会社の経営方針に責任を持つ立場であるが故に、経営に対しての決断は社長に委ねられます。
外からは見えない苦しい思いを、内側に抱え込んでしまうことも少なくありません。そんなとき、他社の社長はどうしているか気になるものですが、同様に外からは見えないようにしているので、やはり知ることはできないでしょう。また、創業社長の抱える悩みと、2代目以降の事業を受け継いだ社長の悩みというのもまた別物になるかと思います。
今回は、外からは見えない「社長の悩み」をよくあるシチュエーション別にご紹介し、その解決のカギを探っていきます。
「自分以降」の事業存続
事業存続を考えられるほど事業を拡大したり、長く続けて来たのは良いが、後継者について悩んでいるという話は珍しくありません。特に優秀なプレイングマネージャーとして会社を牽引してきた経営者ほど、「自分がいなくなったら組織が空中分解してしまうのではないか」「自分の後を任せられる人材がいない」と、危惧している方が多く見られます。「自分以降」の事業存続を模索するには、経営者として自分と同じ視点で考えることのできる相談相手がほしいところです。しかし、会社の実情を赤裸々に話すのも気が引けるし、悩んでいる姿は外の人物には見せたくない。そもそも悩みを相談し、適切な方向に導いてくれるような人物が周囲にはいないため、ひとりで悩みを抱えている方もいるでしょう。
中小企業に多い一族経営の会社や経営者が一代で築いた会社ほどこの悩みは深く、結果としていつまでも社長が引退できない、という状況を招いているようです。
「人材が出ていく! 足りない! 来ない!」
長く事業を続けている会社からよく聞く悩みをご紹介します。
長く在籍する社員の定年退職や、転職によって人材が流出してしまう。特に管理職やチームリーダーの抜けた穴を補填したくとも、なかなか人が集まらないでしょう。
また、新卒を募集しても現在人気の業種ではなかったり、会社規模が大きくなかったり、知名度もあまりないため、応募があまり来ないという悩みもあります。
「お金」についての尽きない悩み
「以前は売上も良かったけれど、最近は……」
隆盛期から時間が経過した現在では、売上・利益減少の時期に入っており、どうにかしなければと考えているがなかなか良い対策が見つからない。こちらも長く事業を続けている会社でよく聞かれる悩みです。
当時は競争力が高かったものの、同業他社が増えてきたり、自分たちの技術や商材が陳腐化してきたりといった理由で需要減に転じ、値下げ交渉を断り切れないといったこともあるでしょう。利益を回復するには値上げが必要でも、得意先が離れてしまうことを恐れて値上げに踏み切れずにいるかもしれません。
また、現在の状況がそれほど悪化していなくても、不況下での債務保証や経済の動向などに漠然とした将来の不安を感じている、といったこともあるのではないでしょうか。その場合、会社の経営に深く関わる相手でなければ相談することも難しいでしょう。
これらの「事業継承」「人材確保」「売上」の悩みに共通しているのが、「社内外にすぐに相談できる相手がいない」ということです。
悩みを共有できる「相談相手」が必要
後継者の問題や売上の減少など、自社存続に関わるものについては経営者としての自分と同じ観点で話ができるNo.2の存在が重要です。もし、No.2の存在がいないのであれば、最も信頼できる部下をNo.2として育成することや、管理職が「会社全体とまではいかなくても、自分の担当部門の経営をしている」という視座を持てるよう指導する必要があるでしょう。
しかし、今の社員の中から選んで、育成するのは難しいという場合もあるかもしれません。その場合は、外部から迎え入れるのも1つの方法です。近年では、中高年層の転職も珍しくなく、エグゼクティブ人材を紹介するサービスもあります。面談や面接を重ねて、信頼できる人物を採用するとよいでしょう。
また、社内の若手からもヒントを得られるかもしれません。年齢が違うだけでも物事の視点は変わります。経営者は中長期的な視点を持っていますが、若手は短期的な視点で物事を考え、目の前の業務に集中する傾向があります。その違いが自分自身には刺激となって、新たなアイデアが生まれることもあるでしょう。特に人材に関する悩みは、若手に投げかけてみるのも一案です。採用したい人物像に近い社員の声を聞くことが大切です。ただ、いきなり経営者に話しかけられると驚いてしまう若手もいるかもしれません。普段から休憩スペースで話をしたり、社内ですれ違うときに声を掛けるなど、コミュニケーションをとっておきましょう。
会社経営についての悩み事は会社の業態や組織体制によっても違いますが、ひとりで解決に向けて動けることは限られています。まずは信頼できる部下の育成を図り、悩み解決の糸口を探しましょう。相談することで自分の考えをまとめる効果もあるので、個々の問題に見合った相手に相談し、優先順位をつけて対処するのが良いでしょう。まずは「相談を投げかけてみる」ということから始めると、意外といいアイデアが出てくるかもしれません。
相談できる外部の機関などを活用するのもおすすめです。銀行も社外で力になれる存在のひとつです。もし社内に相談相手がいない場合は、一度担当営業に相談してみる、というのはいかがでしょうか。