したユーザーは「働きやすさ」「チームワーク」「仕事の効率」いずれもポジティブなコメントをしており、逆に「コミュニケーションが取れていない」回答者からは、その結果としてストレスを感じている旨の回答が最も多くを占めています。
円滑なコミュニケーションが仕事のパフォーマンス向上につながる傾向が、この結果から見て取れます。
信頼関係が醸成されていけば、部下である社員が話を聞いてくれるようになり、あなたの考えを理解してくれます。さらに部下が持っている思いや考えを共有してくれるようになっていきます。考えを共有できて、仕事の目標を同じくすることができれば、チームとしての結束も高まり、働きやすい環境が形成されているといえますね。
結果として社員の働きがいに、ひいては事業自体の持続性につながっていきます。
まずは「話を聞くこと」「褒めること」から始めてみてはいかがでしょうか。