2025年に新築住宅への省エネ基準適合が義務化され、2030年にはさらに高い水準であるZEH基準の義務化が予定されています。これにより、省エネ性能の高い住宅が新たなスタンダードとなることは確実でしょう。住宅市場はすでに大きな転換点を迎えており、「選ばれる住宅」の条件も変わりつつあります。本稿では、最新の基準改定とその背景、そしてハウスメーカーが今から対応を進めるべき理由を整理します。
進化する省エネ基準
2025年9月、「GX ZEH(グリーントランスフォーメーション・ゼッチ)」という新しい基準が制定されました。これは、これまでのZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を発展させたもので、現行のZEH認証は2028年3月末で終了。以降はGX ZEH基準への適合が求められます。
新基準では、断熱・省エネ性能の向上に加えて、蓄電池の設置やHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の導入が義務化されました。これまで「省エネ住宅」として評価されていた家は、今後「エネルギーを賢く使い、蓄え、制御する住宅」へと進化していきます。
背景には、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた国の方針があります(※1)。2030年には新築住宅の省エネ基準をZEH水準へ引き上げることがすでに示されており、最終的には新築・中古を問わずすべての住宅が基準に適合することを目指しています。つまり、GX ZEHは一時的な制度改定ではなく、住宅産業全体が長期的に取り組むべき方向性そのものなのです。
なぜ今、ハウスメーカーはZEH対応を進めるべきなのか
省エネ基準への適合は、もはや“最低限”の条件に過ぎません。これからはGX ZEH基準にどこまで対応できるかが、ハウスメーカーの競争力を左右する時代です。
その背景には、消費者の価値観の変化があります。価格、立地、周辺環境はもちろんですが、いまでは「光熱費削減」「快適さと健康」といった要素も住宅選びの要素に加わっています。更には、ZEH水準の義務化が進む中で、将来的にはZEH水準であることが「資産価値維持」にも影響を与えることが予想されます。その上、ZEH水準の住宅は補助金や住宅ローン減税などの対象となりやすく、家計へのメリットも明確になっています。つまり、ZEH対応住宅は“環境にも家計にもやさしい住宅”として選ばれる時代に突入しているのです。
こうした需要を裏づけるように、国の住宅補助制度ではGX志向型住宅向けの予算枠がすでに消化され、ZEH水準住宅の申請率も高水準で推移しています(※2)。補助金が短期間で埋まるという事実から、ZEH住宅のマーケットが着実に拡大していることがうかがえます。加えて、GX ZEHの制定や国の政策目標から、今後も同様の補助制度が続く可能性は高いでしょう。確かにZEHやGX ZEHの対応は、物件のコスト増加によって販売価格の増加という事態を招きます。しかし、国の補助金を活用することでこのような負担を軽減させることも可能です。物件そのものの競争力向上という観点でも対応を徐々に進めていく価値はあると考えられるでしょう。
さらに、国が掲げる「2050年までに住宅のZEH化を100%実現する」という目標は、新築住宅にとどまりません。中古市場にも波及し、ZEH対応の有無が住宅のリセールバリューに影響を与える時代が訪れます。そのため、ZEHやGX ZEHに対応しておくことが、実は住宅の「資産価値維持」に関心を持つ住宅購入検討者に対する販売戦略の1つとして捉えることも可能ではないでしょうか。
変化はすでに始まっている
国が掲げる2030年のZEH基準義務化は、遠い未来の話ではありません。すでに制度も市場も、その実現に向けて動き出しています。国が段階的に進めるZEH化の流れを踏まえると、今後は省エネ基準への適合だけでは十分とは言えません。
また、GX ZEHに対応することは、義務化への備えであると同時に、顧客満足度の向上にもつながります。高い断熱性能による快適な室内環境や、光熱費の削減による家計負担の軽減など、暮らしの質を高める効果も大きいのです。このことは、資源エネルギー庁の資料でも詳しく解説されています(※3)。
ZEH基準の進化は、住宅業界にとって避けて通れない変化です。「今後も選ばれる住宅メーカー」であり続けるために、いまからZEHやGX ZEHへの対応を始めることが重要です。その一歩が、これからの住宅市場での競争力を左右することになるでしょう。
(※1) 経済産業省「更なる省エネ・非化石転換・DRの促進に向けた政策について」
(※2) 国土交通省「住宅省エネ2025キャンペーン」
(※3) 資源エネルギー庁 住宅省エネ2025キャンペーンパンフレット 「これからは! 『ZEH』でお得に賢く快適生活」
りそなBiz Actionではこれらの資料もご用意しております。ぜひご活用ください。


