新入社員との食い違いはなぜ起きる?

「これ、適当にやっといて」
この言葉、自分が部下や新入社員に言う立場と考えたとき、期待する成果はなんでしょうか?
「この仕事を任せるから、適切に事に当たれ」といった意味合いで言うことが多いのではないでしょうか。
ところが、適当にやれと言った結果ずさんな仕事をされてしまって大惨事……などという事件は後を断ちません。一体どうしてこういったことが起きてしまうのか、その理由に迫ります。

どうして意図されたことができないのか?

必要十分な指示をしたつもりなのに、期待とは違う結果になってしまう……。
このような事態を引き起こす原因はいろいろと考えられますが、その中でもありがちなのが「言われたことが理解できないから」というものです。といっても、日本語能力が足りないとか、本人の資質によるものといった話ではありません。その仕事をやっていれば分かる言葉や塩梅を知らないので、言われたことの意図が正確に理解できないことが問題になります。

たとえば専門用語や固有名詞、現場でしか使われない慣用語、適切な量や力加減、物の置き場所や責任の所在といった、その職場で働き続けている人にとっては知っていて当然という意識があるものです。

知っていて当然ということは、それを前提とした指示が出るのも当然。ところが、指示対象が新卒や中途採用で入ってきた新入社員だと話が違ってきます。
新卒は言わずもがな、同業種からの中途入社であっても持っている常識は新しい職場のそれとは違うものです。結果、指示という入力が意図したものと違う解釈をされてしまい、出力も期待したものとは違ってしまうわけです。
では、これを防ぐためにできることとは何でしょうか。

前提共有ですれ違いを防ぐ

新人教育されているから大丈夫だろう、前職で十分に分かっているだろう、といった認識で指示を出すのがミスの元。先入観を捨てて、作業前に理解度を確認するのが大事です。
新人の作業前に工程次第を自分で説明してみてもらうなどの工程確認を入れるようにすれば、どの部分の理解度が足りないのか、どういった認識の齟齬があるかを把握できます。これを行うことで改めて説明が必要な箇所が明確になり、すれ違いの軽減につながります。

作業で想定する「数」を確認することも有効です。デスクワークの資料作成であればページ数や想定する工数など、ものづくりの現場であれば取り扱う資材や加工の数量など、具体的な数値を確認することで、仕事の分量と粒度の認識合わせをより精度高く行うことが可能になります。
ここで確認した数値は具体的な体験として生きるので、後の業務でも「この塩梅で」が通用するようになるでしょう。
マニュアル化できる業務であれば、必要な文量や用語などを含めたマニュアルを作成して、実作業に先立って前提を共有しておくのも、指示を正しく理解するために効果的な手段です。

特に若手社員で気になることは……

認識の共有という点で気になるのが、世代間による観点の違いではないでしょうか。
リクルートマネジメントソリューションズの調べによれば、特に学生時代にコロナ禍の渦中にあった若手は行動による成功体験を積み切れていない傾向があり、自律的な行動よりも任された仕事を確実にこなすことを希望しているようです。(※1)
対策としては明確な指示と丁寧な事前説明、そして途中経過の把握と意見の聞き取りが重要となります。これはつまり部下に仕事を振る際の基本的なこと。それさえできていれば、あとは仕事の成功体験をもって自発的な行動を促すことで、頼もしい戦力になってくれるでしょう。
いつの時代でも言えることではありますが、社会情勢によって醸成された世代間の考え方の違いを汲み取り、適切な対応をすることが求められています。


新入社員との意識の食い違いについてお送りしてきましたが、いかがでしたか?
事前の確認や説明などは面倒だと思われがちですが、認識の齟齬を埋めて、新入社員がこちらの意図したとおりに業務を遂行できれば、ミスをリカバリーしなければならない場合と比べて大幅に仕事を効率化することができます。
人材の不足や流動化が叫ばれる中では、こういったことに手間を惜しまず、現在いる人員を最大限に生かすことが事業の継続にも寄与します。
そのためにも職場全体の意識合わせを大事にし、全員が効率よく仕事をできる環境を作りましょう。

(※1)参考:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 新入社員意識調査2023

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年7月12日時点の内容となります。
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