今や企業への評価基準ともなっているSDGsへの取り組み。一般消費者や取引先企業、働き手もSDGsを通して企業を評価する時代になりました。
その中でも、「環境貢献への取り組み」は実施している企業も多く、世間からの認知度も上がっています。森林・海洋など自然環境の保護やゴミの削減・リサイクル、そして省エネや再生可能エネルギーの使用などがありますが、この環境貢献への取り組み、不動産の観点からも行えることはご存知ですか?
不動産から見るSDGs
不動産の観点から行えるSDGsへの取り組みの代表的なものとして、「環境不動産」が挙げられます。「環境不動産」とはどのようなものか、どんな活用をされているのかを見ていきましょう。
環境不動産とは
設計・構造・設備・素材など、環境への負荷軽減を取り入れた、環境価値の高い建築物を指します。DBJ Green Building認証(注1)やCASBEE(建築環境総合性能評価システム)(注2)の環境性能評価で高評価を受けるなどした建築物は、SDGsの目標に合致した環境不動産と言えるでしょう。
この環境不動産については国交省のサステナブル建築等先導事業(注3)のように、国でも導入を推奨する事業を行っています。公開されている中から一例をご紹介しましょう。
注1:DBJ Green Building認証
「環境・社会への配慮」がなされた不動産に関する認証制度。不動産のサステナビリティをESGに基づく5つの視点から評価される。
注2:CASBEE(建築環境総合性能評価システム)
建築物を環境性能で評価し、格付けする手法。環境配慮はもちろん、快適性や景観への配慮含め、建築物の品質を総合的に評価するシステム。
注3:国土交通省「平成30年度サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」
サステナブル性という共通価値観を有する住宅・建築物のリーディングプロジェクトに対して、国が支援する事業。
企業による取り組みの一例
国土交通省による「平成30年度サステナブル建築物等先導事業」、その採択プロジェクトのひとつとして、トヨタ紡織株式会社の本社建設が選ばれています。
「地方都市に建つ本社ビルとして、企業や地域の特性を活かした様々な対策でZEB Ready(注4)の達成を目指す取り組みは波及・普及効果が期待できる」との評を受けた、このプロジェクトでは、最先端の技術を備えた健康増進型・省エネルギーオフィスを目指し、以下のような機能を備えたビルが建築されました(※1)。
この他にもさまざまな機能を盛り込んだ結果、同規模の従来型建築物と比べて55%のエネルギー削減が予測されています。まさに環境への貢献を体現するビルとなり、2020年8月からは既に運用が開始されています。
注4 :ZEB(年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物)を見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物
環境不動産は今後の主流に?
エネルギー消費量の削減と自然エネルギーの活用によって、建築物で使用する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建築物をZEB(Net Zero Energy Building)と呼びます。先述のビルもその類型と言えるでしょう。
ZEBの効果としては光熱費の削減、快適性・生産性の向上、不動産価値の向上、企業イメージの向上を図ることができると言われています。
このうち不動産価値の向上については、日本不動産研究所が実施したアンケート(※2)によると、2021年時点での不動産賃料について「環境不動産とそうでない不動産については特に違いがない」という回答が8割超だったことに対して、10年後には「1〜5%程度高い」という回答が6割を占めています。また、環境認証を受けていないビルについては賃料収入が1.5%程度下落するという見方もあり、不動産の環境性能が将来の不動産取引に影響を及ぼすことが予測できます。
不動産の環境性能はもはや副次的な項目ではなく、建築物の性能を判断する主要な基準のひとつとなっていくのではないでしょうか。保有する不動産の状況にもよりますが、今後に向けての対応が必要になってくるかもしれません。
ここまで取り上げたように、不動産を取り巻く環境は、SDGsへの対応の有無が不動産の市場価値をも左右する時代に突入しつつあります。
環境不動産は、テナントが入居すること自体に満足感を得つつ、さらに環境貢献もできる付加価値を持った、未来志向の不動産と言えます。
今後環境不動産が主流になることを見据えて、不動産の有効活用を考えてみてはいかがでしょうか?
※1 国立研究開発法人建築研究所「平成30年度第2回サステナブル建築物等先導事業」公演資料より
※2 日本不動産研究所「不動産のESG投資について」
不動産の有効活用及びSDGsについて、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。