中小企業がDXを考える際に、人材や予算の不足は大きなハードルとなっています。しかし、必ずしも大掛かりな予算や専門人材がなくとも、DXをスタートさせることは可能です。全国の中小企業にDX導入支援を提供している中小機構の広報・情報戦略統括室 総合情報戦略課と、経営支援部 連携支援課にお話を伺いました。
人材と予算の不足がネックに
中小機構が2022年と2023年に行ったアンケート調査で「DXに取り組むに当たっての課題」について質問をしてみたところ、「ITに関わる人材が足りない」「DX推進に関わる人材が足りない」「予算の確保が難しい」がトップ3という結果でした。(図参照)
従業員規模20人以下の企業に絞ると、「何から始めてよいかわからない」「具体的な効果や成果が見えない」などが上位を占めました。DXの基本的な考え方については、「中小企業におすすめ『難しくないDXの始め方』」記事も参考にしてみていただければと思います。
人材や予算不足については、われわれ中小機構の提供する「ITプラットフォーム」の各メニューを、ぜひ活用してみてください。自己診断から課題整理、そして実際に課題解決ツールを選んで導入するまでを、さまざまな形で支援しています。また、IT導入補助金もご用意しています。
外部に頼れる場所を見つけよう
中小企業の場合、人材や予算の不足を自社の努力だけでカバーするのは大変にハードルが高いものです。中小機構だけでなく、全国の商工会議所や金融機関など、外部に相談できる人や機関を持つことは非常に重要です。その場合、自社に寄り添った、丁寧なサポートを提供してくれるところを探してみてください。
また、IT人材については、「プログラミングに精通しているなど、高度なITスキルを持った人がいないとDXはできない」というわけではありません。
むしろ、まずは会社の仕事にしっかりとした思いを持っており、「もっとここを効率化したい」「こんな会社にしていきたい」というビジョンを持った人材がいることが重要です。ITの専門的な知識などは外部機関に頼ることもできますが、「自社をどうしていきたいか」を考えるのは社内の人間の仕事なのです。
「トップの覚悟」がDXを成功に導く
また、DXではトップの姿勢が重要になります。前例のない取り組みですから、何も問題なく進むとは限りません。時には回り道が必要な局面もあるでしょう。そんな時、トップの先導や後押し、リーダーシップがなければDXは前へ進んでいきません。
ここで一つ例をお伝えしましょう。従業員2人の、業務用冷熱機器の修理などを手掛ける会社です。この業界では「壊れてから修理する(事後保全)」ことが当たり前でしたが、この会社では「故障の予兆を事前に察知してトラブルを回避する(予知保全)」ことを目指し、IoTとICTを活用した、「冷凍機予知保全システム」を独自に開発したのです。ものづくり補助金や経営革新計画の申請も行いました。慣れないプロセスをがんばり抜けたのはトップの意欲があってこそです。
事前に故障を察知して保全できれば、顧客からも喜ばれますし、遠隔監視によって現場作業前にデータ分析を行うことで、誤診断を減らし、作業も効率化することができました。このケースでは、効率化のみならず、「事後保全から予知保全」にビジネスモデルを転換できました。つまり、データやデジタル技術を活用して変革を成し遂げるという、DXの本来の意味である“トランスフォーメーション”(変革)を成功させたのです。
ぜひ粘り強い取り組みでDXを進めていき、大きな果実を手にしていただきたいと思います。
中小機構では、中小企業経営者の皆様に向け、全国の補助金や活動事例を掲載したJ-Net21を運営しております。また、SNS(Ⅹ・Facebook)では、日々、お役立ち情報を発信しています。
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