周辺物件との差別化を図ることで入居者を募りたいと考える賃貸住宅オーナーは多いはずです。しかし、何を導入すれば周辺物件との差別化が図れるのでしょうか? 昨今の賃貸住宅ニーズのトレンドや、人気の設備などについて、賃貸マンション管理を手掛ける株式会社長谷工ライブネットにお話を聞きました。
分譲マンション価格高騰が賃貸住宅にも影響している
この数年、インフレに伴って不動産価格が上昇しています。特に東京や大阪などの大都市圏で価格上昇の傾向が強く、広いマンションが良いとなると、高収入であっても分譲マンションを購入するのは難しい状況になっています。こうした層が、分譲マンションではなく賃貸マンションに目を向けるようになってきています。
上の図にあるように、東京23区のファミリー向け賃貸マンションでは、契約者のおよそ半数が年収1000万円以上となっています。大阪でも同様に、2024年に分譲マンション価格がかなり上昇しているため、2025年頃からは同じような傾向が出てくると考えられます。
一方、これまで通り、地方から大都市圏へ主に若い世代が流入してくる流れは続いているため、大都市圏ではシングル向け物件の需要も引き続き旺盛です。
また、コロナ禍を経てリモートワークが定着しました。それに伴い、在宅勤務に必要な設備も求められるようになりました。例えば、防音マンションが人気です。防音マンションは事例が少ない理由もありますが、相場より2割ほど高い賃料でも入居が見込めるほどです。在宅勤務中は一日中過ごすことになるため、隣室の音が聞こえてこない快適性を求める方が増えていることが分かります。
今やWi-Fiは必須、差別化を図るには?
今やWi-Fiや光回線といったインターネット関係の設備があるのは当たり前です。先に述べたように、コロナ禍を経てリモートワークが定着したことにより、インターネット設備が導入されていることはもちろんのこと、今まで以上に「通信速度」が重視されるようになりました。入居希望者から、「このブランドの光回線は遅いという口コミがあるし……」という声もよく上がるようになりました。「人気のある、スピードの速いブランド」を調べて、質にもこだわったうえで導入することをお勧めします。
宅配ボックスも、すっかり「設置されていて当たり前」の設備になりました。各住居前に個別に宅配ボックスを設置したり、「置き配」に対応できたりすると「当たり前」以上の反応を得られ、入居満足度の向上につながります。
ESGの観点では、電動キックボード「LUUP」のシェアリングサービスや、電気自動車の充電設備を導入するなど、シェアや環境に配慮した賃貸マンションも増えてきました。こちらは先ほどの防音マンションのように「賃料2割アップ」ほどの効果はありませんが、若い世代からは人気です。
今後は省エネ性能の高い住宅にもニーズが出てくると予想されます。2025年4月からは法改正によって、すべての新築住宅に高い省エネ性能が求められるようになります。今のところ、賃貸住宅では断熱などの省エネ性能にはさほど入居者の関心は高まっていません。しかし、分譲マンションなどの新築住宅で省エネ性能が必須となれば、その流れはいずれ賃貸住宅にも向かうと考えられます。
住宅の中で、熱の出入りが一番多いのは開口部と言われています。窓をペアガラスにしたり、サッシを断熱性能の高いものに交換したりするだけで、ずいぶん省エネになります。
築年数の古い物件の人気を高める方法
築年数の古い賃貸住宅でしたら、前述した最新設備を導入する前に、外廻りを修繕して見栄えを美しくしたり、専有部分をリフォームしたりすることで、賃料アップにつなげることができます。例えば、築20年を超える物件には和室がある場合も多いかと思いますが、近年はフローリングが好まれるため、すべての部屋をフローリングにリフォームするのも、古い物件の人気を高めるためには有効な手段の1つです。また、トイレと洗面所は可能であれば、別々に分けた方が人気は高まる傾向にあります。
間取りは部屋数重視の傾向があるため、間仕切りなどで細かく分けられるようにすると良いでしょう。
ただし、リフォームには相応のコストがかかるため、採算を曖昧にしたまま工事をしてはいけません。まずは競合物件の間取りや賃料相場などをしっかり調査し、「このくらいのコストをかけて工事をすることで、このくらいの賃料アップが見込める」という試算をしたうえで決断するようにしましょう。
不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。