「取り入れるべき意見」は現場にあり

「現場の意見を取り入れたことで、このような成果を得ることができました」
業務改善や新規事業の成功事例ではよく聞く言葉です。現場の意見を聞くことは事業の改革には大切だとわかります。
ですがこれは、「事業が安定していて改革の必要を感じていなければ、現場の声を聞くことは不要」とはなりません。それはなぜなのでしょうか?

なぜ、現場の声を聞くことが必要なのか?

会社の中でお客さまにもっとも近い場所、それが現場です。営業や販売にはお客さまの声が直接届きますし、設計・製造もお客さまに直接届くものを作っている以上、やはりお客さまに近い場所。現場の声を聞き、お客さまの声に応えることが事業継続の命題と言えるのではないでしょうか。お客さまから直接届く感想、意見、クレームなど生の情報が現場にはあり、人の手を経ず無加工で拾い上げることが重要です。
それを行えなかった場合には、どのような弊害があるのでしょうか。

管理部門が事業実態を俯瞰できなくなる

現場からの情報は、管理部門への報告の過程で多少なりとも加工されて伝わってしまうもの
情報が加工された状態でしか上層部に情報が届かないとなれば、現場に関わる直接的な問題が発見できないことになります。現場で問題やトラブルが起きても、早期に原因を特定できなくなる可能性が高まるでしょう。

商品やサービスの改良がされず、売上に影響してしまう

お客さまからの率直な声は、時として「これは難しい要望だな」と思うこともあるでしょう。作業工程を大きく変える必要がある、システムの大改修が必要などの理由からそのままにしておくと、お客さまはよりよい商品やサービスを提供する同業他社に乗り換えるかもしれません。1人のお客さまの声を軽視せず、「直接声を寄せないだけで同じように感じているお客さまがたくさんいるかもしれない」と考えましょう。
また、新人社員や中途社員の声を聞くことも重要です。まだ会社に染まりきっていないので、新鮮な視点を持っています。彼らの声も取り入れることができる仕組みや雰囲気作りが大事です。

現場の声を吸い上げるためにできること

まずは自ら取りに行く!

トヨタ自動車の豊田章男社長(※現会長)の、「トヨタのトップダウンは、トップが現場に降りること」という言葉は有名です。現場は、もっとも新鮮な情報を仕入れられる場所であり、自社の事業を見るのにこれほど適した場所はありません。
若き日の豊田社長(※現会長)のように「工場出入りのトラックの積載効率が悪い」からとトラックを自ら尾行して、停車した瞬間、助手席に乗り込み運転手に直接話を聞いたりすること……は、さすがに極端ですが、そのくらいの覚悟を持って現場の情報を取りに行く気概が大切です。
情報を出してもらうことを受け身でいては、いつまで経っても現場の声は届きません。

「意見を聞き入れてくれる」雰囲気づくり

積極的に現場の情報を取りに行くためには、意見を聞き入れてもらえると思わせる雰囲気づくりが必要です。
意見出しの段階で正解・不正解を判断すると、意見を出すことにペナルティを受ける意識が生まれてしまい、意見を出せない職場になってしまいます。
不満などを直接伝えることは、心理的障壁が高く、困難です。意見をしたことにより自分がマイナスを被ることに対する恐怖は、誰しもが持っているものです。
現場から出た意見を尊重し、アイデアのひとつとして受け入れ、検討の対象としていきましょう。そうすることで、意見を出すことに対する心理的障壁を突破するきっかけが生まれていくでしょう。

意見を受け入れた成果を可視化する

たとえば、自分の出したアイデアが採用されたと自分や他の社員に通知がされる場合、通知されずに運用されていた場合の2パターンを自分ごととして考えてみましょう。
この場合、前者の場合は、自分の案が採用されたことが明確に分かりますし、他の社員から「いいアイデアだね」など声をかけられるでしょう。しかし、後者の場合は、自分のアイデアが採用された実感もわきにくく、他の社員は誰のアイデアか知るよしもありません。前者のほうが「採用された!次もアイデアを出そう」という意識が強くなるでしょう。
どのような意見から、どのような取り組みを行なったのかを周知することを徹底する、見える化を行うことが重要です。結果が見えることで、意見を出したことが報われるという意識が生まれ、良い循環を作ることができるのです。
意見を出しても何の通知もなく、また改善もされていないとなれば、どうでしょうか。「会社は何も意見を聞いてくれない」と思われてしまい、次第に意見は出てこなくなってしまうでしょう。


トップや管理部門が事業の全体像を把握するには、現場の意見の吸い上げは必要不可欠です。現場の意見を放置することにより、経営方針が現場に浸透せず、現場が向かうべき方向がバラバラになってしまうリスクがあります。
現場と管理部門の情報や意識の分断を防ぐためにも、現場から得られる情報を常に吸い上げられる環境づくりをしていきましょう。

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上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年8月29日時点の内容となります。
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