中小企業であれば、トップが経営から財務面に至るまで自ら判断しているケースも珍しくありません。さらに新型コロナウイルス感染症の影響で予算の再編成に追われ、資金調達のためバランスシートの精査や原価の見直し、経費の検証なども手がける必要に迫られているのではないでしょうか。
そこで昨今、脚光を浴びているのが財務を経営に近い立場で判断するポジション、CFOです。実は中小企業にもCFOが必要という考え方が広まっています。従来の財務・経理の責任者と何が違うのでしょうか。CFOの役割や必要とされる理由について説明します。
CFOは「経営的視点」を持つ最高財務責任者
CFO(Chief Financial Officer)とは最高財務責任者と訳され、資金管理や調達、予算編成など企業の資金面すべてを統括することが仕事です。
「それなら財務部長や経理部長がすでに担っている」という企業もあるでしょう。しかし、CFOと財務・経理部長職では仕事の立ち位置に違いがあります。
財務・経理部長は文字通り社内の財務・経理部門の業務をマネジメントする立場です。財務戦略立案や資金調達計画のプランニングなども担っていますが、予算・資金管理や金融機関との折衝などの日常業務も重要かつ膨大です。両者を並行して日々行うことは困難であり、日常業務に重点を置くことが多いのではないでしょうか。
これに対しCFOは「経営的視点」を持って経営戦略をベースに財務戦略を立案する点がポイントです。特定の部署に所属するのではなく、専任役員として企業全体の業務や業績を俯瞰しながら、会社のビジョンをもとに資金面の具体的な戦略を立案。国内外の経済状況に合わせた資金調達・運用を行います。経営を財務から支える「2番目の経営者」とも呼ばれ、予算管理から企業の財務状況を的確に判断し、企業が「次の一手」を考える際に欠かせない役割と言えます。
必要ならば経営者に対し財務面から事業のリスクも指摘します。時に苦言を呈し、時に積極的な投資を促す参謀役でもあるのです。
CFOを置くメリット
中小企業が資金を調達する場合、多くが金融機関からになります。その際、金融情勢を踏まえ、今後どのような調達をすべきかを検討したり、実際に調達の手続きを行うのがCFOです。
企業を取り巻く経営環境が急速に変化していることを受け、CFOはさまざまな数字やデータを読み解きながら自社の強みや経営課題を把握します。金融機関に対しても単に予算や決算を示すだけではなく、説得力のある財務戦略や経営戦略に加え、自社の技術力や将来の事業予測、予測リターンを盛り込んだビジネスモデルなど、経営状態と将来性を具体的な数字で説明することが求められます。
社内においても同様です。例えば資金繰りの計画値と実績値を子細に検討し、増減の理由や改善の施策など「財務面から企業としてすべきこと」を経営者に提案します。
これらの役割を経営者が一人で担うには負担が大きすぎますし、経営判断に直接関わらない財務・経理部長ら管理職が引き受けることも、荷が重すぎます。財務に関し豊富な知見を持ち、良好なキャッシュフローに貢献する専門家、つまりCFOが求められる時代になったのです。
経営者にとっては財務面をCFOに任せることで、事業や経営戦略構築に集中して取り組めます。
社外から登用する方法も
CFOの存在により、企業は経営の安定や将来展望が描きやすくなることが、お分かりいただけたでしょうか。企業の取り組み全体を見る立場ゆえ、経営課題の発見や早期改善に取り組むことができます。対外的な信用度も上がり、企業のさらなる飛躍に貢献してくれるはずです。
ただし、CFOはその役割を認識し、財務のプロとしての能力がある人材でなければ形骸化する恐れがあります。自社で一から養成するには相応の時間とコストが必要なため、社外の人材をCFOとして登用する方法もあります。金融機関に相談してみるのもいいかもしれません。