3か月に一度、マーケット情報や不動産に関する市況、最新のトピックスなどをお届けします。本記事は2024年秋に発行された、首都圏向けの内容となります。
【Market REVIEW】トランプ前大統領の再選で日銀の早期利上げ観測強まる
- 米国大統領・議会選挙でトランプ前大統領の再選と上院で共和党が多数派を奪回することが確実となりました。この結果は、2つの経路で日銀の追加利上げのタイミングを早める可能性があります。一つは、米国景気に対する日銀の判断引き上げです。10月日銀展望レポートの政策指針では、「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げていく」とした上で、“米国をはじめ海外経済の動向や金融資本市場の動向を注視する必要がある”と謳われました。
選挙後に米国主要株価指数が揃って最高値を更新するなど、米景気の軟着陸期待が高まっている点は、日銀内でも前向きに評価されるとみられます。次回12月の日銀金融政策決定会合の前日にFOMCから新たな経済見通しが発表されます。前回9月見通しでは2024年〜27年まで4年連続で米国実質GDPは2%成長の予想が示されました。12月FOMCでこの予想が据え置き、或いは、上方修正されれば、日銀の上方修正判断にお墨付きを与えることになります。もう一つの経路は、円安を起点とする物価上振れリスクの再燃です。トランプ次期政権で成長重視・拡張的な財政政策が採られるとの見通しからドル円は一時3か月半ぶりに154円台に乗せました。10月会合の「主な意見」では“輸入物価上昇の影響の減衰はそろそろ出尽くし”と円安進行を警戒する意見も見られます。一段の円安は日銀の利上げ判断を早める方向に作用するとみられます。短期金融市場(OIS)は、来年4月30日・5月1日の日銀会合で0.5%への追加利上げが決定されることを織り込んでいます。10月会合直後は、来年9月会合での利上げを織り込んでおり、米国選挙を受けて利上げ見通しがかなり急ピッチで前倒しされています。 - 実際に日銀が利上げを決定する前には、7月末の追加利上げ(→0.25%)時のような混乱を避ける為、市場との対話を通じてマーケットの利上げ織り込みをさらに促すと予想されます。
(りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 下出 衛)
足元の経済成長率はプラス、物価の伸び率は縮小
- 内閣府によると、2024年第二四半期の国内実質GDP成長率は2.9%(前期比年率換算、季節調整済)とプラスに転じています。項目別では、GDPの半分以上を占める個人消費が5四半期ぶりのプラスとなりました。財の消費は大きく増加しましたが、サービス消費はマイナスとなっており、差がみられます。
- 9月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、前年同月比)は+2.4%と5か月ぶりに伸び率は縮小しました。一方、実質賃金は2か月連続で前年同月比マイナスとなっており、物価と賃金については引き続き注視が必要になります。
物価高もあり小売販売額は増加が継続
- 商業動態統計によると、物価上昇の影響もあり小売販売額は2024年8月では30か月連続で前年同月を上回って推移しています。業種別にみても前年同月比で増加していますが、その幅は縮小傾向にあります。
- 日本百貨店協会によると、2024年9月の百貨店全体の売上高は前年同月比+2.3%と31か月連続で前年を上回っています。国内市場も高付加価値商材の好調を背景として、売上高は2か月連続で前年同月比プラスとなっています。インバウンドも増勢が続いており、売上高・購買客数ともに9月として過去最高となっています。
中古マンション価格は都心部での高騰が顕著に
- 東京カンテイによると、東京都区部の70㎡あたり中古マンションの平均価格は、2024年9月では8,053万円(前年同月比+13.5%)と上昇が継続し、上昇幅も大きく拡大しました。特に都心6区では上昇の勢いが増しており、足元では13,407万円(同+26.4%)と20か月連続での上昇となっています。東京都心部がけん引するかたちとなり、首都圏全体でも5月以降上昇傾向にあります。
- 不動産経済研究所によると、2024年度上半期(4〜9月)の首都圏の新築分譲マンション平均価格は7,953万円と2年連続での上昇となりました。初月契約率は64.3%と2年ぶりに目安となる70%を下回りました。
堅調なオフィス需要から空室率は改善傾向
- 三幸エステートによると、東京都区部の2024年9月の平均空室率は4.41%(前月比▲0.18ポイント)と改善傾向になっています。堅調な需要を背景に空室率は5%以下で推移しており、マーケットは好調です。平均募集賃料も19,260円/坪(同+28円)と上昇トレンドになっています。
- 建築費は引き続き高騰しており、建設物価調査会によると2024年9月の東京都における工事原価(事務所RC造)は暫定値にはなりますが、133.6(2015年基準、前年同月比+8.4ポイント)と天井感が見えない状況にあります。建築コストの上昇により、建替え案件の先延ばしなどもみられています。
【Market TOPICS】2024年都道府県地価調査(東京圏・全国)
- 2024年の都道府県地価調査(7/1時点)によると、東京圏の上昇率は住宅地+3.6%、商業地+7.0%と前年より上昇幅は拡大しました。
- 全国の住宅地の上昇率上位は、移住ニーズが高まっている沖縄県と半導体メーカーが進出している北海道千歳市の地点となりました。商業地でも半導体メーカーの工場が建設されている熊本県の地点や、リゾート地として人気が高い長野県白馬などの地点で高い上昇率となっています。
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