働き方の多様化や、企業の平均寿命の短期化など、時代の移り変わりにともなって、転職する人は少しずつ増えています。
人材が流動的になっている一方で、中小企業の多くは業務が属人化していることが多く、もし実務担当者から急に「退職したい」との申し出があったら、慌ててしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな時のために、起こりうる問題を事前に想定し、対策を考えておくことが大切です。
急な退職で困ること
◆引き継ぎに十分な時間が取れない
何ヶ月も前から退職することが分かっていれば、時間をかけて後任者は直接指導を受けることもできますが、往々にしてそのようにはならないものです。担当者しか知らないような業務を極力減らし、しっかりマニュアルに残しておくようにしましょう。
マニュアルの作成時には図や表を多く使い、読みやすく理解しやすいものにすることが理想です。しかし、作成にも多くの時間を要してしまいます。そんな時は、作業画面や作業風景をビデオ撮影したり、オンライン通話で解説しながら録画しておけば、実際の作業の中でマニュアル化できるので時間も少なく済みます。また、社内業務のマニュアル作成を手助けしてくれるサービスもあります。
◆担当業務に特別なスキルが必要
特別なスキルを必要とする作業は、担当者の退職によって業務が停滞してしまうことも考えられます。複雑な計算や法令に関わる経理などはそのような作業の一つですが、スキルが必要な業務でも、細かく分解すれば効率化できる作業が見えてきます。
社内のDX化を推進し、自動化をできる部分がないか探しましょう。DX化はITに詳しい人が担当した方が当然効率も上がります。社内に適任者がいなければ外部に委託したり、コンサルティングを受けることも選択肢の一つです。
ここでのポイントは、業務をできるだけ分解することです。そして、他の人でもできる部分を見つけ出し、その部分はマニュアルを作成することで、普段から複数名で分担するようにします。そうして、専門的な業務だけをスキルを持つ人が担当するようにしておけば、いざという時の引き継ぎも少なくなりますし、特定の人がスケジュールを空けて作業をしなければならなかった業務も分担することで普段の業務効率もアップします。
◆後継者がすぐに見つからない
退職した後は代わりの人材を採用しなければいけないのですが、慢性的な人材不足の時代では、代わりの人材が長期間見つからない、ということも想定されます。
そのような場合に備えて、まずは今、働いている社員を育成し、「多能工化」しておくことも一つの方法です。「多能工化」とはもともと製造業から生まれた言葉で、一人が複数の機械を操作できるように育成することを意味します。それが製造業以外の企業でも、複数の業務を担当する社員を育成することによるメリットを得られる、と広がっていきました。
「多能工化」の一番のメリットは、業務の負荷が平準化することです。担当者が複数いる、ということがそのまま後継者問題の解決にもつながります。また、自分以外の業務を担当している立場での視点も持つことで、チームワークが強化されたり、時代の変化に合わせて対応できる柔軟な組織づくりにも役立ちます。
備えあれば憂いなし!さらに良いことも・・・
実務担当者の退職理由はさまざまですが、家庭の事情や急病などで突然の退職や転職は、どうしても起こってしまうもの。
今回ご紹介したように、担当者の急な退職に備えておけば、いざその時が来ても慌てることもありません。さらに、このような事前の対策は、結果的に普段の業務の効率化にもつながります。業務分担によって仕事量のばらつきが解消されれば、担当者の負担も大きく減るため、業務に対する不満や不満を原因とする退職も少なくなるかもしれませんね。
課題解決の考え方について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。