新たに企業年金担当者として着任すると、求められる知識が多岐に渡ることに驚くのではないでしょうか。企業が導入している確定給付企業年金(DB)あるいは確定拠出年金(DC)の仕組みを理解した上で、制度内容や予想される給付額について従業員に説明できなければいけません。公的年金や定年後のライフプランニングに対する知識も必要になるでしょう。
企業年金は掛金拠出から給付が行われるまで数十年の期間を要します。長期にわたる仕組みを適切に運営するために担当者として最も心がけるべきことは、企業年金のガバナンス確保です。ガバナンス確保において担当者が常に意識すべきポイントを見てみましょう。
規約型DBのガバナンス
主に大企業が採用している基金型DBは、制度内容や運用について判断を行う「代議員会」などを設置することが義務付けられています。
一方、多くの企業で採用している規約型DBにおいては組織等の設置は求められておらず、多くの会社で総務・人事部門が担当部署となるため、企業年金担当者には制度内容の熟知や資金運用の知識が必要です。
経営層との情報共有、加入者への周知
総幹事会社からの決算報告や各運用機関からの運用報告を受けたら、自社のDBの財政・運用状況を把握することから始まります。前任者などに協力を仰ぎ、不明点は必ず解消しましょう。併せて経営層にも逐次報告し、問題点などを共有することも忘れてはなりません。
一方で、加入者にも財政・運用状況を周知することが求められるため、分かりやすく状況を伝える工夫も必要です。経営層への報告や加入者への周知の方法などは、総幹事会社と相談して進めていくのもよいでしょう。
企業型DCのガバナンス
企業型DCは、加入者自身で資産運用を行う制度であるため、事業主には、加入者が適切に資産運用できるよう支援する重要な役割・責任があります。
なぜなら企業型DCにおいては、運営管理機関や商品ラインアップを決めるのは事業主であり、加入者が決めることはできないため、事業主には適切な制度運営を図る責任(=受託者責任)があると考えられています。
運営管理機関と連携しながら、加入者への受託者責任を果たすことが必要です。
運営管理機関の定期的な評価
事業主は、少なくとも5年ごとに運営管理機関が実施している運営管理業務について評価を行い、委託内容について検討することが求められています。
「法改正などの情報提供がない」「制度運営についての相談に乗ってもらえない」など、満足な対応がなされていない場合は改善の要求はもちろん、運営管理機関の変更を検討してもよいでしょう。
運用商品のモニタリング
加入者が選択できる商品が導入当初のままで、現実に適合していないケースも多くあります。最近では投資信託の信託報酬が低く設定されている商品も出てきており、加入者にとって有益な商品ラインアップになっているか確認してみましょう。
2019年7月から各運営管理機関が提供する運用商品の一覧がWeb上に公開されていますので、自社の商品ラインアップと比較が可能です。
社内レポーティング体制の構築
企業型DCは大切な人事制度の1つです。加入者の現状や運営状況の問題点などを経営層と共有する体制を作りましょう。
運営管理機関より定期的に報告されるモニタリングレポートなどは経営層にも報告し、経営層が制度運営に関与する仕組みを整え、投資教育の実施、制度変更など円滑に行えるようにすることが望ましいです。
従業員のために不断の見直しを
企業年金は従業員の一生に関わる制度です。制度設計や運用状況に目を配ることは担当者にとって欠かせません。経済状況や働き方改革など企業を取り巻く環境の変化に応じ、定期的な業務の見直しや、経営者と情報を共有することも大切です。
しかし年金制度は複雑で、関連する政省令改正も頻繁に行われます。制度の運用や乗り換え、業務の効率化など年金業務の悩みがあれば、幹事会社や運営管理機関に相談してみましょう。
企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。