手形・小切手電子化への対応、進めていますか?

古賀元浩

古賀 元浩
一般社団法人全国銀行協会 事務・決済システム部 次長

2007年東京銀行協会(現全国銀行協会)入社。2023年4月から現職。手形・小切手機能の全面的な電子化に関する企画・推進業務のほか、全銀EDIシステム(ZEDI)の利活用促進、CBDC、オープンAPI、キャッシュレス等の決済サービスの高度化に関する業務を担当。


2021年、閣議決定された政府方針の成長戦略実行計画の中で示された、約束手形の利用の廃止・小切手の電子化の促進。これを受けて全国銀行協会(全銀協)も、産業界・関係省庁と金融界が連携して「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画」を定めました。電子化に向けた動きの現状と今後について、全銀協の古賀元浩・事務・決済システム部次長にお話を伺いました。

2027年3月末を目指して進む電子化

政府方針を受けて全銀協では、産業界・関係省庁と金融界が連携して、2026年度末(2027年3月末)までに、電子交換所に持ち出されるすべての手形・小切手の交換枚数をゼロにすることを目標としています。2023年の電子交換所における手形・小切手の交換枚数は合計2,468万枚。2026年度末までにゼロにするためには、毎年約822万枚を減らしていく必要があります。

電子交換所における交換枚数の削減イメージ

手形・小切手の電子化は、利用する企業にとっても事務負担の軽減やコストダウンなど、さまざまなメリットをもたらします(「手形・小切手電子化のメリットを知っておこう」記事参照)。また、社会全体で見ても、年間2,468万枚のペーパーレスにつながるほか、産業界全体で年間401億円ほどのコスト削減効果があることが、全銀協がリサーチ会社に委託した調査で明らかになっています。

未対応のままだと事業・商取引の継続に悪影響が出てくる可能性も

2027年3月末までの全面電子化という目標を見据えて、すでに金融機関ではさまざまな取組みを実施しています。具体的には、「でんさいネット」のセミナーの実施、電子化のための訪問サポートやヘルプデスクの設置、各種キャンペーン等、各金融機関がでんさいおよびインターネットバンキングの導入支援・利便性向上や経済合理性を確保する取組みを行っています。

また、2023年に閣議決定された政府方針の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」では、「約束手形・小切手の利用廃止に向けたフォローアップを行う」旨が明記されており、こうした政府の動きも踏まえ、手形帳・小切手帳の製造中止を決める製造業者も出てきています。金融機関においても、2023年8月以降、3メガバンクなど一部の銀行等では、当座預金口座開設の停止、または新規に開設した当座預金口座における手形・小切手の発行の停止、2027年4月以降を期日とする手形・小切手の取り立ての受付停止を公表しています。加えて、手形帳や小切手帳の発行終了の予定をウェブサイトで公表している金融機関もあります。

2027年3月末以降、手形・小切手が一切使えなくなるということではありません。しかし、こうした状況を踏まえますと、その利便性は低いものとなり、事業・商取引の継続に悪影響が出る可能性も予想されますから、早期に電子化に向けた取り組みをスタートしていった方が良いでしょう。

電子化の進め方を押さえておこう

手形については、全銀協が設立した「全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)」などの利用に切り替えることで電子化を進めます。小切手はIB(インターネット・バンキング)による振込に切り替えることになります。

電子化を進めるといっても、自社の都合だけで一気に進めるわけにはいきません。まずは取引先へ説明して理解を求める時間が必要です。また、取引金融機関との間で電子化に向けた準備(IBの契約や、でんさいネットの利用契約など)にも数週間の時間がかかります。ちなみに、でんさいネットでは、取引先への説明に必要となる案内文のひな形なども用意していますから、ぜひご活用ください。

経理事務を変更することに抵抗を感じることもあるでしょう。上述のとおり、各金融機関では、でんさいに関するセミナーの開催や企業の取引先向け説明会への対応のほか、でんさい・IBの導入や操作に関するサポートデスクを設置するなど、さまざまな支援体制を整えています。また、でんさいネットも導入サポートのため、企業向けオンラインセミナーの開催や各種サポート資料などをご用意しております。

こうしたでんさいネットの各種サポート資料などで使い方を学んだり、取引金融機関のサポートを受けたりすることで、「これならできそうだ」と自信を持っていただけるケースが多々あります。ぜひ、こうしたものをご活用いただき、手形・小切手電子化への対応を進めていただければと思います。

全銀協でも、皆様の電子化への理解促進、取引先の理解が得られやすいような環境整備などのためにも、引き続き、手形・小切手の電子化に関するさまざまな周知・広報活動を実施し、2026年度末までの電子化に向け、皆様の取組みをサポートしていきたいと考えています。

決済業務効率化について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年9月6日時点の内容となります。
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