不動産・建設業界のDX動向

不動産・建設業界は現場第一、手作業、対面というイメージがひときわ強い業界です。そのため、各業務にITを導入し効率化を図るDX(デジタル・トランスフォーメーション)も普及しにくい状況がありましたが、コロナ禍を経て拡大しつつあります。詳しく見てみましょう。

不動産・建設業界のDX概況

DXとは、情報を電子化し、使い勝手を良くすることにより社会やビジネスをより良い方向へ変革することです。これまでできなかったサービスが気軽に使えるようになるなど、さまざまなビジネスチャンスが生まれています。
DXについてはこちらの記事も参考にしてください。

総務省の調査(※1)では、大企業では約60%がDXを実施あるいは実施検討中であるのに対し、中小企業では30%強にとどまります。実施済みの企業はこれより少なく、さらに業界別に実施状況を見ると、建設業では約20%、不動産・物品賃貸業でも24%程度しか進んでいません。

デジタル・トランスフォーメーションの取組状況

前述のとおり、不動産も建設業界もアナログでの対応が根付いています。物理的に現場での業務が中心な上、サプライチェーンが複雑なため汎用的なシステムでは対応しきれません。こうした商習慣から、そもそもDX推進に関するノウハウが不足しており、DXによる効果を獲得しようという意識も他業界と比較してあまり強くなかったようです。そのため取り組みが進みにくい状況にあります。

しかし建設業界では、2024年4月から時間外労働の上限規制が設けられました。これにより人手不足に拍車がかかり、業務の円滑な進行を妨げることが危惧されています。同じく不動産業界でも効率的な働き方が求められています。
これらを踏まえ不動産・建設業界ともに、事業の発展と効率的な働き方への変革を目指し、DXに取り組んでいく向きが強まっているのです。

各業界のDX事例

それぞれの業界で、どのようなDXが進んでいるでしょうか。

建設業界

建設業界では、現場での実作業をサポートする業務でDXによる効果が期待できます。
とりわけ建設業界は行政への許可申請等の手続きが多く、まずはこのデジタル化を国を挙げて推進。事業者は行政機関の営業時間外でも申請が可能で、出向く手間も省けます。
また、現場作業においては、ドローンや360度カメラを使うことで人間が入り込みにくい場所の目視確認や記録、データの3D化によって完成形のイメージ共有を図るといった事例があります。(※2)
ICTを活用することで、人材不足に対応しつつも働く人の安全を確保し、さらに精度の高い業務成果を目指しているのです。

建設2024年問題についてはこちらのインタビュー記事もご覧ください。

不動産業界

入居者募集や賃貸契約、不動産の管理等、不動産オーナーに代わって、不動産経営を代行する「プロパティマネジメント(PM)」。この業務では、物件情報や顧客情報、更新通知作業などを自動化する動きがあり、コミュニケーションミスを防ぎ効率化を図っています。
また不動産仲介の現場では、オンライン会議ツールなどを使って遠方の方も内見できる仕組みが普及してきました。宅建業法の改正に伴い、2022年5月から不動産契約の電子化が全面的に解禁になったことで、契約関連書類の作成・保管や、各種ワークフローをシステム化することでミスをなくす電子契約システムの導入も進んでいます。
これらのセキュリティ強化にはブロックチェーン技術を活用するなどし、秘密性の高い不動産業務の電子化を可能にしています。


このように、DXが難しいと思われがちだった不動産・建設業界でも変化が進んでいます。時代に合わせたビジネスモデルの改革は顧客満足度の向上に繋がり、経営にも好影響があるものです。専門家のアドバイスも受けつつ、できることから始めましょう。

総務省の「情報通信白書 令和3年版」には、多様な業界のDX普及状況や実施事例も掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

(※1)総務省 「情報通信白書 令和3年版」
(※2)一般社団法人 日本建設業連合会「建設DX事例集」

不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年6月14日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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