賃上げと併せて検討したい、人事制度見直しの要点とは

賃上げを機に人事制度自体も再考したい

もはや待ったなしとも言える賃上げですが、経営者は自社の今後の財務に与える影響を注意深く検討する必要があります。その企業が採用する制度設計によりますが、賃金が上がった分、退職金や企業年金制度の給付額も増えるケースもあるのです。その場合、何らかの手を打つことも検討すべきでしょう。また、影響を受けない場合であっても、これを機に人事制度や退職金・企業年金制度を見直す良い機会かもしれません。

そこで、今回は退職金・DB(確定給付企業年金)と、DC(確定拠出年金)に分けて、それぞれどのような対応が考えられるか、見てみましょう。

退職金・DBで検討すべき点は?

下の図は、退職金制度・DB制度、そしてDCについて、どのケースで賃上げにより給付額が増えるのか、また、どのような対応が考えられるのかをまとめたものです。

お客さまのニーズとソリューション[DB・退職金] [DC]

まず、DB・退職金について見てみましょう。最も影響が大きいのは、最終給与比例制度を採用しているケースです。累計給与比例制度の場合は、賃上げ後の給与累計分のみが影響します。一方、ポイント制度と定額制度を導入している企業の場合、算定に給与額を使用しない制度となっているため、影響はありません。ちなみに、給与比例の制度であっても、賃上げの対象とならない給与を用いている場合は当然影響を受けません。

賃上げがダイレクトに給付額に影響するのを避けるためには、これを機にポイント制度や退職給付用給与比例型制度に変更するという手段が考えられます。しかし、ポイント制度へ移行するにしても、単に賃上げが給付額に影響するのを避けるというだけでなく、より公平で、従業員の頑張りにしっかり報いる制度にしたいものです。その場合、しっかり人事コンサルティングを受けて、人事制度・給与体系全般を見直しても良いかもしれません。

一方、「影響なし」の企業の場合でも、物価上昇に対して給付額の価値が見劣りしないように対策を講じたり、これを機に人事制度全般をしっかり見直すというアプローチも有効です。

DC掛金で検討すべき点は?

では、次にDC掛金について、見てみましょう。

DCの場合、掛金算定に賃上げの対象となる給与を用いる場合は賃上げの影響を受け、DC掛金が増加します(給与比例)。一方、資格等のポイントを用いる場合(ポイント比例)や、勤続期間に応じて算出する場合(定額)では、賃上げの影響は受けません。

「影響あり」の場合、DC掛金額のコントロールだけを目的とするのであれば、ポイント比例に変えたり、DC用給与比例にするなどの対策が挙げられます。ただし、やはりこれを機に人事制度・給与体系全体をしっかり見直して、制度設計全般を最適化する方が、より根本的なソリューションと言えるでしょう。

「影響なし」の場合、安心して現状のまま、という企業が多いかもしれません。しかし、上昇する物価に対するDCの実質価値を維持するという観点から、ポイント比例の場合ならポイント単価の引き上げ、定額なら掛金引き上げなどを検討してはいかがでしょうか。また、定額の場合、これを機にポイント比例に移行するというのも手です。

賃上げが財務に与える影響のさらに詳しい内容は、「賃上げが財務に与える影響、しっかり精査していますか?」で解説していますので、併せてご覧ください。

優秀な人材を確保するためにも、賃上げは必要な戦略になりつつあります。財務に与える影響までをしっかり精査して、その影響をコントロールしつつ、長い目で見て自社の目的に合致した人事制度に改めていく、良いきっかけとも言えます。ぜひ人事部任せではなく、経営者自ら主体的に取り組んでいただければと思います。

賃金引上げが退職給付に与える影響と対策について、資料にまとめていますのでこちらもご参照ください。

賃金引上げが退職給付に与える影響と対策
リンククリックで「賃金引上げが退職給付に与える影響と対策.pdf」がダウンロードできます。

りそなグループでは、人事コンサルティングや年金コンサルティングも含め、お客さまのご要望をトータルでサポートする体制を整えています。自社はどのような影響を受けるのか、どのようなソリューションが有効なのかなど、疑問があれば、ぜひお近くのりそな銀行の支店にご相談ください。

企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2023年8月10日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
記事に関するお問い合わせは、お手数ですがメールにてご連絡をお願いいたします。