不動産ESGで注目! 「社会的インパクト不動産」とは

近年、急速に広がりつつあるESGへの取り組み。日本の非金融法人の総資産の約4分の1(624兆円)を占める不動産領域での取り組みも必須で、国も積極的に推進しています。国土交通省 不動産・建設経済局 不動産市場整備課にお話を伺いました。

「社会的インパクト不動産」の定義

「社会的インパクト不動産」という言葉を、初めて目にする方も少なくないかもしれません。国土交通省が2023年3月に公表した『「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス』では、「ヒト(利活用者)、地域(周辺の土地や地域社会)、地球(地球環境)を巡る様々な課題解決に貢献することで、『社会的インパクト』を創出し、地球環境保全も含めた社会の価値創造に貢献するとともに、不動産の価値向上と企業の持続的成長を図ることが期待されている」、このような不動産であると定義しました。

「社会的インパクト」とは、取り組みの結果として生じた最終的な変化・効果のうち、社会的な効果を有するものです。

「社会的インパクト不動産」

※国土交通省『「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス』(2023年3月)より

不動産の市場規模は大きく、日本の非金融法人の総資産の約4分の1(624兆円)を占めています。ESGへの配慮を求める動きが拡大していく中で、国民生活の基盤ともいえる不動産の質を高めることが求められているのです。

グローバル企業は環境性能に敏感

日本の不動産市場の透明度は国際的に見ても高いと考えており、ジョーンズ ラング ラサールの「2022年版グローバル不動産透明度インデックス」でも5段階中で最も評価が高いランクになっています。しかし、不動産ESGという観点では、たとえば既存ビルも含めた環境性能の把握などでは、欧米の方が日本より進んでいると認識しています。

また、不動産の環境性能について、欧州ではランクが低いものは貸し出しが禁止になっている国もあります。日本に進出しているグローバル企業では、オフィス環境が一定水準以上でないと入居できないという基準を設けている企業もあると聞いています。こうした状況から、欧米では環境認証の取得が進んでいるのではないかと考えています。

個別不動産においてもESGへの対応がますます求められる

日本は、2050年にカーボンニュートラルを実現するという政府目標を掲げています。また、もっと近いところでは、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減するという中間目標もあります。この目標を達成するためには、今後2〜3年の動きが非常に大切になってきます。

日本は欧州とは法律も違いますから、一定の環境性能がないと賃貸借禁止、ということにはなっていませんが、J-REITの運用不動産では環境認証取得が一般的になるとみられているなど、着実に「ESGへの配慮が求められる」時代になってきていると考えています。

目標達成に向けて国の支援策が充実してきている今は、まさに取り組む好機だろうと考えています。

環境性能などESGへの中小企業の取り組みは、大企業に比べると動きが緩やかな印象です。しかし、不動産事業は自社のみで完結するビジネスではなく、テナントや利用者、地域があってこそ。環境性能が高ければ、ESGの観点から望ましいだけでなく、ランニングコストも安いですから、他の物件と比較されたときに有利なケースもあります。

国土交通省の『「社会的インパクト不動産」の実践ガイダンス』では、環境対応も含めた社会的インパクトをどう生み出していくのか、ロジックモデル例を示すなど、「何をどう取り組めばいいのか」についても解説しています。また、取り組み事例も参考資料で提示していますので、取り組む際にはぜひ参考にしていただければと思います。

不動産の有効活用について、わかりやすく資料にまとめましたのでこちらもぜひご活用ください。

上記記事は、本文中に特別な断りがない限り、2024年2月22日時点の内容となります。
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