3か月に一度、マーケット情報や不動産に関する市況、最新のトピックスなどをお届けします。本記事は2024年夏に発行された、首都圏向けの内容となります。
【Market REVIEW】日銀の利上げパスは米国景気見通しが左右することに
- 日銀は7月末の金融政策決定会合で政策金利を0.25%程度へ引き上げました。公表分では「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、経済・物価見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げる」との記載が加えられました。また、前回4月の展望レポートで記載されていた「当面、緩和的な金融環境が継続する」との文言は削除されました。段階的な利上げを強く示唆することで円安トレンドに歯止めを掛ける狙いがあったと見られますが、市場は日銀の想定以上に大きく反応します。僅か3日間で10円以上も円高・ドル安が進行し、日経平均株価は一日の値幅としては過去最大の下落を記録します。市場の急変動を受け内田副総裁は講演で、“金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない。当面、現在の水準で金融緩和を継続する”と強調しタカ派姿勢を修正します。短期金融市場が織り込む次の(0.5%への)利上げは、およそ1年後まで後ズレしました。
- 日銀にとってもう一つの想定外は米国の景気減速です。仮に米国の景気後退が現実化すれば、過去2度のケースと同じ様に正常化が頓挫することになりかねません。前回は日銀が2007年2月に追加利上げを実施した10か月後(2007年12月)に、米国は景気後退入り(日本は2008年2月から景気後退)、前々回は2000年8月にゼロ金利を解除した7か月後(2001年3月)に米国は景気後退入り(日本は2000年11月から景気後退)しています。二度あることは三度ある、とは考えたくないですが、米国景気の下振れリスクが顕在化していることは事実です。また、ひとたび景気後退懸念が市場で意識されると、そが払拭される迄には相当量の良好な景気指標が必要となります。日銀の追加利上げ観測が高まるまでにはかなりの時間を要することになりそうです。
(りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 下出 衛)
引き続き世界経済はわずかに成長の見通し
- IMFによると、世界経済成長率は前回時点(4月)から大きな修正はなく、2024年は3.2%、2025年はわずかに成長し3.3%の見通しとしました。また、世界の消費者物価は2023年の6.7%から2024年は5.9%、2025年は4.4%へと鈍化する予測としていますが、根強いサービス価格の上昇によって、ディスインフレの勢いは失速するとしています。
- 日本の経済成長率は、2024年が0.7%、2025年は1.0%へと成長する見込みとしており、春闘の結果が下半期以降に個人消費への影響として現れる明るい材料も想定されます。
訪日外客数・旅行消費額ともに上昇が継続
- 円安環境などを背景に、訪日外国人旅行客数は引き続き増加傾向にあり、2ヶ月連続で単月の過去最高値を更新しています。7月は329.3百万人(2019年同月比+10.1%)となり、上期でみても過去最高となった2019年を大きく上回っています。
- 訪日外国人旅行消費額も右肩上がりで増加しています。インバウンド消費動向調査によると、2024年4-6月期は2兆1,370億円(1次速報)と前年同期比+73.5%、2019年同期比は+68.6%と大きく増加しています。費目別の構成比では、宿泊費が33.0%、次いで買物代が31.1%、飲食費が21.8%となっています。
新築マンション価格は引き続き高値水準
- 不動産経済研究所によると、首都圏の新築分譲マンション価格は、2024年上期(1-6月)では7,677万円と前年に超高額物件の売り出しがあったこともあり、前年同期比▲13.5%となっています。エリア別では東京23区のみ前年同期比で下落していますが、平均価格は10,855万円と2年連続で1億円を超えています。
- 契約率は67.0%と上期としては4年ぶりに目安となる70%を下回りました。価格帯別でも、3~4千万円と2億円以上の価格帯の物件で70%を上回りましたが、その他の価格帯では下回っており、契約率からは停滞感もうかがえます。
オフィス空室率は改善傾向、賃料も上昇傾向に
- 三鬼商事によると、2024年7月の東京ビジネス地区における平均空室率は5.00%(前月比▲0.15ポイント)と改善傾向が継続しています。平均賃料は20,034円/坪(同+0.28%)と6ヶ月連続で上昇しています。昨年からの新規供給の影響が懸念されていますが、活発な需要を背景に今のところ大きな市況の悪化はみられていません。
- 令和5年度テレワーク人口動態調査によると、首都圏を勤務地とする雇用型テレワーカーの割合は38.1%と令和3年の42.3%をピークに低下傾向にあります。実施回数は平均2.3日/週とこちらも令和3年の2.4日をピークに低下・横ばいとなっており、ハイブリットワークの定着がみられます。
【Market TOPICS】不動産鑑定問合せ件数の推移(東京)
- 東京都の不動産鑑定問合せ件数は、2024年2Qで大きく増加し、4期ぶりに前年同月比でプラスとなりました。
- 在宅勤務の増加などによりオフィスに対する問合せは、一時は低下していましたが、足元では再度増加しています。
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