人口ピラミッドと言われる年齢構成比のグラフは、誰しも一度は見たことがあるのではないでしょうか。現代の日本が抱える最大の問題でもある少子高齢化により、中央がふくらんでいるつぼのような形になっています。
現在の日本のグラフの形状は理想の形とは言えませんが、では、私たち企業の年齢構成比はどうでしょうか?
企業が存続していく中で、年齢構成比は雇用から退職までの新陳代謝がスムーズに行われることを確認するための指標であり、それは長期的かつ安定的な組織運営に直結する重要な要素です。
年齢構成比の形状にはいくつか型がありますが、正解はありません。今の自社の構成比と見比べて、当てはまるデメリットがあれば、対策を考えるヒントにしてみましょう。
①ピラミッド型
ピラミッド型の特徴は、とにかく若手が多く、ベテランが極端に少ない形状です。ベンチャーやスタートアップ企業など、創業して間もない企業に多く見られます。
ピラミッド型のメリット・デメリット
このタイプのメリットは、若い社員が多いことにより、社内に活気が出ることです。また、年齢層の中で若い方が多く、少数精鋭で経営しているため、決断スピードが速いことも特徴の一つです。また、ベンチャーでは若手の内から責任ある仕事を任せられる可能性も高いため、若手社員の成長スピードが速いこともメリットの1つです。
逆にデメリットは、マネジメント能力を有している人材が不足しているため、牽制機能がなく、不祥事が発生するリスク、仕事の正確さ、丁寧さに欠けるリスクなどがあります。また、ノウハウが蓄積された中間層やベテラン社員に負担が大きくなりすぎてしまう可能性もあります。
デメリットの対策
マネジメント層をキャリア採用するケースが多いようです。さらに、少ない中間層に対して人材育成スキルを高めていくことと、社内の業務を効率化し、ノウハウが貯まる仕組みを構築することも同時進行で進めていく必要があります。
②ひし型
30〜40代がボリュームゾーンとなり、ピラミッド型とは逆に歴史の長い企業に多く見られることが特徴です。
ひし型のメリット・デメリット
メリットは、ピラミッド型と違い社内のノウハウが貯まっている人材が豊富であり、すでに戦力となっている社員が多いため、事業の安定的な継続、発展が見込めます。
このタイプの一番のデメリットは、若手の昇進/昇格ポストが空いていないことにあります。もし成果が上がっていても、ポストが無いせいで昇進などができず、評価されていないと感じてしまえば、モチベーションの低下を招く恐れがあります。
デメリットの対策
昇進ポスト以外の適切な評価システムの構築が必要となります。昇給はもちろん、社長賞などで役職とは関係のない褒賞を作ることで、成果を上げている若手のモチベーションを保つ工夫ができます。それによって、自分優先ではなく企業全体の利益へコミットするような目標の設定も可能となるでしょう。
③ひょうたん型
ひし型と対照的に、30〜40代が少なく若手とベテランが多い形状です。バブル崩壊やリーマンショックなどの景気後退期に新卒採用を抑制した影響と言われています。
ひょうたん型のメリット・デメリット
メリットについてもひし型と逆になります。若手社員にとっては中間層がいないため大抜擢の可能性がありますので、成果を出した若手社員は会社からの評価を受けやすくモチベーションを高く保てることはメリットといえるでしょう。
一方でデメリットは多く、
・上層部の意思伝達をする中間層がいない
・若手の業務チェックに目が行き届かない
・世代間の価値観のギャップ
・高齢層と若手の待遇の違いから若手の離職につながる
など、企業としては早急な対策が必要となります。
デメリットの対策
マネジメント層のキャリア採用、経営層から最前線の社員まで適切な指示系統の構築、世代間のコミュニケーションを促す施策や企業全体の認識を共有する施策など、若手が離れていかないための取り組みが必要です。
④逆ピラミッド型
若手社員が少なくベテラン社員が多い状態です。意図的に採用にかかるコストをカットしていたり、業態が古くなっていて若手採用を募集しても人員が集まらなくなっている場合などが考えられます。
逆ピラミッド型のメリット・デメリット
働き盛りの中堅層やベテラン社員が多く、安定した経営ができることがメリットです。必要な利益が出ていて、将来的に事業売却や廃業などを考えているのであれば、新人育成コストがかからないことは利点となります。
しかし、事業を存続させる上では若手が不在の状況はデメリットとなります。年上社員が多いことで若手の意見が通りづらくなり、組織の活性化が損なわれることになります。また、高齢になると現状維持思考が強くなる傾向にあるため、新たな発想や業務改革意識が醸成されづらくなる可能性があります。事業を継承する場合においても、ベテラン社員の属人的な業務に頼っている場合には、ノウハウが引き継がれないなどの課題があります。さらに、多くの社員が同時期に定年を迎えた場合、退職金が一斉に必要になる場合もあるなどの経済的負担も考えられます。
デメリットの対策
若手の採用が急務となります。将来にわたり継続的に事業を行うことを考えるならば、採用に係るコストを投資と捉え、若手が働きたくなる社内環境の整備をするなどの対策が必要です。退職金制度の見直しによって福利厚生制度を充実させ、負担を平準化することができるなど、将来への対策と企業の魅力向上が同時にできる場合もあります。
年齢構成比の理想型とは?
代表的な企業の年齢構成比のグラフ形状をご紹介いたしました。実態としては景気や社会情勢などの影響で、理想的な形状を維持している企業は多くないでしょう。また、構成比のパターンに当てはまるからといって必ずしもメリット・デメリットも当てはまるとは限りません。若くて経験を積まれた人もいれば、高齢になっても意欲的に現場の最前線で働いている方もいらっしゃいます。あくまで一般的な指標として年齢構成のパターンに当てはまった時のメリット・デメリットを見直す機会にしてみてください。
ここまでの内容をまとめると、一般的に理想とされる年齢構成比はどのような形状なのでしょうか。
若手からベテランまでバランスが取れている『台形型』が理想
ここまでで、さまざまな年齢構成比の形状を見比べてきて、継続して安定的な事業運営を行なっていくために理想的なグラフ形状とは、若手からベテランまでの比率が大きく偏ることなく緩やかに減少していく台形型であり、ここまで紹介したグラフ形状のデメリットを打ち消すような要素をバランスよく含んでいるタイプといえます。
- 若い社員が毎年入社してきており社内に活気がある
- 中間層が現場で経験してきた知識やノウハウもある
- 組織の指示系統が上層部から中間層を通り若手へスムーズに流れて行きやすい
- 昇進ポストが見えており、良い意味での社内競争が活性化されている
逆を言えば、年齢構成がいびつな形状であっても、それぞれの型でご紹介したような対策を実施することで、デメリットが解消され理想型に近い状態にすることができます。いずれの場合でも、まずは現状をしっかりと把握し、個別の対策を立てることが肝要です。
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