2023年の春闘は大手企業の満額回答が続出。連合が3月中旬に発表した初回集計結果では賃上げ率の平均が3.8%と、実に29年ぶりの高水準となりました(※1)。中小企業でも賃上げへ意識が向いていることでしょう。
経営者としても従業員のモチベーションアップに直結する賃上げは実現したいところ。しかし、単純に賃金を上げても従業員の満足感は大きくは高まりません。所得税や住民税、および労使折半の社会保険料が差し引かれるため、賃上げ分がそのまま従業員の懐に入るわけではないからです。
そこで、企業年金をはじめとする退職金・福利厚生制度創設を検討してはいかがでしょうか。従業員の満足度を上げ、企業にもメリットがある退職金・福利厚生制度から2つご紹介します。
企業型DCやiDeCo+の導入進む
福利厚生を充実させる方法として、近年加入者が大きく増えているのが企業型確定拠出年金(企業型DC)と中小事業主掛金納付制度(iDeCo+、イデコプラス)です。2022年3月末現在で企業型DCの加入者数は対前年比4.2%増の782万人、iDeCo+も2万6千人余りとなり、いずれも右肩上がりの状態です(※2)。
企業型DCは、企業が拠出する掛金を従業員が年金資産として自ら運用する制度です。従業員は掛金をもとに、金融商品の選択や資産配分の決定を行います。そして原則60歳以降に、積み立てた年金資産を一時金(退職金)または年金の形で受け取ります。
iDeCo+は、従業員がiDeCo(個人型確定拠出年金=従業員自身が掛金を積み立てて運用)に加入している場合、従業員の掛金に企業が上乗せして拠出する制度です。企業が掛金を上乗せしてくれることで、従業員は効率的に老後の資産を積み立てることができます。
iDeco+については、こちらのコラムも参考にしてください。
「iDeCo+をベンチャー経営に有効活用しよう!」
従業員にも企業にも導入のメリットが
「昇給」分は全額非課税、実質的な賃上げを実感
最大の利点は掛金の扱いにあります。企業が上乗せした分の掛金を従業員に全額渡すことで、実質的なベースアップを実感してもらえる制度と言ってよいでしょう。
その一方で、掛金は給与所得とはみなされません。税制上、所得に該当しないため、掛金に所得税・住民税がかからないのです。
例えば個人が全額を給与として受け取ってから貯蓄に回すより、企業が年金の掛金として拠出した方が、積み立ての原資が大きくなるわけです。さらに通常、金融商品を運用した際に利子や運用益に課せられる源泉分離課税(20%)は非課税となり、受取時にも税制優遇措置があります。従業員にとっては賃上げにはないメリットも得られるわけです。
人材確保・定着に貢献
人材獲得競争が厳しくなる中、求人票に「確定拠出年金導入済み」と記載できれば、制度導入済みの企業から転職応募が期待できます。確定拠出年金の加入者は民間企業会社員で23%と、ほぼ4人に1人は加入済みとのデータがあります(※3)。前述したように企業型DCの加入者が右肩上がりで今後も増えていくとすれば、制度導入の流れを無視することはできないのではないでしょうか。
また、企業が拠出する掛金は従業員の将来に投資しているともいえ、従業員を大切にしていることを示す制度でもあるのです。企業側にとっても、掛金が損金となるため賃上げと異なり、社会保険料にも影響しない点がメリットになり得ます。
経営課題解決の選択肢として導入検討を
賃上げや人材確保など、中小企業にはさまざまな経営課題があります。すべてを一挙に解決するのは大変ですが、企業年金の導入が選択肢になりうることはお分かりいただけたと思います。従業員の満足度向上や優秀な人材の確保にもつながり、「選ばれる企業」になるためにも、企業年金は今こそ検討すべき方法であると言えるでしょう。
企業年金について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。