組織の価値を最大化するために従業員の成長は不可欠ですが、一人でぐんぐんと成長してくれる従業員はまれな存在。多くは上司による育成が必要になるでしょう。
中小企業においては社長自らが部下の育成に関わることもありますが、従業員が遠慮してうまくコミュニケーションを取ることができない場合も……。対処法を考えてみましょう。
部下の育成のために上司ができること
人材育成において大切なのは、部下と上司の間の信頼関係が築けていることです。人は話を聞いてくれた相手に対して安心感を抱くため、部下の話をよく聞くことで信頼感の醸成に繋がっていくでしょう。
より深く相手の話を聞くための「傾聴力」というスキルがあります。
これは相手に共感し相手を理解するためのもので、ただ単純に「話に耳を傾ける」だけではなく、次のようなテクニックにより効果を高めることができます。
簡単なところでは相づちを打つことや、話を遮らず最後まで聞くこと。オンライン会議などではやや大げさなくらいのアクションが「聞いていますよ」というメッセージになります。
他にも、相手の目を長すぎない程度に見つめて「アイコンタクト」をとれば、しっかりと聞いていると示すことができます。声のトーンや話すスピード、姿勢などを真似る「ミラーリング」も、親近感や好意を持ってもらう心理テクニックです。
また、「バックトラッキング(オウム返し)」は相手が言った言葉をそのまま繰り返したり、話を要約して返したりすることで、「あなたの話を理解していますよ」という共感を示せます。
「傾聴力」がもたらす効果
昨今、組織のパフォーマンスを上げるには「心理的安全性」が重要と言われるようになりました。
心理的安全性とは、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、チームにおいて「この場所では何を言っても責められない」というような安心感を指します。
心理的安全性があるチームでは個々人の責任感や関心度が高まるため、生産性が向上し人材定着率も上がると考えられています。自分の発言が「無知」「邪魔をしている」「ネガティブ」と思われることに人は不安を抱くため、その不安を排除することが心理的安全性を高めることになります。
「傾聴力」は心理的安全性の土台となる重要なスキルなのです。
「傾聴力」を活かしたコミュニケーション術
「傾聴力」をベースとして、部下と適度なコミュニケーションを取るためのヒントをご紹介します。
雑談から親近感を育てる
挨拶は当然のこととして、さらに雑談の時間を増やすよう心がけてみませんか?
部下に関心を持てば、見える部分以外のちょっとした変化にも気づくようになるでしょう。
また自分自身のプライベートを話したり、弱みを見せることも効果があります。「今朝は寝坊しちゃってさ」と失敗談などを語れば、部下は「この人も自分と同じように失敗することがあるんだ」といった安心感を持ち、上司に対して親近感を抱くことができます。
部下と直接話す時間を設定する
上司と部下の関係は、必然的に一人対多人数になります。上司側で意識をしないと部下との接触時間は十分に取れないため、直接話せる仕組み作りが必要です。例えば毎日全員に声をかけると決める、定期面談をスケジューリングするなど、上司側の方でコミュニケーションを取る時間を意識的に設定してみましょう。
声をかけやすい雰囲気作り
部下からすると上司は近づきづらい存在であることが多いため、声をかけやすい雰囲気を作ることも大切です。
何もせずに立ち止まって景色を眺めてみる、用事がなくとも部下の周りをゆっくり歩いてみる、などのことを試してみましょう。たまにはランチに誘ってみてもいいかもしれません。
「傾聴力」は社内だけでなく取引先や、家族など身近な関係性の相手にも使えるスキルです。相手を理解しようとすることは、より良い関係作りの第一歩になるでしょう。
明日から取り入れられるコミュニケーション術とともに、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。