環境激変の自動車部品メーカー業界における不動産対策

田中浩一郎氏

田中浩一郎 (たなか こういちろう)
フロンティア・マネジメント(株) マネージング・ディレクター
インダストリアル・ストラテジー&オペレーション部門長
2012年入社。フロンティア・マネジメント(株)では、自動車部品、民生機器、電子部品、生産財、建設・建材(メーカー、商社)などの企業に対する事業計画/M&A戦略策定・実行支援、中堅製造業におけるグローバル営業統括組織の構想・立ち上げ支援、他社との協業を含めた新規事業構想・実行支援、民生機器の事業撤退支援・事業再生支援など、企業の成長から撤退・再生まで幅広いプロジェクトに従事。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了、ATP(事業再生士補)。


日本でも今後、電気自動車(EV)の普及が進むと予測されており、自動車部品メーカーは深刻な影響を受けます。そのような状況下で、所有する不動産の戦略をどう策定すべきか。自動車部品メーカーへの豊富なコンサルティング経験を持つ、フロンティア・マネジメントの田中浩一郎氏に話を聞きました。

日本にも押し寄せるEV化の波

欧州や北米、中国などと比較すると、これまで、日本のEV比率は低く推移してきました。ただ、状況は今後、変わっていきます。OEMメーカーの計画から考えると、日本では2027〜2028年以降から、EVシフトが生じる恐れがあります。EV化によって苦境に陥る自動車部品メーカーは少なくないと見ています。

EV車では、ICE(内燃機関)車の部品の30%超が不要になるといわれています。具体的には、エンジンブロック、エンジンヘッド、クランクシャフト、吸排気装置などのエンジン部品や、トランスミッション、燃料タンクなどの駆動・伝導および操縦装置部品が不要となります。

部品出荷額と部品出荷額に占めるEVによって影響を受ける部品の割合

また、EVでは電子部品などが増えます。これによって、EV化で残る部品であっても相対的に付加価値が低下し、コストダウン圧力が高まることが予想されます。

なぜ今不動産対策が必要なのか

EV化は足元で急速に起きてくるものではありません。しかし、数年後を見据えれば、必ず変化は訪れます。「激動の時代に自動車部品メーカーが考えるべき経営戦略」では経営戦略について触れましたが、自動車部品メーカーは、今、なぜ自社の持つ拠点(不動産)についても戦略を考えておく必要があるのでしょうか。

たとえば工場を複数持っている企業が、EVシフトを睨んだ経営戦略を検討する際、工場を1カ所に集約する案が出てくるかもしれません。どの工場に集約するのか、そして不要になった拠点をどうするのか、自社での転用はもちろんのこと、売却するのか、もしくは賃貸に回すのか、などの不動産戦略が必要となります。

実際に、フロンティア・マネジメントがコンサルティングを行ったある部品メーカーは、自社の工場の売却も含めてシミュレーションした結果、工場を物流倉庫として賃貸物件化することが合理的だという結論に至りました。時間をかけてリサーチし、また、エリアの金融機関にもヒアリングした結果、周辺の市町村の人口がかなり増えていて、物流倉庫のニーズが高いエリアということが判明したためです。

余裕のあるうちにプランを練っておく

実際に工場を再編するのはまだ先の話かもしれません。しかし、苦しくなってから「事業をどう再構築していくか?」「拠点をどうするか?」と考えるのでは、時間的余裕もなく、最良の選択ができない可能性があります。

時間的余裕があれば、リサーチを十分に行うこともできます。売却するにしても賃貸に回すにしても、自社にとって有利な形で進めていくことができます。

OEMメーカー任せの受け身な考え方では、EV化の大変革を生き残ることは難しいでしょう。まずは自社の現状をしっかり把握し、将来に向けていくつかのシナリオにてシミュレーションを行う。そして、今のうちに必要な施策を1つずつ着実に行動に移していく自主性が求められるのです。

不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年4月12日時点の内容となります。
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