ビジネスの場や家事などの日常シーンで、「任せられない」と悩む人が多く見られます。その背景には、「人に仕事を押し付けたら、その人が辛くなる」という気持ちがあるようです。しかし上手な「任せ方=丸投げの仕方」をマスターすれば、相手を成長させ、なおかつ自分も感謝されるという相乗効果を得られます。本記事では『任せるコツ——自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(山本渉著、すばる舎)から、任せることが得意になるための具体的な方法を紹介します。
「任せる」ための5つのコツとは?
「任せる=丸投げをする」ときには、どのように依頼すると相手は気持ちよく引き受けてくれ、高いパフォーマンスを発揮してくれるかを考えること——つまり「どう頼むか」が重要になります。
頼み方でまず大切なのが、「意欲創出」です。「仕事を受ける側は、すべての仕事を面倒と思っている」という前提に立つなら、「やってみよう」と思ってもらう意欲を、依頼する側がつくりださなければなりません。そのためには「感謝される」「褒められる」「自分しかできない特別感」の3つを意識しましょう。具体的には、「ありがとう」「△△さんにしかできない」といった言葉が効果的です。
「目的の明確化」――依頼内容が何のためのものなのかをはっきりさせることもポイントです。それによって依頼の全体像が見えるようになり、ただの「作業」に意義と価値が加わり、そのタスクが自分ごと化されて参加意識が芽生えます。
もうひとつ、「欲求充足」も重要です。たとえば「部として重要な案件だから、休み返上で取り組もう」というときでも、「ここで結果を残せば来年は人員を増やせるから、今回はみんなで残業して取り組もう」といったように、「この仕事をやってほしい」というこちらの都合を、「その仕事をやりたい」という相手の欲求に沿った文言に変換して、相手へのメリットを提示することも大切です。
これらは高いモチベーションとパフォーマンスで仕事を受けてもらうための依頼法の基本ですが、これらに加えて「選択肢の提示」と「負担の配慮」も必要です。
「やってよ」と上司に言われたら、部下としては「できません」と答えづらいものです。そこで、「最近忙しいようですが、このスケジュールでできますか?」「無理しないでください」などと伝えて、断りにくくしない工夫が必要です。断りやすくしては仕事が滞ってしまう、と懸念するかもしれませんが、無理なアサインは良い結果を生むことはなく、結果としてそのほうが良いパフォーマンスにつながるのです。
リーダーの「任せられない」が、組織を弱体化させる
「どうしても任せられない」というリーダーやマネージャーが一定数存在しますが、それには大きく2つのパターンがあります。まずひとつには、任せられる優秀なメンバー(部下)がいないパターン。しかし実際は、「周りが優秀だから任せられる」のではなく、「周りに任せないから、いつまで経っても任せられるようにならない」のです。メンバーの力を信じて、多少の失敗は成長に必要と考え、大きな事故だけは起きないように、そっと見守るくらいで臨めばいいのです。
もうひとつ、「任せられない」理由で圧倒的に多いのは、「自分でやったほうが早い」と考えるパターンです。プレーヤーとして優秀であればあるほど、こう思ってしまうのは当然かもしれません。しかし、仕事を任せず抱え込むことは、メンバーの成長の機会を奪い、組織としての総力を高めていないことになります。
「チームに任せられる人がいない」というのは「私はマネージャーとして無能です」と言っているのと同義語です。マネージャーの仕事は、「1+1=2」という足し算思考ではいけません。「1」だった若手が「2」にも「3」にもなり、その掛け算で高いパフォーマンスを生み出す――それこそがマネージャーの使命です。そう考えると、「自分でやったほうが早い」というのは、育成を無視し組織を弱体化させる罪といえるでしょう。
「丸投げ」は、「丸受け」してくれる人材がいて初めて成り立つ
丸投げをすることと同時に、投げたものを「丸受け」してくれる人材を育てることも重要です。とくに新人など、まだビジネスのノウハウもスキルも習得していない状態であれば、「任せる」よりも前に教える必要があります。そこで必要となるのが、「ティーチング」と「コーチング」です。
「ティーチング」とは、答えを教えること。これは相手の経験が浅い場合や、緊急時に複数人を同時育成する場合に使用します。相手がスキルを習得できることが目的で、しっかり言語化して、理解できているかを確認しながら進めることがポイントです。
一方で「コーチング」とは、答えを引き出すこと。主体性を持たせてモチベーションを上げたいとき、あるいは1対1で育成するときに有効です。具体的には、傾聴と質問を繰り返して答えを引き出し、その答えを決して否定せず、相手からさらなる答えを引き出していきましょう。
近年はビジネス書などで「コーチング」が奨励されていますが、コーチングが優れていてティーチングが古い、というわけではありません。基本的には「ティーチング」からスタートし、相手が経験を積んでいくと「コーチング」の比重が大きくなっていくのが理想的です。
「正しい丸投げ」は、個人も組織も成長させる
「正しい丸投げ」をすれば、相手に達成感を与え、人を育てることができます。しかし配慮のない、自分本位な「間違った丸投げ」は、人をつぶすだけです。
「間違った丸投げ」は、たとえば自分が楽になることだけを考える、目的や意義を伝えず、ただ作業をさせる、命令として押し付ける、感謝や評価などのフォローがない、などがその代表格です。「間違った丸投げ」は「正しい丸投げ」と裏表の関係になっていますから、「間違った丸投げ」の逆をすれば、個人も組織も劇的に成長させることができるのです。
相手を信じて任せることで、成果が出ます。経営者であればその会社の、マネージャーであればその部署の数字に責任を持つのは当然ですが、勇気をもって、ときには仕事を減らす決断も必要。効果的な「正しい丸投げ」を実施して、業績を上げるためにも削る部分は削り、断るものは断りましょう。
本書の要点
● 任せ方ひとつで、仕事の成果は変わる
「どう頼むか」で、相手のやる気もパフォーマンスも変わる。任せる側の伝え方が、仕事の質を大きく左右する。
● 部下が育たないのは、「任せない」から
任せられないのは、部下の能力不足ではなく、育つ機会を与えていないから。失敗を恐れずに任せることが、成長への第一歩。
● 「間違った丸投げ」では、人も組織も育たない
目的を伝え、フォローを怠らず、信じて任せる。それが、自分の時間を生み、部下を育て、組織の底力を高める。
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