CRE(企業不動産)戦略の重要性を認識し、導入する企業が増えています。漫然と所有し続けてきた不動産を適切に見直すことで、会社のさらなる成長につなげることも可能なのです。多くの企業に最適なCRE戦略の提案をしてきた実績を持つ、中央日土地ソリューションズのアドバイザリー部でエグゼクティブアドバイザーを務める石川聡さんにお話を伺いました。
石川 聡
1991年東京都立大学理学部卒。同年日本土地建物入社。鑑定評価業務、CREコンサルティング業務に従事。2021年4月から現職。
鑑定評価業務においては工場財団等の施設評価、産業再生機構案件等の企業再生案件を担当。現在は企業再生関連評価の経験を生かし、企業向けCRE戦略構築コンサルティングを担当、CRE戦略関連の講演、執筆多数。グロービス経営大学院修了(MBA)、不動産鑑定士、不動産カウンセラー、日本証券アナリスト協会検定会員、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、中小企業診断士
この30年でCREの考え方は大きく変わった
土地価格が右肩上がりに上昇したバブル期は、お金を借りて不動産を所有すれば、担保価値が上がって、より大きな資金を借り入れることもできる、今では考えられないような時代でした。しかし、バブル崩壊から30年ほどが経った今、CREの考え方は様変わりしています。
本業の事業規模と不動産のバランスが重要で、企業のバランスシートの中で不動産が占める割合が過大だと、本業との整合性がとれず、良い評価を得にくい時代になっています。中小企業はもちろん、大手や上場企業も同じ問題に直面しています。最近も、ある大手上場企業が、「不動産事業が全社収益に占める割合が高い」ことをアクティビスト(いわゆる「物言う株主」)から問題視され、不動産売却などを検討していると報じられています。
上場企業ではないから自社には関係ない、と放置していてはいけません。非上場であっても、保有する不動産を見直し、最適なあるべき姿を目指していくことは、重要な経営課題なのです。
安易な賃貸施設づくりは要注意
不動産を活用する方法としてよく見られるのは、本社ビルと住宅やオフィスなどの賃貸資産をセットで作って運用しよう、というケースです。たとえば、本社ビルを建て替える際に、下層階を事務所(自社の本社として利用)、上層階を賃貸マンションとして計画する企業があります。
もちろん、これが奏功することもあるのですが、事務所用と住宅用の入口を2つ設置することで有効率が大きく減少してしまうなど、必ずしも効率的とは言えない安易な事例も少なくありません。
賃貸施設を持つということは、不動産事業を営むということです。建物を作って貸して終わり、という単純なビジネスではないため、人的リソースもしっかり割いて取り組む必要があります。自社でそれができない場合は、不動産会社に管理などを全面的に委託する方法もありますが、相応の委託費もかかります。こうしたことも計算に入れた上で考える必要があるのです。
古い自社ビルを所有していると、いろいろな不動産会社から活用に向けた提案を受ける可能性もあります。多くの場合、不動産会社はそれぞれ自社の得意なソリューションメニューがあり、それを提案するわけで、いわば既製品です。この既製品メニューが自社の状況にピッタリ合っていればいいのですが、自社のニーズに合わない部分を残したまま無理して導入することはおすすめできません。
不動産を見直すことで見えてくるもの
長年見直しがされていないオフィスでは、不要になったスペースが必ずあるものです。無駄なスペースをあぶり出す最適化の過程で、「各事業の人員配置は本当にこれで良いのか?」という、より根源的な問いが生まれてくるかもしれません。
CREを起点に経営戦略や事業戦略をじっくり考えていくと、「やっぱり息子に継いでもらいたい」とか「実はもう会社をたたみたいんです」といった、社長の本音が出てくることも多々あります。自社をどのように舵取りしていきたいのか、経営全体をしっかり見つめて、それに合わせて不動産の活用方法や管理・運営体制を整えていくことが、真のCRE戦略です。
不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。