会社の不動産ムダにしていませんか

会社で保有している不動産。リスクヘッジはできていますか?
賃貸用不動産であれば安定的な賃料収入が得られる点、本社不動産の場合は支払家賃が節約できる点などのメリットがありますが、同時にリスクも抱えています。
今回お送りするのは「不動産を保有し続けていることで生じるリスクと対策」です。

保有リスクと対策

保有リスクと対策を考えるとき、当然ですが個々の不動産の現況を把握しなくてはいけません。今回は図1のように縦軸に「企業における重要度」、横軸に「市場性」を配置したマトリクス図を使ってみましょう。

このとき、右下の象限④にあたる「企業が使用することによる価値は低いが、市場価値が高い資産」については早急に対応を検討しなければなりません。
では、リスク別の対応にはどのようなものがあるか、見ていきましょう。

リスクと対策1. 不動産の価格下落による減損対応

建築物は一部の例外を除いては築年が経過するほど資産価値が下がっていきます。たとえ使用中の不動産であっても、市場価値以上の使用価値(注1)を生み出せていない場合は何かしらの対応が必要になります。複数拠点を保有する製造業X社を例として見てみましょう。

注1:使用価値は、資産を継続的に使用・使用後の処分によって生ずる将来キャッシュフローの現在価値として算定するもの。

【製造業X社の例】

X社は現在使用中の土地A、遊休地になっている土地Bを保有しており、土地Bの売却を計画していました。

X社の課題
  • 過去に業務拡大のため取得した工場用地(土地A)の減損処理
  • 資産効率を上げるために遊休地(土地B)の売却を計画

そこで実施したのが、次に挙げる具体的対策です。

具体的対策
  • 減損処理シミュレーション
  • 不動産の入れ替えを戦略的に行うことによる効果測定
  • 減損金額を最小限に抑えつつ資産のポートフォリオ見直し
  • 計画中の売却ストップ、別物件売却実施

「市場価値」、「使用価値」、「帳簿価値」の切り口で各価格を算出比較したところ、土地Bは取得時よりも市場価値が下がっていたため減損処理が必要であり、使用中の土地Aは使用価値よりも土地の市場価値の方が高くなっていました。そして土地Bへの工場開設により、市場価値を上回る使用価値を実現させる事業収益を見込めることも判明しました。「市場価値」、「使用価値」のマトリクス図に当てはめてみると、土地Aは 図1の象限④に当てはまります。土地Bは 象限②に該当することになります。

そこで、「市場価値」を超える「使用価値」を実現できておらず、将来の価値向上も見込みにくい土地Aを売却し、売却代金で土地Bに新工場建設という対策を実施することになったのです。これにより、土地Aは「使用価値」を上回る価格で売却でき、土地Bの減損処理を回避するとともに、最終的な結果として企業価値の向上を実現できました。
不動産の減損が発生する場合、見直しによって当初の計画を上回る利益を手にすることも可能になるという好例ではないでしょうか。

リスクと対策2. 不動産のライフサイクルコスト(管理・運用・修繕等)

管理費用や運用中の破損など、維持管理のためのランニングコストは通年で発生するものです。また、「建築物の構造・躯体」は長期の耐用性を有する場合が多いですが、「設備、内・外装」の耐用年数は短く、適切なタイミングでの修繕や更新が必要になります。そのため20年あるいは30年周期で多額のメンテナンスコストが発生することは、不動産を所有する以上は避けられません。そして維持するためだけの修繕を行っても、その建築物自体の古さから、市場価値は下がってしまう場合が多くあります。
そのため、リフォームなどで設備・外装の一新を図ることや、建替えによって物件の市場価値を上げることや、売却によってコストオフする対応も考えられます。

リスクと対策3. 自然災害等による突発的なコストの発生

地震・台風等の自然災害、または不慮の火災などの物理的損壊により所有物件が被害を受ける可能性は常に存在します。このため「修繕、取り壊し+建替え」、「取り壊し+移転」といった予期せぬコストが発生することも考えておくべきでしょう。
事業継続のためには、こういった災害などの緊急時を想定したBCPの策定も必要になってきます。

リスクと対策4. 瑕疵による賠償責任が生じるリスク

民法第717条に定められる土地工作物責任も不動産保有におけるリスクの1つに数えられます。
「建築物の外壁が剥がれて落下し、通行人にあたって負傷した」「鉄製の屋外非常階段が錆びて突如崩壊し、人が落下した」など、物件の瑕疵が原因で他人に損害を与えた場合には、その占有者または所有者が賠償の責任を負うというものです。
このリスクを回避するために、危険な箇所を修繕する、建築物を取り壊す、もしくは不動産を手放すという選択肢が考えられます。


保有不動産の状況によっては、本来得られるはずだった収益が減少し、リスクが増加しているかもしれません。不動産というものは様々なリスクを抱えつつも、上手に活用することで収益を生み出す資産である点を今一度認識することが重要です。

持っているだけ損、などということを避けるためにも、常に戦略的に活用していくことが必要です。

【該当するSDGs目標】

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2022年4月22日時点の内容となります。
上記記事は、将来的に更新される可能性がございます。
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