米国の不動産取引で気をつけたいポイントは?

平林 昇

平林 昇

国内外の不動産投資市場で20年近くの経験を有する。前職はダイヤモンド・リアルティ・マネジメント(株)に籍を置き、三菱商事の国内外事業投資先への出向を通じて、不動産投資及び不動産投資運用業務に従事する。直近は米国ロサンゼルスに拠点を置くDiamond Realty Management Americaにてマネージングディレクターとして約5年間にわたり新規エクイティ及びデットファンド組成に取り組む。それ以前はGEキャピタル・リアルエステートにて第三者資金を活用した共同投資プログラム組成業務にも関わった経験を有する。
 2022年7月より現職。インベストメントバンキング部門にて国内外投資家への各種アドバイザリー業務を統括。慶應義塾大学経済学部卒。


言葉の壁はもちろん、商習慣も日本とは大きく違う米国での不動産取引においては、プロセスを慎重に進める必要があります。どういう点に注意すべきか、CBREシニアディレクター、インベストメントバンキング統括の平林昇さんにお話を伺いました。

商習慣は大きく違う

日本の投資家が米国の不動産を購入する場合、やはり商習慣の違いは壁になります。たとえば、米国のスタンダードを把握していなければ、契約書を読み込んでも、そこに書かれている諸条件が有利なものなのか、それとも不利なものなのかを判断するのは難しいはずです。

初歩的なことですが、日本では平米もしくは坪で広さを表現する一方、米国では平方フィートを用います。賃料は日本のオフィスですと月額で表現しますが、米国は平方フィートあたりの年額で表す物件タイプもあります。こうした単位の違いから、パッと広さや賃料をイメージできないといったハンデもあります。

また、米国ではオフィス物件の内装は大家が負担するのが通例です。せっかく破格の値段でオフィス物件を購入しても、空室がたくさんあって、新しいテナントを入れるために内装費用がかさんでしまう、というような失敗は起こり得ます。

有名な都市への投資が良いとは限らない

日本は国土が狭いですから、東京や大阪などの主要都市を見ておけばおおむね事足ります。しかし、米国は国土が広く、ニューヨークだけ見ていても投資は難しい。地域ごとの特徴をよく理解して投資をする必要があります。

日本人に最も馴染みのある米国の都市というと、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスあたりだと思いますが、これらの有名都市は現在、あまり不動産投資には向いていません。特に西海岸のサンフランシスコ、ロサンゼルスはオフィス需要も弱いですし、日本でも報道されているように、被害額950ドル未満の窃盗は軽犯罪扱いになったということで、治安も急速に悪くなっています。

一概には言えませんが、たとえば民主党の強い州は不動産市況が弱く、逆に共和党の強い州は比較的堅調。現在はそんな傾向もあるかもしれません。また、いわゆるサンベルト(アメリカの南東部から南西部を結ぶ地域)は70年代から成長を続けており不動産的にも比較的良好なエリアと言われています。

サンベルト

代表的な都市でいうと、ロサンゼルス(カリフォルニア州)、ダラス(テキサス州)、アトランタ(ジョージア州)、マイアミ(フロリダ州)などがありますが、たとえばナッシュビル(テネシー州)、シャーロット、ローリー(いずれもノースカロライナ州)など、あまり日本人に馴染みのない都市も不動産需要が局地的に盛り上がっているエリアがあります。企業を誘致したり、税制で若い世代を優遇するなどの政策を取っていて、マイナーな都市でも不動産市場が活況というケースもあるのです。

パートナーを上手に選びたい

米国の不動産価格が手頃になっている今、興味はあるけれど、どうしたら良いかわからないという日本の投資家は少なくありません。そうした際によく目にするのは、米国の案件に、日系パートナーと一緒にマイナー出資をするという方法です。米国の不動産事情に詳しく、かつ日本側でのしっかりとしたサポートがあるパートナーと組みながら事業展開を始め、将来的に現地化していくという流れです。

米国の不動産は今年が底値圏であり、不動産取引で最大の失敗である高値掴みのリスクの低い今は投資には非常に良いタイミングですが、米国事情に明るいパートナーを探すことがトラブルを避けて投資する上で重要になります。

不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年7月19日時点の内容となります。
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